『ルックバック』の読後感想文。2021年7月19日の日記
少年ジャンプ+で掲載された『ルックバック』が話題になっている。
まずは、何も情報を入れずに読んで欲しい。
※ここからは、作品の内容について書く部分があるので、未読の方はご注意ください
指のマークの下に文章が書かれていますので、ドラッグまたは、スワイプお願いいたします。
👇
👇
ここから文章開始いたします。
この漫画を読後して、最初に沸き上がった感情は喪失感と無常観だった。
小学校の学級新聞で4コマ漫画を描いている藤野と、4コマにデッサン的なイラストを描く学校に行けなくなった京本。
創作しているからこそ、他の技術の高さや才能が良く分かるし、藤野はここで自分の技術の至らなさと向き合うことになる。
その作業は苦痛であり、それを認めることが出来ない人間が、他者を否定したり攻撃する傾向があるように感じる。
しかし、藤野はそれを認めた上で、技術を向上すべくデッサンの勉強をするのだ。
卒業式後に、卒業証書を渡すため京本の家に向かった藤野は、京本と顔を合わせることになる、そこで、京本が学級新聞の4コマ漫画の大ファンだったことを知るのである。
京本はデッサンが出来るが、創作力が無いと感じていたからこそ、藤野の創作力に魅力を感じたのだろう、しかし、創作力があってデッサン力が無い藤野は京本に出合うまで、脅威を感じていたのである。
京本の新作を読みたいという言葉に、藤野の消えかけていた創作意欲に火がついて、雨の中走りながら家に戻って、漫画を描くシーンは印象的だった。
自分が表現している物が、他のだれかに勇気を与えていることを実感しながら創作しているクリエイターはどれだけいるのだろう。
その後、藤野と京本がコンビを組んで漫画を描くことでお互いの距離が近づいていくが、京本が美大に行きたいと藤野に伝えたことで、漫画の共同作業が終わりを迎えることになる。
その後、藤野は漫画家デビュー、京本は美大に進学してそれぞれの道を歩む中、美大で侵入者による無差別殺人事件が発生して、京本が犠牲になってしまう。
『ルックバック』内で無差別殺人事件のモデルになった美大は、地元で有名な美大でもあったので面食らってしまった。
この美大は、丘の上にあって街を見渡せる場所に建設されているので、自転車で通うには、急勾配の坂道を上ることになる。
歩いていくものなら、ちょっとした登山ぐらい体力を奪われる。
そんな立地条件に侵入者が入ってくる時点で、その人間のヤバさと狂気性が浮き上がってくる。
京本の告別式に参加した藤野が、「私が京本を誘わなければ、死なずに済んだのでは無いか。」と葛藤する気持ちは心中察するところがある。
でも、不登校で外出するのもままならない京本にとって、二人で漫画を描いていた時間は有意義で、掛け替えのないものだったはずだ。
藤野の創作活動に共鳴して、漫画を描く時間を共有できたからこそ、京本も自分の夢に向かって歩く決断が出来たのだと思う。
理不尽な絶望に打ちのめされた藤野は、漫画から距離を置くことだって出来た。
絶望しても、希望を持っても世界は何も変わらない。
だからこそ、自分が表現した物が、他の誰かを勇気づけていることを信じて、藤野は漫画を描くことを選択したのだろう。
京本への追悼の思いと共に。