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歩くことでみつけた、母と私の発見。

「こんなに歩く生活、お父さんが生きていた頃はまったく想像できなかった」

そう母が言ったのは、犬の散歩の帰り道、細い路地を曲がったときのことだった。

「わー、お嬢発言でたよ」と茶化した。

私は、母の言葉だけを頭の中で反芻しながら、左右に揺れる短いしっぽを眺めた。


私は、母と一緒に歩いた記憶がほとんどない。

母と出かける時は、いつも車だった。

車を運転する母は、前しか見ない。ただ、ひたすら前。

私が思い浮かべる、昔の母の姿はいつも横顔だった。

その姿は、今までの彼女の人生そのもののような気がした。


4年前、母と私は鎌倉へ引っ越した。

犬の散歩がてら、ビールを片手に一緒に歩くようになった。

近所のコンビニまで行く時もあれば、海辺まで行くこともある。

歩くと色んな発見がある。
新しくできたカフェ、季節を感じる草花、たぬきやリスに遭遇することもある。

そんな発見に気がつくのは、大抵母である。

そんな彼女を発見できたことが、私の1番の発見だなと嬉しく思う。




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柳澤亜美
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