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tokyoclady
【毎週ショートショートnote】ときめきビザ
最近、やたらと体の調子が思わしくなく、婦人科にかかってみた。
ここはちょっと変わったクリニックらしく、患者も引っ切りなしに来るらしい。
ざわついた待合室をくぐり抜け、ようやく名前が呼ばれたので診察室へ入る。
「どうされました？」
「最近なんだか体の調子がよくなくて…」
「それは…足りてませんね」
「えっ？足りてないって？」
「ズバリ、『ときめき』ですよ」
一見、『ときめき』とは無縁そうな中年おじさん先生が、人差し指をピンと立てドヤ顔を見せた。
「どうすればいいでしょうか？」
すると先生は看護師に指図し、一枚の書類を持ってきてこさせた。
「『ときめきビザ』というものを、ウチにくる患者向けに特別に販売していまして…」
先生の話を聞きながら、私は長々とした説明文を目で追った。
なるほど。
これを持っていればどんなことにも『ときめき』が心から湧き出てくるらしい。
「それではこれ、頂けますか？」
そう言う私の目は完全に、ときめきでいっぱいになっていた。
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