【毎週ショートショートnote】壮大でバカバカしいバトル
「これより、遺言書の開封を行ないます」
皆の喉がゴクリと鳴った。
誰もが固唾をのんで、遺言書の一点を見つめている。
立ち会い人である弁護士先生が、つらつらと内容を読み上げていく。
「この家屋、土地、所有する全ての財産は、私サルカニイヌオにそっくりな家族及び親族に譲るものとする。以上」
時間が一瞬止まったような気がしたのは気のせいだろうか。
誰もが顔を見合わせながら、理解するのに時間を要したと思う。
すると、長女が口を開く。
「私は昔から父と目元がとても似てると言われました。よって相続するのは私です!」
すると長男も負けじと、
「お、俺はこの手のひらと指先が親父とそっくりすぎると、仕事でもよく言われるんだ。ほら見て見ろよ」
そう言って指さした先の遺影には、ひげもじゃの故人が何故かピースをしながら笑顔を見せている。
すると、次女の顔色がなんだかおかしい。
「おい!どうした?」
「う、産まれそう…。タクシーを…」」
はちきれんばかりのお腹を押さえ、次女がその場に倒れそうになっている。
途端に場は慌ただしくなった。
そうして無事、玉のような女の子が産まれたが、次女婿いわく、祖父亡き後に妊娠が分かった、これはそっくりというより父の生まれ変わりだとのたまったそうな。
相続バトルならぬ生き写しバトルは、これから益々激しくなっていくに違いない。
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