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同人誌「あーみんゴッコ」座談会・未公開トーク(前編)

2023年夏、「田中圭一プロデュース!前川さなえ責任編集!マンガ界の超あーみんファンたちが情熱のすべてを注いだファンブック」である「あーみんゴッコ」(通販はこちらから)が頒布され、その中の1コーナーとして連載時からずっとあーみん先生のファンを続けている4人による座談会ページが設けられました。

実は誌面に収録されたのは、喋ってた内容のごく一部……。まったく収まりきっていなかったのです。……という訳で! せっかくなので、こちらにドーンと公開することにします。(内容は若干収録分も含まれています)

さあ、どうぞ! パロレパロレ!


田中圭一(以下:田中)●みなさんが岡田あーみん先生の作品とはじめて出会った時のエピソードや印象を教えてもらえますか? 

前川さなえ(以下:前川)●小学生の頃「りぼん」を購読していて、普通にあーみん先生の作品も連載されていたんですが、最初は絵柄で取っ付きにくかった印象があって。それでも読むようになったのはさくらももこ先生との合作からですね。そこから「面白い!」ってなって、それ以降は追いかけるようにハマっていった感じです。 

さくらいみか(以下さくらい)●私の場合は「りぼん」をパラパラと流し見していて、その頃は『こいつら100%伝説』が連載中で、その中に気に入ったネタがあってそこから気になり始めて読むようになりました。遡って『お父さんは心配症』も読み返して、さらに『ルナティック雑技団』も始まってって感じです。 

ニセ同人誌屋 同人A(以下同人A)●私も小学校の時の「りぼん」ですね。『心配症』世代なのでそこから読んでました。その後の作品もずっと好きで、ファンサイト「岡田あーみんを崇める会」を25年くらい前に立ち上げまして、その時に出会った「あー民」の人たちとずっと遊んでる感じです。さくらいさんもその一人です。最近はその活動の延長で同人誌『岡田あーみんを崇める本』を四冊作らせてもらいました。とにかくあーみん先生が大好きで、今後も推していこうと思っています(笑)。 

田中●今「あーみん」とおっしゃいましたが、岡田あーみん先生のファンを「あーみん(「冬眠」と同じイントネーション)」と呼ぶんですか? 

同人A●「あー」の「民」と書いて「あー民」と呼ぶんです。

サイバーおかん(以下:おかん)●私も『心配症』世代で、そんなにお金を持っていなかったので、友達の家で「りぼん」を回し読みさせてもらっていました。子供の頃って雑誌の隅々まで大事に読むので、その中で『心配症』の異質な感じがどうしても心から抜けなくて、そこからハマっていった感じですね。 

田中●みなさんがあーみん先生のファンとして、単行本を集めちゃうぞ! 何が何でも応援しちゃうぞ! って気持ちになったきっかけのエピソードやセリフやコマってありますか? 

同人A●私は『心配症』での北野くんのアイドルコンテストの回があるんですけど、その時の擬音がちょっと異常なんです。北野くんが声帯をやられているので、歌声が「ガー」とか「ペー」とかになってるんです。郷ひろみさんの「男の子 女の子」を全部「ケ~カ~ペ~!ダビー!コケコ~!」って表現されてて。 

一同●(爆笑) 

同人A●それを見て転げ回るほど笑って、私の人生を決定づけましたね。

さくらい●私は最初にガツンとやられたのは『こいつら』の「ニセ商売屋」かもしれない。「ここを押したら死んでしまいます」(『こいつら100%伝説』第18回)を妹との間でやるのが流行った時期がありました。あれはどの話だったかな? 

同人A●霊媒師の回じゃない? 

さくらい●そうだ。あとは同じ回の仮面が割れるところとか。 

同人A●「何処乃馬野骨男(どこのうまのほねお)」でしょ? ネーミングセンスが最高だよね。

さくらい●ほかにニセ商売屋の好きなシーンはというと、急に窓からガラッと入ってくるようなところとか。 

同人A●参考書を売りに来る話(『こいつら100%伝説』第22回)ですね。 

前川●私が『こいつら』で好きなのは熊に襲われる回(『こいつら100%伝説』第8回)。 

おかん●私、アレは好きすぎてダメなんですー! 

同人A●ハーフわき毛? 

前川●そう。「ハーフわき毛日本一」 

おかん●そう! それが本当にツボで。 

前川●この回は好きなシーンがいっぱいあるんですけど、「死んだふりしろーっ! ドスッ」とか「こ…こんなんできるか? ヒィ〜」とか。でも一番好きなのは熊がいっしょになって度胸だめししてるのに気づいた時に、みんなびっくりして心臓だとか脳みそとか目玉だとか飛び出るんだけど、極丸だけよくわからないんですよね。どこから何が出ているのかわからない(笑)。 

さくらい●私はあー民のオフ会とかあると、二色の毛糸を持ち歩いて「ハーフわき毛日本一!」って一発芸をやってました。 

同人A●私は胸に目玉シール貼って「おめめがお乳」ってやってた。これ、同人誌の方に掲載したものなんですが、友達が作った「極丸のお腹から飛び出すヤツ」です。

極丸のお腹から飛び出すヤツ

前川●すごい!実写版だ! 

おかん●あーみん先生の作品はセリフもいいけど、コマ運びのテンポが完璧というか。 

同人A●疾走感が。 

田中●同人Aさんの作られた同人誌『岡田あ~みんを崇める本』(通販はこちらから)ってすごい情報量ですね。 

前川●クロスワードとかあるしね。 

田中●力作だなぁ。 

同人A●相方のモッサンやサイトで出会ったあー民たちと一緒に作りました。単なる趣味なのですが(笑)。 

前川●趣味でとどまらないですよ、コレ(笑)。 

田中●すごい文字量だ! 

田中●みなさん、クラスの中で岡田あーみん先生ファンの同志はいたのか問題っていうのがあって、どうやって同志かどうかを見分けたんですか? 

前川●基本的には、学校では隠してたかも。 

田中●隠さなきゃいけなかったんですか(笑)。 

前川●クラスのみんなは恋ちゃま(池野恋先生)が好きでしたしね。 

田中●男の子だとギャグマンガが好きっていうのは普通だけど、女の子で「りぼん」の中からあえて「えっ? それなの?」って言われちゃう感じ? 

さくらい●そんなに抵抗なかったですけど。 

同人A●私の場合はクラスにもう一人いたな。 

田中●それはどうやって見つけたんですか? 

同人A●元々、仲がよかった子だったので、多分感覚的に近かったかも。 

さくらい●私は高校時代に仲よかった子たちがみんなあーみんファンで、みんなで「どのコマがいい」みたいな感じで、結構日常的に話題にしてましたね。 

田中●じゃあ普通に同志がいたんですね。 

さくらい●いましたね。 

田中●こっそり隠していて、心の中で応援してるって感じじゃなく。 

同人A●そういう方も結構多いよね。 

さくらい●私たちのそういう様子を見て「なんか楽しそうだから」って言って「よかったら教えて」って興味を持ってくれる子もいましたね。でも説明してもポカ~ンとしてるし(笑)。 

田中●それはしょうがないと。ここに集まってるのは「霊が見える人たちの集まり」みたいなね。見えない人に言ってもしょうがないしね。 

さくらい●説明しづらいですよね。 

田中●要は「波長が合う」人同士では言葉がいらない的なところがあったかもですね。「あーみん面白いよね」って思っている人たちなら一気に話は通じるし、わかんないけど楽しそうにしてるから入りたいって人には、ちょっと説明してもわからないよって感じで。 

同人A●ギャグは説明するものでもないですしね。 

田中●当時の「りぼん」の中での人気って、どうだったんですか? 当然当時だったら『ときめきトゥナイト』とか『姫ちゃんのリボン』が人気だったんでしょうが。 

さくらい●『こいつら』のころが『姫ちゃん』で。 

同人A●『心配症』のころはあおいタン(柊あおい先生)の『星の瞳のシルエット』とかが人気だったし、きっとあーみんファンは一部でしょうね。 

おかん●そうなんかな? 

同人A●掲載順とか表紙とか考えると。 一回も表紙になってないし。 

おかん●なるほどね。 

前川●表紙になったことない? 

さくらい●ない。 

おかん●表紙にできなかった? 

同人A●ふろくとかにはいっぱいなってるんだけどね。だから、何でだろうなって。別冊とかにはなってるし。 

おかん●人気はあったんだよね。 

同人A●一部の熱狂的なファンが。 

前川●表紙にしちゃうと一見さんが買わないとか。 

一同●あ~(納得)。 

田中●『ちびまる子ちゃん』って結構表紙になってました? 

さくらい●何回かなってますね。 

田中●アニメになるぐらいだからね。 

大勢の中に紛れてる場合はあるが、単独ではない

田中●あーみん先生のことはあまりわからないけどこういうギャグマンガは好き、っていう人に対して「それは違うだろ?」感ってありませんでしたか? あーみん先生こそが至高の存在であって、それ以外と比べるな感とかはなかったですか?

さくらい●あーみん好きなら『行け! 稲中卓球部』好きそうって言われたことはあります。 

同人A●「好きだと思うよ」って言われるんだけど。 

前川●違う、違うって(笑)。 

同人A●『セクシーコマンドー外伝 すごいよ!! マサルさん』もすごく言われたね。 

おかん●それはわかる。 

前川●『マサルさん』は何となくわかる。 

同人A●わかるね。『マサルさん』ぐらいかな? 他は違う。 

おかん●テイストがね。 

田中●『マサルさん』とあーみん先生はこっち側にいるし、それと対極ぐらいの位置に漫☆画太郎先生や『稲中』はいるからね。 

田中●みなさん、単行本は発売日に買ってましたか? それとも全巻をまとめ買いしたんですか? 

同人A●リアルタイムでは子供だったので。 

さくらい●子供だったので。 

前川●おこづかいを貯めてた。 

おかん●私はコミックス派だった。「りぼん」を毎月買えない代わりにコミックスの発売を待って、自宅の棚に並べるのがすごく楽しみでしたね。 

田中●例えばサイン会などで、あーみん先生にファンがお会いする機会ってなかったんですか? 

同人A●さくらももこ先生とのイベントがあったよね? (『お父さんは心配症』4巻おまけページ参照)

さくらい●あれ、足のうらに塩つけたやつ? 

同人A●そう! あれサイン会だよね。 あと北海道の方でイベントやってたよね。 

さくらい●「りぼん」のイベント(91年に開催された「りぼんファンタジックワールド」)に呼ばれて出てた。 

同人A●それぐらいだよね。 

田中●公の場に出た回数が、それぐらいしかなかったんですね。 

同人A●そういうことになります。 

さくらい●でも「りぼん」のパーティーとかには出席されてた様子はありましたし。 

前川●そういうの(パーティー)がありましたって、あーみん先生が描いた漫画で読んで知ってるだけですよね。 

おかん●確かに。 

前川●イベントにしてもパーティーにしても、今みたいにネットに記録が残ってるわけではないですし。

さくらい●私はあーみん先生の描かれる服の柄や布団の柄がすごく好きで。あと、背景に描かれている家具とかがその都度結構変わってて、気分で家具を描いているのかな? って。 

前川●あ~、確かに。 

同人A●家の構造がわかんないんですよね(笑)。 

おかん●わかんないね。 

同人A●この部屋を右に移動したらあの部屋? ……前と違うって(笑) 

前川●間取りをちゃんと決めてない。 

同人A●そうなんですよ。 

さくらい●『ルナティック』の森夜が着てるパジャマもかわいいなぁ。 

前川●お母さんが買ってきたのをそのまんま着てるんだろうなぁ。 

さくらい●全部、ゆり子が買ったのをそのまま着てる。 

田中●岡田あーみん先生って、この三作品をもってパッといなくなってしまうじゃないですか。当時、その事に対する「あーみんロス」みたいなことはなかったですか? 

さくらい●フェードアウトの仕方がすごくゆっくりだったので。 

田中●そうか。突然ポンッ! といなくなったわけじゃないものね。 

さくらい●だから「いなくなっちゃったなぁ」って感じ。連載の頻度も下がって、最後は単発で終わったって感じだったので。 

同人A●最後の作品でのあとがきも特に最後っぽくないんですよね。だからフワ~ッと消えたかったのかなって。でもグッズの許諾は出してくださったからどこかで元気にしてくれてるなって気配を感じています。 

さくらい●生きてさえいてくれたら……。 

田中●引退以降の情報ってないんですよね。どこに住んでるとか、ご結婚されてるとか。 

同人A●噂しかないですね。 

田中●描かれていた当時って、まだ20代前半くらいですよね。 

同人A●学生の頃から始めてますからね。 

さくらい●さくらももこ先生と同い年ですよね。デビューが決まったのが17歳だったので。 

田中●まあ少女マンガだとあるんですよね。でもすごいなぁ。17歳でプロになって原稿料を稼いじゃう。当時は割と当たり前でしたけどね。

田中●ファン活動を始めようと思ったきっかけはありますか? 単に「読んでる」って受け手だけの活動だけでなく、行動を起こそうというきっかけは何だったのでしょうか? 

さくらい●感覚が同じ人に出会える機会が増えて、それがやる気に繋がった感じですね。 

田中●なるほど。同志を見つける感じですね。 実際に同志が増えて、何かいいことがあったとか、飲み会やったとかはあるんですか? 

同人A●オフ会を月1~2ぐらいでやってたよね。 

さくらい●やってた(笑)。 

同人A●いっぱい飲んでました(笑)。あーみん先生を好きという人はツボが近いので話が早いですよね。 

さくらい●同人Aが運営してた掲示板は書き込みが読み応えがあって、参加してるみんながあーみん先生好きで「このシーンが好きだ」ってのをみんなで言い合ってて、それを読むだけでも面白かったんです。それで他の人がコレが好きって言ってるのを再度自分で読み返してみるのも好きでした。それがネットを通じたファン活動をすることに繋がったんだなって思っています。 

同人A●ネットも創世記の頃だし刺激的だったね。 

さくらい●99年とかですしね。 

同人A●「2ちゃんねる」ができるちょっと前くらいにサイトを立ち上げたので。当時、ネットをやろうって人がまず限られていたし、その偏った人たちの中でさらに偏った人たちがサイトに集まってきてくれたので、すごく楽しかったです。 

田中●オフィシャルのファンクラブ的なものはなかったんですよね? 

同人A●なかったですね。 

田中●逆にそれって、ある意味やりやすいっていうか、自分がこういうものが欲しいっていうのを作れる原動力になったのかな? って思いますね。 

さくらい●みんなで国会図書館に行ったりとか。 

田中●なるほど。それは「あの時のアレってどうだったっけ?」って調べに行くんですか? 

同人A●そうです。昔の「りぼん」を国会図書館の書庫から出してきて。 

さくらい●で、データベースにしていった。 

同人A●その成果が『岡田あ~みんを崇める本』になっていったり、色々と。 

田中●作られた同人誌、当時反響はありました? 

同人A●おかげさまで!とてもありました!

田中●なかなかここまでまとめられてる同人誌って他にないですしね。ここまで情報量があるっていうのが。資料性も高いし。本当ならちゃんとオフィシャルでやってくれれば、もっと色んな細かいところまで調べられただろうに。逆に言うと「ないから作る」っていう、ファンとしての喜びですよね。 

同人A●そうですね。ただ二次創作は当時からちょこちょこあったんですよ。だけどデータ系として本出してるのはなかったので珍しかったというのもあると思いますね。だからすごい沢山の人に喜んでいただけました。おかげさまで。 

さくらい●オフィシャルはもう無理っていうのがわかってるんで、自分たちでするしかないですよね。

~ 後編へ続く ~


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