タコは、温度依存性RNA編集により神経プロテオームを広範囲に再編成する/勝手にサイエンスvol.4
はじめにRNA編集とはRNAの特定の位置で塩基の置換や、挿入、欠失がおこる現象である。RNA編集により翻訳産物であるタンパク質のアミノ酸配列も変化するため、遺伝子産物を質的に制御する機構である。
恒温動物では、温度変化により生理機能の統合が困難になる。複雑な神経系を持つ甲殻類では、かなり深刻な問題である。
研究では、温度変化によりOctopus bimaculoidesの神経プロテオームが、RNA編集を介して大規模な再構成を受けることを報告した。約13,000のコドンが影響を受け、多くの変化が神経プロセスに重要なタンパク質を変える。
特に、シナプトタグミンとキネシン-1では、RNA編集によってタンパク質の機能が調整される。シナプトタグミンでは、カルシウム依存性の神経伝達物質放出の重要な因子で、編集によってカルシウム結合が変化する。キネシン-1では、アクソン輸送を制御するモータータンパク質であり、編集によってマイクロチューブ上の輸送速度が調節される。また、野生のコウイカでも、温度依存的に編集が起こることが分かっている。
コウイカ類は、RNA編集により神経系の生理学的な機能を温度に応じて調整することが明らかとなった。