【毎週ショートショートnote】鋭利なチクワ
冬になると、食べたくなるものがおでん。
一見、湯気が上がり見るからに出汁が染みこんでいそうなそれを見ると、何だかホッコリした気分にさせられるが、それとは裏腹にあのおでん鍋の中では、温度以上に熱くシビアな戦いが繰り広げられているのである。
「おいっ、ゆで卵!あんまり出しゃばるなよ」
「白滝も、これ以上長くなったらどうなるか分かってるよな~」
「食べやすさで人気だからといって調子乗ってんじゃねぇぞ、はんぺん!」
「がんもどき、しゃしゃり出るな!」
やや茶色まじりのスラッとしたボディを惜しげもなく見せつけ、プルンプルンな見た目に反して眼光鋭いちくわが、ギラギラしたオーラを発しながら、出汁に沈む仲間たちをどやしている。
ちくわに見つからないように、ウインナーが小声で話しかけてきた。
「今は鋭利なチクワって言われているけど、昔は引っ込み思案だったらしいよ~」
その瞬間、ウインナー越しに見えたちくわぶの目がキラリと光ったのを見てしまった。
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