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ショートショート「便利な世界」(読了時間1分)

「便利な世界になったもんだ」
 床を掃除するロボット掃除機を見ながら、彼はつぶやいた。この掃除という面倒な作業も、昔は人間がやっていたらしい。今では考えられない。

 2000年ごろから進んだロボットによる自動化は、どんどん進化してきた。面倒なことは、何もかもロボットが自動でやってくれる。
 ロボット食洗機は食卓から皿を運んで洗ってくれるし、ロボット洗濯機は洗濯物を干して畳んでタンスに入れてくれる。ロボット調理機は必要な食材の注文から、食べ残しの保存までしてくれる。面倒な家事をする人間など、ほとんどいなくなった。

 家事だけじゃない。ロボット自動車は自動運転で目的地に運んでくれる。ロボット買い物機は必要なものを買ってきてくれる。ロボット仕事機は人間の代わりに仕事をしてくれるし、ロボット恋愛機は彼女の機嫌をとってくれる。ロボット政治機は人間よりずっと最適な政策を決めてくれた。

 そんな中、ついに最も面倒なことのロボット化が実現したのが15年前だ。
「本当に何もかもロボット化してしまったな」
 彼、、、つまりロボット人間機はつぶやいた。「生きる」という面倒なことをする人間は、今やほとんどいない。

(了)

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あめしき@02文庫
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