怨嗟 ー徳川家康ー
薬研の溝に薬草を入れ、丹念に薬研車を往復させる。
今更無駄なのに。
儂は大谷を生かしたかった。
平塚も。
弟のほうでのうて兄の為広を!
欲しかったのだ。
欲しいだけではない。
実際こちらにつくと思っておった。
なのに。
なのになのになのに!!
石田三成め!!
そうともよ。
儂は健康オタクだし、人間関係にも気を使う。
天下を目の前にしなから家臣に討たれたり、天下人となったのに、ヨイヨイになってうつけ死(じ)ぬ、そんなのは本当の戦上手ではない。
信玄公ともあろうかたさえ旅路に果て、玉や矢傷では死なぬと豪語しておられた、軍神殿は厠で倒れられた。
健康であられれば、そんな様を曝すこともなかったであろうと思うから、儂は健康を第一に考える。
大谷は、儂の手で、治してやりたかったのだ。
東軍に与してさえいれば、時間も稼げたと思うのだ。
きっと、癒せたと…
三成よ。
おまえは
死をともに
と示した。
儂は生存の道を示していたのだぞ。
三成…いいいいい。
大谷を、刑部を返せ!
返してくれ!!!
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