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Photo by
oh_g_chan
【毎週ショートショートnote】文学トリマー
「すみません」
「いらっしゃ~い」
「あの…大丈夫ですかね?」
「いいっすよ。ここに座ってもらっていいんで」
見た目チャラそうなお兄さんに促され、壁一面の鏡の前に座った。
「今日はどんな感じで?」
「じゃあ、この『文学コース』を」
「かしこまりましたぁ~、っしゃ!」
いきなりテンションが高くなり思わず吠えそうになった。
低い振動音と共に、長いこと伸びていた全身毛が短くなっていく。
俺は目を閉じ、しばしこの心地の良い時間が長く続いてほしいと思いながら静かに目を閉じた。
「終わりましたよ」
いつの間にか寝てしまっていたようだ。
体を大きく震わせた後、鏡の自分を見てみるとそこにいたのはなんと…猫。
「えっ?猫?」
「えぇ、『文学』なんで」
「…なるほど」
俺は納得の意味で激しく尻尾を振った。
そう。ここは文学好きのオーナーが物語に出てくる登場人物そっくりの見た目に仕上げてくれることで有名なのだ。
だからといって、犬から猫にされるとは思いもしなかった。
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