#25 つかの間の夢だった
つかの間の夢だった。
楽しくて、わくわくして、時に残酷で、そしてとてつもなく美しい夢だった。
儚く美しい、真夏の夜の夢。
語り部によって紡がれる言葉ひとつひとつが、
僕たちがいつの間にか忘れてしまったあの夏の日を、
思い出させてくれるようだった。
僕たちはいつの間に忘れてしまったのだろうか。
毎日がきらきらしていた。
難しいことなんてひとつも考えずに、ただただ毎日、
その日をめいいっぱいに楽しんでいた。
現実は時に、僕たちが思っているよりずっと残酷だ。
苦しくて、息ができないほどだ。
ひとりの夜は孤独で、朝がやって来るのが怖い。
眠り薬を飲みすぎてしまった彼もまた、同じなのだろうかと考えた。
どうか、夢から覚めた彼が、少しでも前を向いてくれますようにと、そう願わずにはいられない。
きっと大丈夫。大丈夫。
彼らと紡いだ夢物語があれば、きっと。
さぁ、僕もそろそろ寝よう。
いい夢が見られますように。
☆☆☆
劇団おぼんろ第19回本公演
「瓶詰めの海は寝室でリュズタンの夢をうたった」
2021/8/12〜8/17 シアターミクサにて