地方創生が“成立しない”理由──現場プレイヤー不足と行政・民間の壁【前編】

地方創生──誰もが耳にする言葉ですが、現場で実現させるのは決して簡単ではありません。 私たちWONDER SEASONは、沖縄・国頭村をはじめ各地で多岐に渡るジャンルの方々と共に一次産業の活性と所得向上を目指して挑戦しています。 今日は、私自身が現場で感じている「地方創生を成立させるために必要なこと」についてお話しします。

「進行役(地域共創ナビゲーター):本日はよろしくお願いします。まず、地方創生に取り組む中で最初に直面した壁について教えていただけますか?」

【現地プレイヤー不足という最大の壁】

私: 「私たちは前回にも述べた通り、地方創生は“出口戦略”だと定義しています。地域内で何かを生み出すだけではなく、首都圏など外部で価値を伝え、販売し、経済を回す仕組みまでつくり切ることが、本当の意味での地方創生だと考えています。その実現には、まず二種類のプレイヤーが必要です。

  1. 現地で日常的に動き、地域を回し続ける“現地プレイヤー”

  2. 首都圏で、価値を高め、都市のマーケットに接続する“発信・営業プレイヤー” この二つが両輪で噛み合って初めて地方創生は成立する。しかし、現地で“回す人材”が圧倒的に不足している──これが、地方創生の現場で直面する最も大きな壁です。」

「現地プレイヤーとは、具体的にどんな役割を担う存在でしょうか?」

私: 「例えば、生産者をまとめたり、観光客やバイヤーを受け入れたり、地元の関係者間を調整しながら日常的に回していく人です。首都圏プレイヤーだけでは、絶対に成立しません。東京側でどれだけ販路を開拓しても、現地で実務を動かしてくれる人がいなければ、すべて机上の空論になる。行政職員もいますが、公務員として公平性や書類対応に追われる中で、農家さんと細かい調整をしたり、イベント現場で臨機応変に対応したりすることまでは難しいのです。だからこそ、外部から入り込んで、現場で汗をかいて地域を回せる実務プレイヤーが必要だと痛感しています。」

【行政意識と補助金の限界/縦割り構造の弊害】

「現場プレイヤー不足のほかにも、現在感じている課題はありますか?」」

私: 「はい。次に大きな壁は、行政の意識です。私たちは一次産業の活性と所得向上に重きを置いています。しかし、行政側の『成功の物差し』が、生産者目線ではなく、『事業を消化したかどうか』になってしまっているケースが多い。例えば、ふるさと納税。果樹や海鮮、肉類など人気返礼品は飽和状態です。『来年倍にするぞ!』と言っても、生産力は土地や担い手不足など現実的な制約があるため、簡単に増やせるものではありません。」

「その担い手不足の背景には何があるのでしょうか?」

私: 「所得が低いからです。だからこそ、継続的な出口を作り、今よりも高い価格で取引ができる新しい流通の仕組みを作る必要があります。しかし、行政の補助金・補助事業は、本来“未来への投資”であるべきなのに、打ち上げ花火的な単発イベントや、綺麗なレポートを作って“やった感”で終わってしまうものが多い。生産者にとって収穫期は数ヶ月続きます。一時的な盛り上がりではなく、継続的に首都圏などエンドユーザーの目に触れ、買い続けてもらえる仕組みが必要です。

加えて、もう一つ見過ごせないのが、行政組織内の縦割り構造。 各部署ごとに別々のプロジェクトが進行し、連携が取れていないため、無駄なコストが発生したり、せっかく関わっている外部リソースの情報共有がなされないケースが多々あります。 例えば、農業振興と観光促進が別々に事業を進め、結果的にお互いの強みを活かしきれないこともあります。

本来なら、関わる方々のポテンシャルを横断的に活用し、農業・観光・販路開拓といった事業を一体的に推進する方が、地域全体の経済を効率的に回せるはずです。

そのためには、縦割りを解消し、横軸で各事業をコントロールする組織――例えば、『地方創生推進室』や『地域活性化協議会』のような横断的な機関を設けることが必要不可欠だと考えています。

さらに、こうした横断的な体制が整えば、関わる企業・人材・資金をレバレッジ(てこ)として活用し、一つの事業を単独で終わらせるのではなく、複数の事業や地域全体に波及効果を生むことが可能になります。 限られた資源で最大の効果を出すためにも、レバレッジを意識した事業設計が必要不可欠です。

このように、組織体制から変革し、外部リソースも柔軟に活用する仕組みが整えば、地方創生はより持続可能な形で前進していけるはずです。」
とはいえ、人事異動などもありますから、最終的には民間企業が全てを担うことが最終ゴールになります。

【民間意識の変革も不可欠】

「行政の意識を変えるのも簡単ではないと思いますが、どのように働きかけていますか?」

私: 「意識を変えてもらうだけでは限界があります。加えて、民間事業者側の意識変革も必要です。生産者に対して『安く大量に』というこれまでのスタンスを見直し、持続可能な関係を築く姿勢が求められます。だからこそ、私たちは今、既に取り組んでいる自治体の担当職員さん、変革をしたい職員さん、参画してくれているシェフ、バイヤー、メディア関係者をつなぐコミュニティを作り始めています。『自分たちもできる!』と思ってもらえる機会を整えることで、意識改革ではなく、現場感を持って動き出せる環境を作っています。」

「“現場が変わり始めている”という希望が見えてきますね。」

私: 「はい。地方創生は、人が変われば必ず動き出します。次回は、現場で実際に変わり始めた事例や、具体的に動き出している仲間たちについてお話しします。また、今後は、実際にゲストを交えた対談形式での投稿も予定していますので、どうぞご期待ください。

さらに、WONDER SEASONでは、ファーマーズマーケットでの販売や地方創生の取り組みにご一緒いただける企業・ブランドも募集しています。興味をお持ちいただいた方は、ぜひご連絡ください。」

──【後編につづく】

この記事に関するご意見・ご質問があれば、ぜひコメントでお寄せください。皆さんの声をもとに、今後取り上げるテーマも広げていければと思っています。


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