"Rabbit Beat !" ライナーノーツ【前編】
あみるです。お読みいただきありがとうございます。
2023年4月30日、念願の1stアルバムをリリースしました。
https://twitter.com/Amir_rabbit/status/1649746152462626816?s=20
アルバムを作ったからにはライナーノーツ書きたいよね、ということで先延ばししすぎてP0cketくんから半ば脅される形で筆をとっています。
ライナーノーツが書きたかった理由は4つあります。1つはこのアルバムを作った時の記憶を文字でも残しておきたかったから。2つ目は私が他のアーティストさんのライナーノーツを読んで影響を受けることが多く、自分もそれを他者に残したいと思ったから。3つ目は自分が楽曲を作る際考えていることを言語化したかったから。4つ目はリファレンスとなった、自分の好きな楽曲について語ってみたかったからです。
3つ目と4つ目が理由として大きい気がします。作品を作者自身が解説することは無粋な気がして今まで避けていたのですが、逆に解説しろと言われてできるか?自分はそこまで拘って曲作ってるのか?と言われたらできない気がして。後は普段どんな曲聞いてるの?と聞かれても恥ずかしくてはぐらかすことが多いんです。この機会に全部晒してみようと思います。
結局のところ口下手なんだよね!普段あんなにツイートうるさいのに。
前置きが非常〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜に長くなりそうなのと、リンクや音声ファイルを大量に掲載する関係上、曲解説の半分くらいで記事を2つに分けようと思います。
アルバム全体について
事の発端
私がアルバム制作を目指すようになったのは恐らく2018年ごろだったと記憶しています。
https://twitter.com/Amir_rabbit/status/1025384992510111744?s=20
☆×trip.-ああああがリリースされたこと、雨上がりのハナビィが発売されたことに大きな影響を受けました。後は海外リリースのゲームbgm関連アルバムを漁りまくっていたこととか。
2018年といえば拙作 "Tiny Twinkle Traveler"をリリースし、多くの方に聞いていただいた年でした。
この曲を相当気に入っていたこともあり、"Tiny Twinkle Traveler"を軸にしたコンセプトアルバムの計画をいくつか練っていました。その中にはアクションゲームの架空サウンドトラックの計画も…
当時作っていたトラックリストの1つなのですが、今回のアルバムにそのまま採用された曲名が見られますね。このメモの存在は完全に忘れており、発見した時ちょっとビビりました。
続く2019年、友人の誘いでSplatoon2の特別体験版をプレイし、どハマり。特にヒーローモードに心を奪われ、ヒーローモードみたいなノリのアクションゲームサントラを作りたい!主人公はボンジョ美とシャバドゥ美な!…という方向にシフトしていくこととなります。
人脈も金もないのでアートワークまで自前でやってフリーリリースするぞ!とか言ってましたね。地方勢だからM3なんて出られないし。しかし受験勉強による時間の制約だのbandcampの登録だの壁が高すぎて結局実現せず。大学生になったら絶対実現してやる!と誓ったのでした。
P0cketくんやたこぴーさんとはこの頃に相互フォロワーになったような記憶があります。ぼっち陰キャメンヘラ高校生のあみるはまさか合同出展に誘っていただくことになるとは思ってもいませんでした。
そして大学生になり、何の因果かたこぴーさんと同じDTMサークルに入部。2022年の5月ごろ、「サークルから個人リリースを支援する企画を立てていて、モデルケースになってみないか」というお誘いを受けることとなります。
…結局一人では何も成し遂げられなかったという情けない話ですが、人間こんなものなのかもな。縁って不思議だし、本当にありがたいものです…
コンセプト・世界観
「ボンジョ美・シャバドゥ美を主人公とした、ポップな架空全年齢向けアクションゲームのサウンドトラック」
自分は本当にアクションゲームが好きなんです。マリオとかカービィとかソニックとか。軽快なサウンド、心地いい操作感、子供の頃の夢をそのまま形にしたようなアートワーク、放課後に友人と集まって遊んだ記憶。自分の創作の根源にはこれらのゲームとそこに付随する思い出があると思っています。
架空サウンドトラックはプロアマ問わず多くリリースされていますが、題材となるゲームジャンルにはRPGやシューティングが多くアクションゲームはあまり多くないように思えるのです。自分が作るべきものはこれや!と思いました。
加えて、昔から精神的に苦しい時に音楽や小説、ゲーム等空想に逃避することが多かったため、空想を形にすることで苦しかった頃の自分を救い、成仏させたいという思いもありました。後は普段聞く曲がゲームbgmに偏っているので、その音楽経験を吐き出してゲームへの執着をなくしたいよな、とか。
そこまで詳しく設定ができているわけではありませんが、ごくふつうの2Dスクロールアクションで、ダッシュ攻撃ボタンで体当たりして敵を倒すタイプのゲームを考えていました。(本当は操作説明の画像作りたかったんだけど力尽きた、追記するかも)
諸々のサイトに記載しましたが、こんなストーリーが背景にありました。
アートワーク
前述した通り、最初はアートワークも自分で手掛けるつもりでした。
普段とは違う冒険仕様のボンジョ美衣装が欲しいよね!ということで設定画を描いたのが2019年。
続けてシャバドゥ美の衣装も作らねばな〜とか思っていたところ、なんとフォロワーのさばかんさんがご厚意でヘッダーを描いてくださり、そこにボンジョ美に合わせた衣装のシャバドゥ美が描かれており、仰天。
昔から創作物の登場人物は3人組がバランス良いよな〜と思っていました。ソニック然り。そこでボンジョ美チーム幻の3人目のデザインが作られることとなります。名前は「フェルマー太くん」(フォロワー命名)何と雄です。
しかし、新キャラを入れる必要はあるのか、影が薄くならないか、何より百合の間に男が挟まるのは如何なものかということで彼の存在は抹消されました。いつか別の曲のジャケットとかで出てこられるといいね。
実際アルバムを制作するにあたって、自力でデザインをするとなるとキャパシティにもクオリティにも不安がありました。結果CDのデザインはむらたむうたさんにご依頼させていただきました。以前"Holly Jolly Street"のジャケットをお願いしたご縁があります。
私が人生で初めて購入した同人CDが"Chippin' Party #02"でそのジャケットを担当されていて、ずっと憧れの方でした。
最近は音ゲー"VoltHopper(ヴォルトホッパー)"の開発に尽力されていますが、アートワークやUIがもう本当に本当に素晴らしく、ご依頼させていただく決定打となりました。
色々不手際がありご迷惑をおかけしましたが、快く引き受けてくださり本当にありがとうございました。デザインが送られてくる度に興奮ですごい顔になっていました。バックインレイにゲームのマップを模したイラストを配置するのもむうたさんが提案してくださったものです。実はそのアイデアは脳の片隅にあったのですが、自分ではそんなの描けないし、そんな面倒なイラストの依頼できないよな…と諦めていたので、ご提案いただいた時泣きそうになりました。やっぱりいろんな人のご厚意に甘えて生かされているなあ…
楽曲解説【前編】
前置きだけで約3,700字と非常に長くなりましたが、楽曲ごとの解説に移っていきます。
bandcampにて全曲試聴できますのでぜひ。
https://kmmtracks.bandcamp.com/album/kmm-label-rabbit-beat?from=embed
1. Rabbit Beat ! - Title
1曲目でアルバムの雰囲気が決まる、というプレッシャーがありかなり後半に制作した曲です。リファレンスとまではいかないですが、星のカービィ2と3のタイトル曲のテンションの高さを意識しています。放置したらデモ画面やムービーに切り替わることを考えてループではなくアウトロをつけています。自分は普段四つ打ちしかやらないからドラムンのリズム使うの珍しいよな〜と。今年はドラムンを擦っていきます。
過去曲から「あおいろ演奏旅行」と"Wonderful Wanwan Girl"のメロディを繋ぎ合わせて曲にしました。前者がボンジョ美のテーマ曲、後者がシャバドゥ美のテーマ曲です。百合ってコト!?
リファレンス:Title Screen-Chiki's Chase Original Soundtrack
リファレンス曲は2022年のインディーゲーム曲で一番衝撃を受けたこれ。Donut Dodoの人の曲って言ったらわかりやすいかも。自分のやりたいこと全部やられてるじゃん、もうこれでよくね?DTM引退。となっていました。Chiki's Chase、とってもいい自動スクロールアクションスマホゲームなので遊んでみてね。
2. Little Leaves - Stage 1
「さあ、はじまるぞ!」という感じの、はつらつとした一曲。青々とした草原や、花壇に彩られた雨上がりの街を駆けていくイメージです。ボンジョ美ちゃんたちはこんな街に住んでるんだね。
スケッチ自体は2019年にすでに出来ており、本格的に取り掛かったのも制作初期なのですが、非常に難航しました。
ピアノはスケッチからそのまま引っ張ってきています。その関係でこの曲だけLogic付属のSteinwayピアノを使用しています。
リファレンス:
・Bless you! boy - まもるクンは呪われてしまった!
・Re:グリーングリーンズ - 星のカービィ ロボボプラネット
・コニーホッピン・グリーングラス - One-hundred Eater(梅干茶漬け+ぽんきち)
・Fun Run - Scott Semanski
・Tentacular circus - Splatoon
・Twin Flight - ツインビーヤッホー!
FM音源系の曲に影響を受けていますね。FM音源を使っても良かったのですが、あまりうまくいかず…自分の持ち味はPCMだよなと開き直りました。イントロはコニーホッピン・グリーングラス、コードシンセの音選びはFun Run(作曲者のTwitterからwipを探して使用シンセを特定しパクった)、Bメロはグリーングリーンズに影響を受けています。
初期はリファレンスに寄せて生のスネアを使っていたのですが、ハマらず。サークルの方々に意見を募りまくった結果シンセスネアに。
「生ドラムに寄せてギター入れたらいいんじゃね?」と自分の貼ったwipにわざわざギターを付け足して送ってくださった先輩がいらっしゃいました。本当にかっこいい案だったのですが、自分で打ちこみ直す時間がなく没に…非常に申し訳なかったので、この案は別の形で採用されることとなります。後述。
3. Boss
リファレンス:
・白熱!ボスバトル - 星のカービィWii
・とびだせ!奥へ手前へボスバトル - 星のカービィ トリプルデラックス
・友ときずなの戦い - 星のカービィ スターアライズ
アルバム内屈指のリファレンスモロ出し曲かもしれない。カッコいいピコピコ四つ打ちなども検討しましたが、四つ打ちが続いてもなあと熊崎カービィ風生音路線になりました。ストリングスがメロを奏で、金管が乗っかるところとか、ピッコロが一瞬鳴るところ、和音弾きのビブラフォン、要所のシロフォン、スプラッシュシンバルを多用するドラム、和音を織り交ぜた三角波メロ、キメで鳴るE#9とか。反省しています。
ただどれだけ研究しても安藤さんのような緻密な和音と楽器使いは出来ない。逆立ちしてもあんな曲書けないよ。勉強は続きます。
この曲以降ピアノはUVI Model Dを使用しています。ドラムはSSD5.5 free、ギターはMETAL GTX、その他大体Logic付属。
4. Stage Clear !!
ゲームのジングルの作り方には色々な例がありますよね。
・メインテーマと同じ調性やリズムにする(スーパーマリオブラザースのゴール、カービィのクリアダンス、ハナビィのクリアジングル)
・メインテーマの引用(マリオ64、サンシャイン、ギャラクシーのクリア…)
・メインテーマに繋がるようなフレーズ(マリオのミス、マリオ3のミス・クリア)
・逆にクリアジングルから重要な場面の曲を作る(オクトエキスパンション等)
・他の曲と関係もなければシリーズ間で統一もされていないジングル(ソニックお前のことやぞ、カービィのゲームオーバー)
今回は、タイトル曲と同様主人公のテーマ曲である「あおいろ演奏旅行」のフレーズを使いつつ、最後にラスボス曲"Still Singing"のフレーズを混ぜ込みました。わかりにくいけど。オクトエキスパンションとか3のヒロモのアレにめちゃくちゃ感動したんだよ…
5. Indigo Island - Stage 2
海の曲です。割と手癖に近く、肩の力を抜いて楽しく作ることができました。個人的にお気に入りの曲です。気軽に口ずさめる短いループの曲が欲しいと思って書きました。ただ、ゲーム中ではなくアルバムとして聞かれるため、ひと工夫欲しいよなと思い…前半は地上、後半は水中をイメージしています。
【地上】
リファレンス:
・海ステージ - 星のカービィ スーパーデラックス
・海ステージ - NewスーパーマリオブラザーズWii
・Green Grove Zone (Act 1) - ソニック3D フリッキーアイランド
コンセプトは「マリオとカービィの合体」。Aメロではマリオからバッキングの三角波、メロのスティールパン、パーカッション類を、カービィからドラムキットとベース、キメの和音とリズムを持ってきました。Bメロではカービィ要素が増して、バッキングのカリンバ、FMピアノ、メロのストリングスを意識しています。メロのストリングスは最後16分ためて(伸ばして)入りますが、これは石川淳さんが多用するメロの書き方です(うるおいの星とか泳げ!ひろびろビーチとかトンネルくぐってとか)
音源的には、安そうな音はXpand!2で、高そうな音はLogic付属で出しています笑 今回あまり出番がなかったXpand!2ですがこの曲ではフル稼働してもらいました。ドラムもXpand!2でカービィの音色を再現していますが、かなりの再現度だと自負しています。カービィではRolandのハード音源が使われているらしく(要出典)、Xpand!2にたまたまRolandの音を再現した音色があったんでしょうね。
【水中】
近年「プレイヤーが水中に潜るとbgmにローパスがかかる」演出があちこちで多用されていますが、正直好きじゃないです!w せっかくのいいbgmが聞こえないし、息苦しくなるし、早く水中から出たくなる。そういう不快感も印象に残るゲーム体験には不可欠なんだと思います。ただまあ自分で曲を作るんだったら、水中にいるのが楽しくなるような、透明感のある楽曲に仕上げようと思いました。
リファレンス:
・ウォーターパーク(水中)- マリオカート8
・海底居住区 - 星のカービィ ロボボプラネット
LogicのAlchemyで出したシンセベルにXpand!2のオルゴールを乗せたところ、マリオギャラクシーでよく聞くシンセの音に近くなって喜んでました。
6. Cloud Castle - Stage 3
https://soundcloud.com/user-637851950/cloud-castlefrom-rabbit-beat
空の上の曲です。物語的には探していた歌姫さまの正体が判明して新たな舞台へ…といった感じかな?心機一転、シンセサイザー類を一切使用しない開放感のある曲に仕上げました。
リファレンス:
・クラウドガーデン - スーパーマリオギャラクシー2
・ウィンドガーデン - スーパーマリオギャラクシー
・Nimbus Kingdom - Mark (Blaz)
自分ウィンドガーデンじゃなくてクラウドガーデン派だってずっと言い続けているんですよ。当然リファレンスにもウィンドガーデンなぞ入れてやるかと思っていたのですが、クラウドガーデンを参考にすると2Dアクションには似つかわしくない曲になるなと…。ウィンドガーデンを参考にギターの刻みを入れリズム感を出しました。どっちもいい曲だよ。
3曲目について補足します。海外では架空のマリオのサントラを作ろうだとか、マリオカートのまだリメイクされていないコースのbgmを勝手に作ろうとかそのような企画が活発らしいです。マリオオデッセイの架空コースのbgmとして作られたこの曲、非常にクオリティが高い上8bitバージョンまでついており、愛が感じられます。何より「個人でもこのレベルのものが作れるのか!」という面に非常に勇気づけられ、今回オーケストラ調の曲に挑戦する運びとなりました。
この曲は付属音源とフリー音源を駆使して作られています。ストリングス・金管・ギターはLogic付属、木管はSpitfire BBC Discoverを使っています。音が遠くてウェットなことで有名。シェイカーはFruit Shake。
ハープはVienna HARP GLISSANDOSを使っています。ワンタッチで綺麗なグリッサンドが出せるので本当に重宝しました。他はともかくこの音源は絶対持っておいた方がいいです。もっと知名度上がらないかな。
<前編はここまで。お読みくださりありがとうございました!>
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