レインズ・デイズ・アフター⑫六年


 葬儀に出れる状態じゃなかった。
 胸が張り裂けて俺も死ぬかと思った。
 やっと、やっと日の当たるところで活動出来るとこだったのに!
 どうして!!!!!


 気持ちが抑えれるようになるのに半年以上かかった。
 マムンの顔も見たくなかったし、エルダーどもなんかテレビ画面の端にも見たくなかった。
 ちょうどサボキが売れ出して、森井林が画面増えて。
 俺はテレビを売っ払った。
 なのにこういう時に限って、森井のほうから俺にアプローチがあったりするのだ。
 少年Tの二番人気、高見隆弥が貧乏籤を引いた。
 隆弥はそんなに俺とつるんでないのにTだろと無理強いされた。
 見かねたティリーが仲介に立ち、俺に当たられる羽目になった。
 とはいえ俺はそうしたことをネタにネチネチやるほうじゃないし、ティリーもそんな目に遭わせるには気の毒なくらいいい子なので、とりあえず俺は森井に会った。


 森井林、さぼてんキッスリーダーは、何だかひどく怯えていた。

 悠斗!
 悠斗!
 俺知りすぎた!
 殺される!!

 ほー。

 別段心も動かない。

 何で聞かない。
 聞きたいだろ。
 どうして裕太がまんまと

 まんまと殺されちゃったかでしょ。
 そんなの知ってる。
 みんな知ってる。
 マムンは裕太がより大きく育つことを望まなかった。
 みせしめは最後の盛り上がりに大事だから、それで墜死させた。
 それだけじゃない。
 そのとき裕太は既にいろいろ結実させていた。
 知ってるか?
 “サンク”成立させたの裕太だぜ。
 おまえらが嫉妬して下らん嫌がらせしてる間に、あいつは実戦に出てた。
 戦ってた。
 ボロボロになるまで。
 あいつは。

 おまえらにできたかよ!!





 墓の前に立ったのは六年も後だった。
 マスコミが騒がないように、遠回りして遠回りして。
 石原裕次郎の墓みたいに豪勢じゃないけど、花はいつも絶えない。
 森井は目新しい情報を持ってなかったけど、予め計画されてたという話だけはそのとき知った。
 だって、ヘリ登場のシーンのあとの次第、熊本ドームの敷き写しだったんだってよ。
 同じ曲順、同じ振り付け、同じトーク。
 おまえ、殺されるってわかってたろ。
 わかった上で出たろ…


 墓は何も答えない。
 俺はずっとそこに立ってた。
 ずーっと立っていた。


               完

それでも地球は回っている