月のエピソード、私の会見でも使ったじゃない。
物語部。
覚えてないの?
今はSNSや動画の時代なんだから、もっと用心すべきだわ。
それにウォルゼフォン・キャゼッツ。
なんかおかしい。
軽いだけ?
いえ。
何か隠してる…気がする…
悪友の一人が、ある日緊急に会いたいと言ってきた。
一人だけと会うと憶測を呼ぶ。
当時のクラスメート何人か交えて歓談することにした。
茶話パーティーふうの設定の中、何とか二人になった。
良かった早めに会えて。
ウォルゼフォン・キャゼッツのことなんだけど!
聞いて愕然とした。
そんな…
ウォルの父ケーメルグ・ド-ディッヒは製薬会社の代表だった。
だが今ウォルは、ウォルゼフォン・“キャゼッツ”だ。
母メネルがケーメルグを捨てたからだけど、そのメネルについて、かなり良くない噂があるというのだ。
高位女官に確認してもらった。
真実である確率88%。
これはもう、真実で通る。
知ってしまった以上、このままにはしておけない。
私は夫に話した。
離婚だけならイギリスの皇太子妃だってした。
金銭的にルーズなセレブってのもいっぱいいる。
でも市井から逆玉的に王室に関わる人間が、またその親が、個人的な金銭貸借関係で揉めているのはいただけない。
金融の会社相手なら、あるいは事業負債等ならまだまし。
億あってもまだ理解されうる。
でもその金銭を、
結婚を誓った相手から受けたプレゼント
だと言い、しかも
結婚しなかった
というオチなのはかなりいただけない。
うちとのことで騒がれる前に、先方が、当然、何とかしておくべきことだったのだ。
それだけではない。
“騒がれて返した”
ならまだいいのに、
“騒がれてるのに返していない”。
それどころかお相手の男性はいま、キャゼッツ家より貧しい暮らしをしているというではないか!
これはちょっとありえない!
こうなってくると、キャゼッツ家の狙いそのものが、ティエの持参金だったのでは、という話になってくる。
しかもキャゼッツ家の論理は一貫して、
プレゼントされたものだから返還義務はない
で行っている。
理屈がそうであっても、一般心理としては、
返還する(した)
と言ってほしいものではないのだろうか。
なのに繰り返し
返還義務はない
と言い続け、挙句海外へ逃れて行った。
職業上どうしても必要な海外資格を取るためだというが、私たちどころか、ティエも聞かされていない。
資格取得には、だいたい四年かかるそうだ…
渡航費用。
滞在費用。
それらを持っている。
返還しないで自分磨きに使うんだと。
自分磨き。
母親が置き去った人は、ウォルの学費も出していたらしい。
その人に報いもせず、自分磨き。
うわー。
うわー以外の何物も浮かばない。
さすがにノリュスも怒った。
四年間って何だ。
その間にマスコミが忘れてくれるとでも思ってるのか。
キャゼッツ家は、うちが恥をかくようなことばかり企む。
貰ったものだから返さない
のに、お金はあるので
自分磨き
に行く。
一般の目には当然、
あるなら返せよ!
と見える…
キャゼッツ家はおかしい。
うちとの関係が大事なら、“主張”でなく“対処”をすべきだ。
“対処”を全くせず、自分たちの都合だけで動く。
こうしたことそのものが、キャゼッツの家の金銭感覚を世間に疑問視させているということが、あの母子は毫も理解できないのだろうか?
美男美女。
申し分ないはずだった会見は、ここで完全に暗礁に乗り上げた…
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