【読書感想文】 角川「短歌」2023.9
言葉の、たった31音の連なりが、こんなにも異なるものになるのかと息をのみます。
印刷は黒一色だけれど色が違うというか、一首のまとう空気が違うというか……。
これを読んだときの感動を、どのような言葉ならここに置けるでしょうか。
やさしい感じを受けたのは、ひらがなと、平易な言葉が理由でしょうか。
句切れや倒置もありません。
けれど肩を怒らせるような雰囲気もあります。
内容からか、「苦」「世界」という漢字の見た目からか。
具体的な物が詠み込まれず、
特定の出来事への明示的な言及とも読み取れず、
言葉だけで、何かを訴えることができる、
言葉だけで、詩の実体をもっている、
そういう歌がここにあることと、
そういう歌を詠まれる方がいることに、
わたしは苦しいような気持ちになります。
この一行を読んだ1回目、
太くて速い、しぶきの飛ぶ雨が、
さあさあと降る細い雨になりました。
作者が詠んだ雨の変化には長い時間の経過があったかもしれませんが、
わたしが読んだときには、ぶわっと、膨らむような、雨の変化が起こりました。
そして、黒一色で印字された文字からこんな風景や変化が立ち上がることがあるのかと、動揺しました。
この一行を何度も読みましたが、からくりが分かりません。
たねがあるとして、それはこの一首のものであるうえに短歌のものかもしれません。
「あしひきのやまとりのをのしたりをのなかなかしよをひとりかもねむ」にもある「あしひきの」を「山田裕貴」にかけるのですか!?
罫線の入った青い海と、
大きくなりずれていく白い円。
ボールに手のひらで触れるように、すべての円に接する直線。
学校の勉強を離れて久しいのに、このユーモアに心が和みました。