【毎週ショートショートnote】人型ロボットの末路
「ジュージュー、パチパチ」
衣を纏った海老が油の海で気持ちよさそうに泳いでいる。
「おめぇ随分、腕上げたじゃねぇか」
いつもは眼光鋭い師匠が、嬉しそうに目尻を下げている。
俺は何だか誉れ高い気持ちになった。
師匠のお店である「割烹しょうと」の門を叩いたのは3年前。
長いことお笑い芸人として存在していた俺は、相方にも家族にも逃げられて、発砲塞がりの状態に陥っていた。
「これからは好きなことを強みにしていこう」
そう思った時、ふと頭に思い浮かんだのは「天ぷら」
「誰よりも上手い天ぷらを揚げてやる」
そこから俺は休眠時間を削ってまで、天ぷらを美味しく揚げることに心血を注いだ。
すると割烹しょうとはミシュラン一つ星を獲得、店は瞬く間に予約の取れない人気店となり、師匠は俺を後継者にしたいと意気込んでいるのだが一つ問題が起こった。
俺は天ぷらを揚げること以外、驚くほど何も出来ず「人間」としての能力が欠落してしまっていた。
さぁ、どうしてくれようか。
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