『嵐を呼ぶレース参戦記』(復刻版)第十五話「嵐を呼ぶ真夏の決戦」
◇K-Carインターカップ、ターボクラス決勝!◇
2004年8月1日。灼熱の太陽が照りつける真夏の真昼。
圧倒的に速いライバルカーに囲まれつつ、私がドライバーを務める嵐を呼ぶアルトワークスは孤軍奮闘していた。
いや、孤軍奮闘というか、一台だけ別次元で遅いというか…。
ともかく襲い来る激速マシンたちに道を譲りつつ、とにかくスピン、コースアウト、接触などのトラブルに巻き込まれないように頑張っていたのです。
上位を争うマシンとの性能差は前回見ていただいたとおり。
となれば、私に出来ることはノートラブルでマシンを第二ドライバーのkyu氏に渡すことのみ。
ただし、私に与えられた時間は30分もあり、私のラップタイムでも25周くらいは走れる計算になる。
そこで私は、完全に開き直った。
レース序盤はライバルとの速度差や、譲るタイミングで右往左往だったのだが、だんだんそれにも慣れてきた。
なにしろ、速度差があるので走行ラインをふさがない限り、みんな上手に抜いていってくれるのだ。
ということで、気分的にはだいぶ楽。
すっかり落ち着きを取り戻した私は、ここである決意をしたのである。
すなわち、
「よし、このレース中にヒール&トゥをマスターしてやるぜ」
…そこ、笑わないように。
そうなのである。
これまで2度のジムカーナ、3度の走行会に参加しながら、私のヒール&トゥはまだまだ未完成だったのだ。
ならば、30分も全開走行が出来るこのチャンスを逃して、この先練習する機会はもう無いだろう。
と言うのも、実はこのアルトワークスは車検が9月で切れるため、我々の予定ではこの耐久レースが終わったら廃車にするつもりだったからである。
もちろんレース中にエンジンブローなどのトラブルが出たら、その時点で即時廃車決定だ。
そんなわけで私にとっても、これが最後のドライブだ。
5月の出会いから8月まで、幾多の困難を共にしてきたアルトワークス…。
ハンドルを握る私の胸に、万感の想いがこみ上げる。
だからこそ、私の実車でのドラテク向上のため、最後まで手を抜かないことが一番大切なことではなかろうか。
ってなわけで、坂を上りきった先のヘアピン、ホームストレート後の17Rなどのブレーキングポイントで、私は果敢にヒール&トゥに挑戦。
そして、速いマシンが来れば道を譲り、譲った後はその速いマシンになるべくついていけるよう、ラインを参考にしたり…。
とにかく、すごい密度で私は実戦練習を重ねていたのである。
難コースのヒーローしのい。だが、耐久レース決勝という大舞台は私に計り知れない経験を積ませてくれた。
1分1秒があっという間に過ぎ去る。
13周目には早くもトップのカプチーノに2周遅れにされるなど、相変わらず遅いのだが、ビデオを撮影しているB.A.R軍団から「直線は遅いけど、雨続くんは割と頑張って走ってるやん」とのコメントも。
そうです。頑張ってるんです。遅いけど。
そこから5周後。またまたイエローのカプチーノがヘアピンで速いマシンにラインを譲った私のアルトに襲い掛かる。
これで早くも3周遅れである。
ともあれ、遅いことを除けば、私の走りはまったくのノートラブル。
ヒーター全開の効果か水温も90度以上には上がらなかったし、助手席側の窓を開けていたおかげで想像したほどには暑くもなかった。
B.A.R軍団の願いを聞き届けてくれたのか、私の担当する第一ヒートは瞬く間に25分を過ぎようとしていた。
ちなみに、私は知らなかったがこのとき予選PPの19号車『小山SPEED☆ラリー友の会』のアルトワークスは車両トラブルの為なんと無念のリタイア。
それを知ってか知らずか、1号車『RTブレストカプチーノ』は49秒台をたたき出しつつトップを快走中。
これで走行中のマシンが全13台になり、我ら『B.A.R・スズキ』は順位をひとつ上げ13位になったのである。
そしてレース開始からおよそ28分ほどが経過した時点で、私は時計を見るとピットインを決意。
ヘアピンを抜けたところで合図となるハザードランプをつけるとピットロードへと進入。
レギュレーションでピットロードでの速度は10km/hとなっていたので、私はそれをオーバーしないように慎重に、ゆっくりゆっくりアルトワークスを進ませる。
ちなみに、これはレース中のほかのマシンを見ていて分かったのだが、だれも10km/h制限なんか守っていなかった(笑)
多分速度制限はもうちょっと先かららしく、みんなもっとスピードを出してあそこのピットロードの坂道を駆け下りていたのである。
なので、あまりにも愚直にゆっくりとピットロードを進んでくる私のアルトワークスを見て、マーシャルの人は車両トラブルだと勘違いしたらしい。
私に駆け寄ってくると「どうしました? トラブルですか?」と一声。
「いえ、ルーティンのドライバー交代です」
ってことで、ここでまたちょっとタイムロス(笑)
そのまま誘導されてピットロードへ。
実況でも言っているように30分が過ぎようと言うこのタイミングで各チーム1度目のドライバー交代ラッシュとなったようである。
我がB.A.R軍団は、他のチームに先駆けて、まっさきにセカンドドライバーのkyu氏に交代。
スムーズなピット作業(?)でそのままコースに復帰したのである。
これにて、私の仕事は無事終了。
課題だったヒール&トゥも最終的にはほぼ100%近い成功率を誇るまで上達。
さらに、ラップタイムも単独走行が出来た周は1分0秒台や1秒台が並ぶなど、安定した走行が出来ていたのである。
この1分0秒台のタイムはもちろん自己ベスト。
以前の走行会で出したタイムを2秒も更新していたのである。
なにより予選でのT氏のタイムから1秒落ちというのは、我ながらなかなかのものだと思う。
よく頑張った自分。偉いぞ自分。
あとはのんびりジュースでも飲みつつ、kyu氏の頑張りを応援しよう。
◇第二ドライバーkyu氏◇
ってことで、さらにビデオを回し続けているT氏やE氏のところに私も合流。
3人での応援と相成ったわけである。
「さて、kyu氏のお手並み拝見と行きますか。1分切ってくるかな?」
と、見ていた3人は2周目のkyu氏のタイムでいきなり度肝を抜かれます。
E氏:「おおーっ、57秒台や」
T氏:「出た? いきなり?」
私:「速ーっ」
T氏:「乗ってるねぇ」
ちなみにkyu氏は走行会のときのベストラップは59秒台。
ってことで、kyu氏もまた自己ベストを2秒更新。しかも2周目で。
なんだろう。私が2秒更新したんで対抗したのか?
ともあれ、あっさりと私より3秒も速いタイムをたたき出したkyu氏の腕には驚きである。
そして次の周。kyu氏に最大の見せ場が!
ま、まさか、嵐を呼ぶアルトワークスがオーバーテイクを!?
えーと、残念ながら抜けませんでした。
以上。kyu氏の見せ場終わり。
でも、しばらくkyu氏と青いアルトワークス(59番『TEAM ORT with GARAGE M1』)との接近戦は続きます。
…じわじわとその差を広げられつつですが。
いや、だってベストラップが57秒台とは言え、現時点で走っている13台の中では一番遅いことには変わりはないわけで…。
それでも私と比べると周回遅れにされる回数は格段に減ったような気がする。そんなkyu氏の力走はこのあと30分ほど続きます。
続いて、我らB.A.R軍団のエース、FFのスペシャリストE氏の出陣です。
ちなみに走り終えたkyu氏いわく、10分過ぎてからギアが繋がりにくくなった、とのこと。
ヒール&トゥでちょっと多めにエンジンを回して慎重にシフトチェンジをしていたそうです。
それでもコンスタントに58秒台、終盤にも57秒台に入れてくるようなハイペースで飛ばしていました。
さすが。
それから、心配していたガソリンの残量ですが、まだ半分以上残っている模様。
ってことはこのままのペースで行けば無給油で2時間走りきれるかも。
これはちょっとはB.A.R軍団に有利に働く可能性が。
というのも、給油の際は無条件で10分間の給油時間が取られ、たとえそれより早く終わってもピットから出してもらえないというレギュレーションなのです。
これは、慌てて給油することで事故が起きてしまうのを防ぐためのルール。
ってことで、給油するチームはしないチームと比べ、大体8周~9周分くらいは損をする計算になります。
以上、注釈終わり。
◇第三ドライバーE氏◇
さて、意気揚々とコースに飛び出したE氏は早速57秒台に入れてきて、しかもコンスタントにそのペースで走行。
これまたさすがです。さすがはうちのエース。
そして、そんなE氏の力走のさなか、コース上ではある大事件が…。
なんと、トップ快走中だったカーナンバー1番『RTプレストカプチーノ』が突如上り坂でスローダウン。
ヘアピンの入り口のところでマシンを止めてしまいました。
ただ、このカプチーノ、のろのろと動いてあとは坂道を惰性で降りてきてピットにたどり着きました。
そしてそのままピットガレージの中に…。
ちなみに結果的にカプチーノは修理して再びコースに戻るのですが、優勝争いからは完全に脱落してしまいました。
そんな中、E氏の快走は続きます。
なんとなんと、ゼッケン25番『TEAM FREEDOM』のヴィヴィオにじわじわと追いついているのです。
そして、ついに…。
テールトゥーノーズ!
しかし、抜けない。あとちょっとなのだが抜けない。
だが、これがレース。これぞレース。
我ら『貧乏・アルトワークス・レーシング』がこの耐久レースでは初めてレースらしい盛り上がりを見せる。
これがE氏の技量。マシンの性能差をカバーするドライバーの腕ってものを見せてくれます。
ヴィヴィオと嵐を呼ぶアルトワークスのタイム差は1秒。それもこっちのほうが速いのです!
見ている3人も応援に力が入ります。
そして次の周!!
(ビデオカメラのバッテリーが切れました)
その交換を終えて再びカメラを回すと…。
なんと順位に変動が!?
そうです。なんと驚く無かれ、嵐を呼ぶアルトワークス初めてのオーバーテイクです。
ヴィヴィオを抜いて、依然最下位!
・
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・
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OTL
いや、まぁ、抜いたけど順位に変動はありません。
でもコース上での追い抜きに我々は猛烈な感動を覚えていました。
これぞレース。これがレース。
お金をかけなくたって、これだけ楽しめるんです。
たとえ、追い抜きのシーンをビデオに収めることが出来なかったとしても、そしてバッテリーの交換のせいで、私だけがそれを見逃したとしても…、あの鮮烈な感動はみんなの心の中に。
ちなみにビデオを回したのは抜いた次の周。そのタイミングでピットから1号車が再びコースに復帰していました。
そしてこの辺りからゼッケン15番『ASオオニシカークラブ』のキャロルターボのペースが1分5秒台と急に遅くなりました。
結果、このマシンはトラブルのためそのまま無念のリタイア。
本日2台目のリタイアにより、コース上のマシンは12台に。
もちろん我らがB.A.R軍団は12位でございます。
と、驚くのはまだ早い。
なんとゼッケン15番に続き、6番『K-car Club イエローマジック』のアルトワークスまでもが緊急ピットイン。そしてそのままリタイアとなったのである。
2台が立て続けにいなくなりB.A.R軍団これで11位。
それからオーバーテイクにも成功し意気あがったのかE氏は絶好調。
終盤にはうちのチームのベストラップとなる56.921を記録。
なんと驚きの56秒台突入である。
これには見ていた我々もびっくり。
エースの貫禄を見せつけてくれました。
そして仕事を終えたE氏もピットイン。
今度はT氏にドライバーチェンジです。
が、降りてきたE氏いわく、どうやらガソリンの残量がピンチです。
E氏の激走が相当ガソリンを食ったのか、ともかくT氏が走っている間に給油の準備を済ませピットインを待つことに。
交代の際T氏には燃料が本当にやばくなったらヘッドランプをパッシングしてね、と作戦伝達。
ってことで、ピットに残った3人が給油の準備にあたふたしていたため、T氏の激走の模様はビデオに残っていません(笑)
きっと速かったに違いないですが、あいにく今となっては誰にも分かりません。
◇第四ドライバーT氏◇
ってなわけで、T氏がコースインしてから多分10分くらい経ったところでピットインです。
しかし、不思議なことに給油によるピットインは我々B.A.R軍団がはじめて?のようなのです。
他のチームの皆さんは無給油で走りきれちゃうんでしょうか? アレだけのペースなのに?
E氏:「なんでノーマルの俺らが給油せなあかんの?」
そうそう、不条理です。他のもっとパワーのあるクルマはさらに燃費が悪いだろうに…。
ともあれ、安全のためヘルメットとグローブ装着で給油作業です。
T氏のドライブするアルトワークスが給油所に滑り込んできました。
そのままkyu氏が給油タンクを持ち、E氏がサポート、そしてこれまたレギュレーションで決まっているのですが、消火器を持ってもう一人がスタンバイです。
つまり私ですが。
消火器を左手に持ち、右手でビデオカメラを回しつつスタンバイ。
そして我々の給油が呼び水となったのか、ここに来て急に他のチームも続々と給油のためにピットイン。
ピットはちょっとした混雑状態になりました。
しかし、レギュレーションで給油のためピットインしたマシンが再びコースに出るには10分待たねばなりません。
ただむなしく10分を黙って過ごすのもなんですから、最後の悪あがきにとペットボトルに水を汲んできて、それをラジエーターにじゃばじゃばかけてみます。
オーバーヒートの心配がこれで多少減りました。多分、きっと、おそらく。
10分後、再びT氏コースへ。長かった2時間の耐久レースも残りあと10分。
さて、我々が給油のためコース上を離れていた頃、いつの間にか予選3位だったゼッケン50番『K-STマジちゃんS!団』のアルトワークスもトラブルが発生したらしくピットインです。
果たしてコースに復帰なるか?
残り10分、まだなにが起こるかわかりません!
ってことで、T氏はベストラップ58秒台を出したものの、マシンをいたわりつつ後半は1分0~1秒台での走行を続けています。
と、そのとき、私の目にとんでもない光景が…。
ゼッケン21番『平野オートボディレーシングチーム』のミラターボが上り坂で片輪走法!
縁石に乗り上げて左側が完全に浮いたまま2秒ほど走っていました。
これにはびっくり。
見ている我々みんな驚いてます。
そして、片輪走行に気をとられていますが、実は動画には一台のマシンがスロー走行(?)している様子が写っていました。
このことが残り2分での劇的なドラマの伏線だったのです…。
◇残り2分◇
すでに実況もまとめモード。ようやくこの時点での順位が発表されました。
1位 28番『Saito Garage』(ミラターボ)
2位 45番『江田工業』(ヴィヴィオS/C)
3位 59番『TEAM ORT with GARAGE M1』(アルトワークス)
4位 50番『K-STマジちゃんS!団』(アルトワークス)
5位 25番『TEAM FREEDOM』(ヴィヴィオS/C)
6位 21番『平野オートボディレーシングチーム』(ミラターボ)
7位 39番『FFNR』(ミラターボ)
8位 48番『I.S.T オート』(アルトワークス)
9位 1番『RTプレストカプチーノ』(カプチーノ)
10位 37番『サイトス アルト』(アルトワークス)
11位 49番『B.A.R・スズキ』(アルトワークス)
「11番手!?」
そうです。もちろん現場にいた我々は落ち着いて順位を整理することも出来ず、てっきり13位だとばかり思っていたのでした。
そして順位に驚く間もなくT氏が魅せてくれました。
おそらくは燃費走行に切り替えクールダウン中の45番『江田工業』の青いヴィヴィオに襲い掛かりオーバーテイクを試みたのです。
盛り上がるB.A.R軍団。
そして我々からは見えていないコース中盤でT氏はどうやらヴィヴィオをパスしたようです。
ですが、それよりも今度はピットから何とか出ようとしていた50番『K-STマジちゃんS!団』がスタートできずピットレーンの出口で止まってしまいます。
私がその50番のアルトワークスにカメラを向けた瞬間!
サーキットに嫌なスキール音と悲鳴がこだまします。
kyu氏は飲んでいたジュースを半ば吹き出しつつ驚きの叫びを上げてます。
私も慌ててそちらにカメラを向けると…。
21番『平野オートボディレーシングチーム』が横転!
どうやらここ数周続いていた片輪走行がついに破綻したようで、そのまま横転したものと思われます。
幸いドライバーは無傷のようですぐに脱出していましたが、ともかくこれでコース上はイエローコースコーションとなりペースカーが入ります。
このままペースカーに先導されてゴールと言うことになりそうです。
それにしてもなんということか。残り2分を切ったところで立て続けに走行不能です。
これで、一気に50番と21番がリタイア。
他人の不幸を喜ぶのは心苦しいのですが、『B.A.R・スズキ』はこれで順位が2つ上がったことになります。
9位です! シングルフィニッシュです!!
繰り返します。他人の不幸を喜ぶのは心苦しいのですが、なんと9位ですよ!
ってことで、ペースカー先導で半周走り、横転したマシンがいるエリアの手前でペースカーが停止。
あとはコースをショートカットし、そのままチェッカーを受けてくださいと言うことらしい。
しかも、たまたまその時にわれらが嵐を呼ぶアルトワークスはペースカーのすぐ後ろにいたため、感動のトップチェッカーを受けることになったのです。(見た目だけ)
そして、チェッカーを受けて、完走を称えあっていた我々の目に飛び込んできたもの、それは、コース上に止まってしまった一台のマシン。
最後の最後、ゴールまで残り50mというところで48番『I.S.T オート』がオーバーヒートで走行不能になりチェッカーを受けられず。
レギュレーションにより最後自走してチェッカーを受けられなければ、その時点で何周していようとリタイア扱いなのです。
と、言うことは?
驚く無かれ。
これはもうまさしく奇跡。
一番遅いマシンですが、とりあえず最後まで走りきったことで神様からのプレゼント。
『B.A.R・スズキ』なんと8位入賞ですっ!!!!
ポイントゲットです!!!!
嵐、呼んじゃいました。
◇エピローグ◇
こうして1億5千万人の夢を乗せて走った嵐を呼ぶアルトワークスは無事2時間の耐久レースに完走。
それだけではなく、なんと奇跡の入賞まで果たしてしまったのである。
我々B.A.R軍団の喜びは言うまでもない。
午後からはNAクラスの4時間耐久も開催されていたのだが、それを見ることなく我々はサーキットを後にした。
そして、祝勝会ということで、そのまま近場の鬼怒川温泉へ。
我々は目に付いた適当なホテルで日帰り入浴を楽しんだのでした。
鬼怒川の絶景に気持ちのいい温泉。さらに入賞の喜びと充実感が疲れた体に染み渡ります。
まさしく至福のひと時です。
なので、私の口から、ついこんな言葉がこぼれました。
「あのさ、アルトワークスもらっていいかな? 廃車にしないで俺が乗ろうと思うんだけど」
そう、私の中で2時間耐久を共に走りきったこのマシンへの愛着はどんどん強くなっていたのです。
このまま手放すなんてことは出来そうにありませんでした。
もちろん、誰も異議はありません。
元々廃車にする予定だったマシンです。
ただし、車検を通す費用は全額私持ちなのは言うまでもないことですが…。
こうして2時間の耐久レースを戦い抜いたアルトワークスは、車検&二人乗りへの構造変更手続きを経て今度は私の手に渡りました。
後部座席もなく、内装も全部はがしたこのマシンはこれ以後、かけがえの無い私の最初の愛車として大活躍するのです。
そう、これは嵐を呼ぶレース参戦記にして、私とアルトワークスとの出会いの物語…。