これから一生、社内報に載らない姉とただの私。
普段、ゼミ仲間や家族から平和の象徴である『ニート』と呼ばれている私であるが、そんな私でもボランティアに一生懸命参加している。主な活動は、ラジオ作品を作るため取材に行くのだが、そのボランティアの主導者である監督が非常に人情味のある人で、話の引き出しが多い人でもある。だからこそラジオ撮影中、私の無能さがきれいに浮き彫りになってしまうのが悲しいなぁ・・・
先週は、ラジオ取材のため「子ども食堂」に参加した。そこに来る子供たちは、学校に居場所がなかったり、何か心に問題を抱えてくる人が多くいた。その中に、大学を留年してしまった まっさっきー という男がいた。ここで強調しておきたいのが、 まさっきー でも まさき でもない まっさっきー という点である。なぜ一文字毎に小文字の『つ』があるのかは神秘のベールに包まれている。
彼は、大学を留年してしまい何もしていない毎日に不安を抱えていたのだ。毎日芋虫のように家にへばりついて放屁ばかりする私は、彼の顔をみるのが大変苦しかった。今日だって、部屋の片づけ中にボロボロのUNOを見つけインスタに『俺のUNO誰かいる?』とストーリーに上げただけで満足してしまう有様である。彼は、思い詰めた顔で現在抱えている悩みを吐露していた。一通りの話が終わると、私の方を向き今度は何か期待したような顔で一言
『君さ、彼女いるの?』と聞いてきたのだ。言っておくが、私は まっさっきー より年上である。
私が彼女がいる旨を伝えると、まるで私が小学校の時によく枯らしていたアサガオのようにしぼんでしまった。その上、監督に
『君!中川君に彼女がいないと思ってこの質問をしたね!だけど実はいて悲しんでいるね!』と言われてしまい、 まっさっきー は追い詰められた平家であった。
話は変わるが、私が入社する会社には社内報というものがあり、毎月の出来事や様々な部署の社員が取り上げられている。そのため、内定をもらってから何か月もその社内報が家に届いては、仕事が始まるカウントダウンにおびえていた。そんな折、人事の方から社内報についての感想文を宿題として、我々新入社員に課してきたのである。私は、ボランティアの話などを交え提出したのだが、それが評判で2月号の社内報に載せてもらうことになったのだ。
そこで思い出されるのは、私の姉である。私が姉にボランティアをすると話した時、彼女は『金も稼げない、そんなメリットもない無駄なことに時間を使うのはバカ』と強く非難していた。しかし、私はボランティアをしたことで、”社内報に載った”毎日芋虫のように家にへばりついて放屁ばかりする私に進化したのであった。