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謎ブティックよ、こんにちは

 服を買う時、私はどうゆう所で最近買っているかなぁと考えた。
私の歴史に服の歴史あり。そういや、自分で服を買うようになったのはいつ頃だっただろう。遠い、遠い、遠い、遠い日々よ(さらば青春)
どんな店で買っていただろう。あめゆき、ユニクロと無印の存在を知る。ハニーズを知る。思い出そうとしたが思い出せない。私の服の歴史中期まで戻って来ねばなるまい。
皆さんがよくご存じ(であろう)店で買っている。服の好みや系統などはあるが、大体において価格帯的には世間一般で妥当とされているものだったと思う。勿論のこと、個人個人のお財布事情により、そこら辺の価格帯は個人差があることは火を見るより明白だ。敢えてそこは触れないでおこう。

 ともあれ、私という人間であってもそこそこは服を買ってきた訳だ。様々な服を買っているうちに慧眼が身に付き、何となく、何となくではあるが、卑小な一個の個体の分際で服の価値などというものに生意気にも少しの自信を持っていた。皺が入りやすい服、入りにくい服、肌触りがいい服、あまりよくない服。若い頃はさほど気にならなかったのだが、肌触りというものが段々と歳を取るごとに気になるようになってくる。服を買う時の基準は、「洗濯しなくていいか」「アイロンをあてる必要がないか」「綿か、綿じゃないか」だ。間違いない。勿論、細かく言うともっと色々ある訳だが、まずここをクリアしないことには話にならない。
ある程度目星がついてくると、気に入って買ったはいいけど、「これ、物の割に高くないか?」とか「このクオリティでこれは安い!!」という個体(服)が出現してくる。当たり前の話だが、私は後者だけしか欲しくない。クオリティの高い商品を限界まで安くで手に入れたい。何度も何度も失敗しながらも、この後者に巡り逢った時の感動は得も言われぬものがある。その日は1日きっと幸せだし、私はきっと満面の笑顔だし、地球は丸いし。

 さて、こんな私が最近では、少し高めの服をちょいちょいと買うようになってきた。人生先が見えてきたっつーか、いつ死ぬか分からんし、少しくらいええやろ、という心持ちが私の背中を押したのだ。これについてはまた別の機会に書きたいけど(もし筆が乗れば今日書くかも)マジで私、来世ある気持ちで生きてたんだ。何の自信か分からんけど90歳くらいまで生きる予定だったんだ。なので、金を使うことに異常なくらいに拒否感を持ってた。この金は置いとかんと!って。だって90まで生きるから。それはちょっと図々し過ぎるし。いつ死ぬかも分からんのにセーブするのも意味分からんなと思って、最近はちょっとずつ自分の欲しいものをちゃんと手に入れてってる。また、質が良くて安い服ってのも存在してて、手間さえかけりゃそれを手に入れることは難しくないんじゃないかと最近思い至ってる。

 そんな感じで気に入った服だったら少し高くても買っちゃおうぜ精神に移行した私が、先日百貨店で服を買った。
入口入ってすぐの所に間借りしてる感じでその店はあった。
入ってすぐ私はそこの服に釘付けになった。百貨店とかによくある臨時店舗のようだった。ヒラヒラとしたたっぷりのフリル、シックな色味。めちゃめちゃ好みだった。私はテンション上がった。色々見ていると店の人がやって来て話しかけて来た。どうやら夏物なので少し値段を下げているとのこと(それでも少しお高めだった)だった。私は更にテンションが上がる。当初そこまで買う気はなかったのだが、ここで一気に購買意欲が湧く。更に、そこでめちゃめちゃ好みの色の半袖のブラウスとそれと一緒にコーディネートしている黒のサロペットワンピースを見つける。私はここで買う決意をする(心理学の教科書に載ってるんじゃないかってほどの見事な釣られ具合すな)店の人に言ってその組み合わせともう1組み合わせの試着をすることに。めちゃめちゃ可愛い!!!これを買わないのは罪じゃ!!!私はテンションぶち上がり、合計3点の購入を決める。
まぁちょっと高いけど気に入ったし。とほくほくしながら帰路につく私。
この時の幸福感たるや!!!

 家に帰って早速ファッションショーをしてみた。ん?「裏地ないんか・・・」。いや、試着したのだから、その時点で裏地がないのは気づいていた筈だ。その時は全く気にならなかった。何か家で着ているととてつもなく裏地がないのが気になった。裏地ないんか・・・。しかも生地そもそも薄くね??これであの値段・・・?まさか、私ともあろう者が見誤った・・・!?百貨店だから油断したのか??店長さんの雰囲気に呑まれた!?私は動揺を隠せない。あのクラスの店で、こんなことってあるのか!?私はこの瞬間に様々な種類のことを考えた。そして、私はこの服が一体どこで生まれ、どのようにしてあの店に流れ着いたのかが気になった。タグを確認するもなし。どこぞのブランド品ではないようだ。ここで、私は服の卸問屋の存在を知るのである・・・・!!タグのない服。まぁ、あってもおかしくない。例えばユニクロであればユニクロが自分達で服を作って流通経路も独自のものだろう。しかし、大手チェーン店だけが、この世に存在する服屋の全てではないのだ・・・!!
そして後日、私は更なる衝撃を受けることになる。所用で出かけたしけた商業施設内に入ってる名もなきブティックを何の気なしに見ている時・・・それは起こったのだ。「これ、あの店で売ってたやつと同じちゃうか・・?」私は動揺した。店の雰囲気は百貨店にあったあの店とは程遠い。色んなタイプの服が雑多に適当に陳列されている。私が見つけた服は秋の新作として陳列されていた。私は慌てて値札を確認する。やっす・・・・!!!私の顔は強張っていなかっただろうか?般若のような顔を、していなかっただろうか・・・?
半額ほどの値段・・・だと。私はふと思いついたように他の服も物色してみる。当初店に抱いていたイメージとは、少し違って見えた。そこは、宝の山に見えたんだ・・・。

 謎が解けた瞬間だった。
きっと、2つの店の店長は同じ服をどこかの卸問屋で仕入れてきたのだ。それをどれくらいの価格で売るのかは店主の自由って訳だ。あの野郎(店主)上手くやったなぁ(敵に対する最大の賛辞・・・!!)私は色んなことを考えた。私はその卸問屋で買えるんだろうか。世の中に存在する今までめちゃめちゃ謎だったブティックはもしかして、宝の山・・・??今まで見てきた謎ブティックが私の脳裏に浮かんでは消え、浮かんでは消えていった。

 私は、モノの価値について考えた。何故私は騙された!??百貨店だから、私は油断していた。それは否めない。そしてディスプレイだ。同じような系統の服で纏められ、高級感があった。ディスプレイされていたコーディネイトのセンスが良かった。私は今まで、本当に物の価値をちゃんと見ていたのだろうか。私には分からなくなった。今回の件で本当の物の価値というものを考えるようになった。それは本当に相対的なものでなく絶対的なものなのだろうか。勿論、世の中には本当に質が良くて高級な品も存在している。それには相応の対価が支払われるべきだと思っている。しかし、売り手によって、雰囲気によって、価値が相対的に変わってしまう場合があるということだ。今回は良い社会勉強となった。買った服は魅力的なのでこれからも大事に着させていただく。

ただ、これからは謎ブティックをメインで服は買っていくことだろう。

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