オーパーツ
オーパーツ : それらが発見された場所や時代とはまったくそぐわないと考えられる出土品や加工品などを指す。-wikipediaより
気がついたら布団の上にいた。
目がなんだかしばしばして手で拭うと、涙を流した後があった。気がつくと、さっきまで鮮明に覚えていた夢の記憶がさらさらと砂のようにこぼれ落ちていき、朝ごはんの卵をフライパンに割り入れる頃にはもう思い出せなくなっていた。
ああ、不思議な気持ちだな。
仕事のことを思い出し憂鬱になる。
その夢は、夜の海にいたところから始まった。
私は裸足で砂の上につっ立っていた。何も考えず、ただぼおっとつっ立っていた。
波の満ち干きが耳を揺らし、べたべたの海風が髪を揺らす。遠くの高い高いところから月に見下ろされ、何一つ生き物が存在しないかと思われた。
しばらくその状態で呼吸をした後、私はふと帰ろうと海の中へ歩き出した。後ろから、「その先は行っちゃダメでしょ。知ってるはずよ。」と、透き通った女の人の声がした。
私はふと正気に返り、その声の主を探して振り返った。
その女の人は少女だった。小さい体で、長い、カールさせた髪をなびかせ、服は透き通るように真っ白なワンピースのようなものを着ていた。
少女は私と目が合うと微笑み、ゆっくりと歩いて近づいてきた。
「ねえ、遊ぼう?」
彼女は指を私の手に絡めて、その細い腕からは想像もできないほど強い力で引っ張った。
私は不思議と安心した。
「あなた、誰?」
「わたしはカセキよ。」
カセキと私は夜が開けるまで、砂のお城を作ったり、泳いだり、鬼ごっこをしたりして遊んだ。
疲れて砂浜に寝そべり、私はカセキに聞いた。
「どうして、私と遊んでくれたの?」
「だってあなた、死のうとしてたじゃない。」
その瞬間世界がグラグラして、スマホのめざましの音が聞こえた。
そう、昨日見た夢はこんな感じだった。
あの少女は結局なんだったんだろうか。全然分からないが、彼女から海の波の音がしていたのを思い出す。
そうか、彼女は「海」そのものだったのか。
海は全てを見通す。過去も、現在も、未来も。人の奥底に眠る心まで。誰も、海に対して嘘はつけない。
自分のことを「カセキ」と呼ぶ海は、100億年前から、ずっと存在し続ける生ける化石だったのかもしれない。
そう思ったことすらも、もう忘れてしまった。