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雨の日の感傷

  雨の日の記憶は残りやすい

どこかで聞き齧った知識だ。真偽の程は分からない。だけども、なるほどなと府に落ちる。確かに雨の日の記憶は強く脳裏に焼き付いているような気がする。というのも私の幼い頃の記憶で印象深いものは雨の記憶が多いのだ。そして雨の日の記憶として私の中で感傷的に、温かく残っている記憶がある。それは、子供の頃の夏の日、家族旅行で行ったキャンプの帰り道の車内の記憶である。私はその時車内でかかっていたBGMもよく記憶していて、今でもその曲を聞くと何ともいえない感傷が、車の窓に振り付ける雨音と共に思い出されるのである。CHAGE &ASKAのSAY YESだ。

 子供の頃、夏休みに家族旅行で海にキャンプはうちの家族旅行の定番だった。いつまでだったかは定かではないが、小学生の間は行っていたような気がする。車にテント、バーベキューのセット、水着、浮き輪を積み込み、当時飼っていたゴールデンレトリバーと一緒に家族で海辺でキャンプをする。これは兎に角良い思い出として残っている大切な記憶だ。ほんとにとても楽しかった。虫だらけのキャンプ近くにあるトイレも、今となってはいい思い出だ。夜になると、沖の方にイカ釣り漁船の煌々とした明かりが見えるのだけど、私はそれを見るのが好きだった。その当時はその感情に名前を付けることは叶わなかったけど、今ならそれは感傷といえるんじゃないかと思う。今の私の言葉を使うならば、旅情的感傷、だろうか。四国に泊まった時は、星が本当にきれいだった。今でもさそり座のアンタレスが赤々と光っていたのをよく覚えている。暗い海の上に満点の星空。この上なく贅沢な夏休みだった。

キャンプの帰りは大概皆、くたくたになっている。疲れがどっと押し寄せて寝てしまっている。帰り道に雨が降った記憶はあまりないが、その時は雨が降っていた。疲れ切った身体。雨の振り付ける車の窓。車内にはSAY YESが流れる。冷房の効いた快適な車内。親の運転するその安心感の中、うとうとと微睡む。その時の安心感、心地よさ。もう二度と戻れないという感傷と共に、私の胸に大切な思い出として残っている。

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