刀ミュ 静かの海のパライソの感想のようなもの
なぜ今更、と言われそうな気はするのだけれど。
私は2021年の10月に福岡で見ています。
割と最近刀ミュの鑑賞会というものをしました。
そこで二度目のパライソを浴びたわけです。
今更ながら本編のネタバレがあると思われます。
オタク特有の早口のような文章かもしれません。
以上を踏まえてどうぞ。
初演は数公演で中止になった。
珍しく割と良席がご用意されていたが、私が行くはずだった公演も当然のように中止になってしまった。
2020年の春だ。
あの数える程の公演を観たであろう人に感謝する。
ずっとあの重すぎる内容を心に留めていてくれたことに。
以前私は源氏双騎出陣(初演)をステラボールで観たのですがその際もネタバレは禁止、私が見た日から千秋楽までは一週間ほどだった。
それでも私の情緒はかなりガタガタになった。
解禁した時やっと話せる、と安堵した。
それを一年半近くも、しかもあの内容を心に留めおくことが出来た人達は本当にすごいとしか言いようがない。
だって本当に現地で見るまで、少なくとも私は一切のネタバレを見ることは無かったから。
静かの海のパライソは島原の乱が舞台、というのは聞いていた。
前評判としてミュージカルとして素晴らしいとも。
歴史の授業で学んだことなので、大まかな流れはだいたい知っている。
それをどうミュージカル刀剣乱舞の演目に落とし込むのか。
さぞ泣くのだろう、泣かせに来るのだろう。
そんなことを予想していた。
けれど、どこまで話が進んでも、酷い状態に追い込まれていく様を見せられても、私は泣けなかった。
それまで色々な刀ミュを見てきたけれどここまで涙が出ないことは初めてだった。
最後の方で少し涙が滲んだような記憶はある。
酷くダメージを受けるだろうと思っていた。
ダメージは受けた、と思う。
でも、泣くことは出来なくて。
あまりにも救いのない地獄のような話を私は一度で消化することが出来なかった。私の感情は一度観ただけでは追いつかなかった。
だからこそライビュも行かなかったし、敢えて観ようとしていなかった、とも言える。
だからパライソ見ましょうとなった時正直怖かった。
もう一度見た時、やっと私は泣くことが出来た。
こんなにも、美しい場所でこんなにも残酷なことが行われたのか。文字としては知っていても、知識としては知っていても。
歴史として学んでいても。
多分それは覚える必要があるから、詰め込んだ知識でしかなく。
自分から物語としてみようとして初めて、そこで起きたことを物語として受け取ることが出来た。
ミュージカル刀剣乱舞という、好きな作品だからというのは当然大きい。
そこに生きていた人がいた。
当然なんだけれど、知識としては人がそこで生きていたというより、これだけの人が亡くなりましたという数字があった認識に近い。
そこにいた歴史上に名前が残されなかった人達にも生活があったんだということ。
けれど歴史通りにすすめるためにはそこに生きている人達には歴史通り亡くなってもらわなければならない。
それが歴史を守るということなんだっていうのは作中でもそういう表現があったと思うのだけれど、助けることは出来ない。助けることは歴史を改変することで、刀剣男士は歴史を守ることが使命だから。
どんなに助けたくても、歴史通りに進めるしかない。
地獄。
色んなことを改めて理解してからは涙が止まらなかった。理解してやっと泣くことが出来た。
刀剣男士ってのは本当に……。
なんなんだろう。
今出ている作品はだいたい観てきました(単独公演や江おんすてぃじはみてないんですが)。
刀剣男士の使命の重さに改めて気付かされたのはこの作品からかもしれないです。
最初に観た時にはそれに気づけなかったんだと思う。いや、気づこうとしなかった、見ない振りをしていた。
多分鑑賞会までに、江水を見たりしたのはある意味影響はあったのかもしれない。
刀剣男士が歴史を守るというのは当然どの作品でも、その葛藤と刀剣男士が向き合う姿は描かれている。
今回はその向き合う先の多くが歴史に名前を残す訳では無い人たちだったこと。
救えない三万七千人の人たち。
その一人一人の名前を私は知らない。
だけど歴史に名前を残さなかった人達にも生活はあって、本当なら幸せに生きられたかもしれない。
でも歴史上その歴史は正しい歴史ではないから、歴史通りにその人たちは死ななければならない、殺し合わなければならない。
そんな物語だった。
それを受け入れるのに一年以上かかったんだ。
もう、私が福岡で静かの海のパライソを見てから二年が経とうとしている。
悲しくて救われない、けれど、とても好きな作品だ。
私にとって好きな刀ミュ作品のひとつだ、と今は言える。
もう一度見てよかったと今は思う、見なければ多分こんなに好きな作品として私の中で、静かの海のパライソを理解することが出来なかったから。
ありがとう。