友達になりきれなかった、あなたへ
これから大切にしていけたらいいな、っていう関係性を見つけた。
一滴の濁りもなく、純粋な関係性を築けていけたらと思った。
楽しかった。直接話すことも、LINEで話すことも、電話で話すことも。
綺麗なせせらぎが自分の心を満たしていくようで。本当に楽しかったんだ。
でも、いつからだろう。
透明度の高い水の中に、一滴の、本当に一滴の黒い雫が落ちた気がした。
急に不安になった。怖くなった。心がざわざわした。木々がさざめくように、手放したくない気持ちに襲われた。
最初は壊さないように優しく包み込むように握ってた、この関係性を表した卵を。
優しく優しく、温めていこうって思っていた。とにかく楽しんで、今この瞬間を。
それだけでいいって、思ってたのに。
いつかこれは孵化して、私の知らないところへ飛んでいってしまうんだ。
急にそんな不安に駆られた。どこからそんな発想が出てきたのか知らないけれど。
思った瞬間に、不安は大きく、一滴の雫は静かに広がって。
気づかないうちに、握りしめた手に力がこもっていた。
割れた、私の手の中で、ぐしゃっと。
あ、と思った。壊してしまった、と。
その瞬間に走馬灯が走る。楽しかった瞬間が、突風のように頭をよぎってく。
もう戻って来ないと、瞬時に悟った。
冷水を頭からぶっかけられたみたいに、全身を巡る血液が冷えていく。
あれだけ大事に握りしめていたものは、あっけなく私の手からこぼれ落ちていった。指の隙間から、どろりとした"それ"だったものが通り抜けていく。
指先は冷たくなって、握りしめることもできない。
ごめんね、本当に大切にしたいと思ってたんだ。謝ったって、もうどうにもならないって分かってるけど。
あなたもあなたなりに大切にしてくれていたって、今なら分かるのに。どうしてあの時は、ちゃんと理解できなかったんだろう。
視野が狭まって、狭まって、私の中に消えては浮かぶ不安だけが、この世の全てみたいになってた。
ごめんね、信じることができなくて。弱い私でごめん。自信のない私でごめん。
困らせた挙句に、傷つけてしまってごめん。
言い訳していいのなら、もうどうにもできなかったんだ。私なのに、私じゃないみたいで、手がつけられなくなっちゃって。
私の中で不安がどんどん大きくなって、ならばと思ってあなたに結論を出させてしまった。
今なら思うよ、馬鹿みたいに早すぎるって。
本当に、その通りなんだよ。
優しくしてくれてありがとう。なのに、壊してしまってごめんなさい。
ここで呟いたって、あなたには届かないって分かってるけど。
それでも、言えない思いを綴るしかないから。ただのエゴの塊。
ごめんなさい。
それでも、私とまた話してくれてありがとう。
雨降って地固まればいいな、なんて都合のいいことを考えるよ。
ぬかるみを踏み固めて、新しい何かを作れたらいいななんて。都合のいいことを考える。