#シロクマ文芸部
#風薫る
風薫るこの季節に、私はいつも決まって思い出すことがある。
それはある日突然、私の前から姿を消した「あの人」と食べたシュークリームの味だ。
私は生クリームが苦手で、甘い物といえばカスタードクリームが入ったものやチョコレートがトッピングされたものなどを好んで食べるのだが、あの日はなぜか、無性にシュークリームが食べたくなったのだ。
「あの人」は生クリームの類が大好物で、三食それでいいと言っているような人だ。
だからあの日、もしかしたらという無意識の勘というものが働いたのかもしれない。
私は「あの人」が愛してやまないシュークリームを、いつまでもむさぼり食った。