瑕疵婚4完結
ウォルゼフォン・キャゼッツはそういういみで、あまりにも好都合な人物だった。
優男。
人柄良さそうにも見える。
でも実はチャラだった。
母子家庭。
健気なイメージが出る。
ところがとんでもない母子家庭。
スキャンダルは少し遅れて発火するようにしておこう。
タネは仕込んだ。
後は極力、ティエがかわいそうに見えないように。
ティエが馬鹿に、見えるように。
だってティエ、あなたのお母さんは、かつて、私の男の子を殺したのよ?
このくらいの報復は、いいでしょ?
そんな気持ちで投下した罠。
あなたはまんまと引っかかってしまった…
こんなシナリオだったらどうしよう。
エヌレヌの姫様。
賢く、やんごとない姫様。
望まれて望まれて、望まれて嫁いできた姫様。
流産以来心壊れてしまったのに、マリュスは変わることなくエヌレヌの姫一穴で。
私は羨ましかったのだ。
宮廷の中庭。
モアナと、ルティ・エイレと、エリュス・ノリンガフ・ゼエが何やら話している。
私に気づいたルティ・エイレが、気安く手を振り、欠礼に気づいて手を下ろして一礼した。
十七才。
モアナが二十才。
エリュス・ゼエが十四才だ。
何をお集まり?
小学生がまた襲われて。
私たち心を痛めています。
よい世の中になるといいなって。
三人で話していました。
三人で。
そう。
三人で。
私は涙が出てきた。
お母様。
叔母様。
どうされましたか?
お母様。
どの子も変わらぬ王室の子なのに、私は何を意地になっていたのだろう。
国のための結婚と。
若い頃、ちゃんと理解していれば、こんな思いはしていなかった…………
私はその場にうずくまり、実子他子に見守られながら泣いた。
ただ泣いていた。
私の話はこれで終わりだ。
七年かかったが、ティエはウォルゼフォン・キャゼッツを完全に切り離し、北欧の小国王子と恋に落ちて、昨秋嫁いでいった。
メネル・キャゼッツは次のプレゼント男を捉まえかけて逃げられたうえ、結婚詐欺師として立件された。
こどもたちは私より数段賢かった。
三人の決断はこれだった。
第二継承者としてモアナを立て、ルティ・エイレとエリュス・ゼエで、補佐をしていくというのだ。
親族仲良く助け合い、女性王族で二子系で。
解決策は必ずあるのだ。
私はルティ・エイレも好きになろう。
エヌレヌの姫ともちゃんと挨拶しよう。
子等にできることが、私にできないはずはない。
私は私なりに成長していこう。
できるはずだ。
完
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