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ポン・ジュノの嘲笑。

子供時代、私の秘密基地は映画館だった。

幼くて自分の力ではどうにもならない現実を忘れるため

映画館に通いまくった。

アカデミー賞が発表されポン・ジュノ監督作品が最高賞に輝いた。

感想や考察が多く動画にアップされていたけれど私が見た中ではなかった点を二つばかり書きたい(鑑賞はまだ一度なのでうろ覚えですすみません)

現代富裕層(憧れてる人も含んで)の人たちが陥りがちな錯覚の描写がとてもリアルに描かれている。

私も仕事がら世間的に言う富裕層の人たちと関わることが多いので「そうだわー」と頷いたポイントがあった。

「なまじお金があるのでうっかり騙されそうで怖い。信頼できる(育ちや肩書きのしっかりした)人からの紹介なら安易に受け入れる」

ここのポイントは元の家庭教師は外見、在学する大学、今からアメリカに留学というソフィスケートされた存在だということだ。

高台に住む一家は彼が生徒である娘によこしまな気持ちを抱いている(おそらく一方的な恋心)ことを夢にも思ってない

(それが理由で半地下の経歴詐称の友人を紹介してくるのだが)

また、娘の成績も全然上がっていない(母の口から語られる)

それなのに留学に行かなければずっと続けてもらおうと考えていた。


もう一点

「質で分かった気になる」

ここでのアイテムは名刺だ

私はクリスチャン・ベイル主演の「アメリカン・サイコ」を思い出した。

ホワイトカラーのシリアルキラーが非の打ち所のない名刺を差し出されたときにその相手に殺意を抱くシーンだ。

まんまと運転手に成りすました半地下生活者の男は

新しい家政婦を探す富裕層家族の父に名刺を見せる

「会員制の派遣所です」と。

素材、デザインともに高級感あふれる名刺。

すでに、選ばれた人しか入会できないという優位性にプライドをくすぐられていた富裕層の父は

名刺を見て自分で下調べすることも情報を集めることもしない。

結果、目論見にまんまとはまり偽装会社へ登録することになる。


半地下生活者たちは熟知していたのだ

富裕層の生活者が

いかに自分がこの生活を営むのにふさわしい能力があり、

判断力がある

ということを信じて疑わないことを。


パッケージ

それだけでものの良し悪しを安直に見極めてしまうことを。

私にとってこの2点は大変リアルだった。


ポン・ジュノの私たち誰もが陥りがちな現代人病への

警鐘

いや

嘲笑を感じた。

嘲笑されるくらいでちょうどいいのかもしれない。

私たちはアイテムはしっかり勉強して

コーディネイトに失敗することは少ない。

ただ

そのアイテムを着た自分の姿を全身鏡で眺めることはなかなかない。

完璧なアイテムを自分にセッティングしたときの

滑稽なほどのちぐはぐさ

それを冷徹に見ることのできる人は少ないのだから。

アンビリーバーボーな薄給で働いているのでw他県の詩の勉強会に行く旅費の積立にさせていただきます。