鎮魂〔読み物100〕


       一


米屋の三毛が転生したってよ。


何に何に。


三味線。



??


しゃ・み・せ・ん。


しゅ・み・せ・ん?
須弥山?


誰が

『古代インドの世界観の中心にそびえる聖なる山』

とか言った!?
三味線つうたら猫の皮が一番って言われとる日本固有の弦楽器だろがっ!


知らんかった。


知らんかった。


あんた物知りねえ。


よっ!ネズペディア!


そんなんじゃない!
と、とにかく三毛はもうただの楽器になった!
今日からは、俺ら好きなだけ米が食える!
早速いただきに行こう!


おおう!


みんなは拳、はないので、利き手側の片前足を元気よく突き上げた。


       二


走る。
走る。

荒らす。
荒らす。

食う。

散らかす。

勝ちどき上げる。

三毛の手下の猫たちは、ただただ俺らの勢いにたじろぐのみで。
三毛だけが貫禄で、俺らを抑えてたんだなと思った。
改めて三毛に敬意する。
そうとも。
俺は三毛が好きだった。
渡り合って渡り合って、恐ろしいほど毎日が充実してた。
これから俺は誰と戦えばいいんだ。



人間の部屋にそれがあった。
三毛の須弥山。
じゃない、三味線。
人間はひどい。
飼い主のばばあがしんだらいきなり三毛まで処分しやがって。


三毛


思わず呼んだら。

ばたんと三味、いきなり倒れ、低く響く声でこう言った。


なんだねずみ。


唸るように。
こっち向いてる三味竿の先に一対目があって。
金色(こんじき)の、一対の目が光ってた。


にゃあおおう


と三味は大きく鳴き。
俺はションベンちびって逃げた。


そうともさ。

三毛はそれだけのやつだった。


それでも地球は回っている