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心の糸が切れたきっかけ

去年の12月下旬に夫との結婚生活が22年目を迎えた。
しかし、記念日がやってくる数週間前に、私の心の糸がぷつっと切れる出来事が起こったのだ。

夫は就寝時のイビキがひどい。出会った頃からイビキ持ちだ。21年間ずっとイビキ対策について訴えて来た。それも本人のプライドを傷つけない程度に、言葉遣いに気を遣ってだ。

イビキ対策のテープを鼻につけたらどうか?とか、就寝中対策用器具を着けたらどうか?とか、睡眠時無呼吸症候群かもしれないから検査をしたらどうか?とか、いろいろ対策をお願いした。

一方自分も神経質なところがあるから、耳栓をしたり、就寝前にアロマセラピーをしたり、メラトニンを服用したりといろいろできる限りの対策をした。

それでも彼の言い分は、病院に行って検査をするのも、手術をするのもお金がかかるということ。器具をつけるのも寝苦しいからやりたくない。だから何もしたくない。私が耳栓で寝れるようになればそれで済むということだった。

確かに耳栓で寝れたこともあった。でもほとんどの場合、結局眠れなくて別の部屋や居間のソファーで寝るというケースがほとんどだった。それでも本人は、申し訳なさそうにするわけでもない。彼の思考の中では、眠れないのは私の問題なのである。

冷静に考えれば理不尽な話なのに、自分を責める思考の癖がある私は、神経質な自分が悪く、リラックスできるようにもっと努力をすれば良いのだと思い込んでいた。

子供達が生まれた後は、彼らの世話のために一緒に寝ることが増えた。夜泣きで起こされるけれど、轟音なイビキがないだけマシだった。

末っ子娘が一人で眠れるようになった頃、一階の居間で寝ていた老犬が夜泣きをするようになった。認知症なのか、私がそばにいないと落ち着かないらしい。それから、彼女が亡くなるまで、彼女と共に夜を過ごすという介護生活が始まった。

そして去年の秋、その老犬は亡くなった。約3年間の介護中、夫は一度も介護を手伝うことはなかった。子供達が赤子時代と同様に、ほとんど夜の世話は私がやった。

夫婦が別の部屋で寝ていると言うことに、私は罪悪感をずっと抱えていた。このままではいけないとずっと思っていた。なにか対策をしないといけないと。。。世間で目にする普通の夫婦になりたいと思っていたから。

そこで耳栓のアップグレードや防音イヤホンなど試してみたのだ。それでも、彼が隣で寝ていることに緊張感を覚え、まったく眠れなかった。1週間も試したが、2、3時間しか寝れたのかわからない寝不足が続いた。

もう限界だった。だからある日、夫に対策をしてくれるようにお願いした。相手を傷つけないように、建設的に私が抱えてる問題を提起したつもりだった。

私はやれる対策全てをしたけど効果がないので、あなたの方でまだ対策をなにもしてないから、医者にアポを取りイビキの原因を調べてみてはどうか?と。

そしたら、すごい剣幕で怒りをぶつけられた。「こんなに僕は、君のためにやってるのに、なにもやってないとはどういうことか?僕が今まで君のためにやってきたことに君は感謝をしてない!」と。

あまりにも理不尽過ぎる言い分にあっけに取られた。そして、私も怒りをぶつけ言い返した。

意地になった夫は、寝室を私に明け渡すと申し出、本人は地下室にベッドを設置し、その後しばらくそこで過ごすことになる。

しかし、それも長く続かなかった。結局腰と背中の不調を訴え、私が代わりに地下室で寝ることになり、今もそれが続いてる。

この口論をきっかけに、私の中で保っていた細い糸が切れたのだ。いや、大きな音を立てて、防波堤が崩れたとも言えよう。

この21年間、今まで彼が望むような人生を一緒に送ってきた。
彼が一緒にいたいと言うから、隣町で決まってた就職も諦め結婚した。
彼が子供が欲しいと言うから、自分のキャリアが終わるという恐怖を持ちながらも、不妊治療を経て子供たちを授かった。
母親が常に家に居た方が子供のためだという意見に従い、完全復職を諦めた。

でもこの人は自分のことしか考えてない。自分が好まないことはしたくない。私の気持ちはどうでもいいのだ。

その後も、いろいろ細かいことで口論は続き、私はへとへとになっていた。それと同時に、過去の喧嘩パターンを振り返り、ネットで調べるうちに彼の言動は操作的でガスライティングであることに気づく。

いつも喧嘩するたびに、罪悪感に苛まれる自分に気づいてた。なぜ問題提起をする度に、否定され罪悪感を覚えるのか。。。それが操作的な相手の思う壺になっていたとは気づきもしなかった。

それだけではない。この数年、彼の態度が変わっていたのだ。コロナで100%自宅勤務になって以来、かつて毎日出勤時にしていた身支度をほとんどしなくなった。シャワーは毎日入らず、下着も洋服も同じものを毎日着て、髪はベトベトのボサボサで体臭もする。

気性も暗い雰囲気があり、なにか不満やネガティブなことを私が言うとすぐ怒る。会社主催の会食の不参加が続き、友人の誘いも断ることが増えていった。まさに完全に引きこもり状態なのだ。

そして、夕飯後にソファーの上で居眠りすることが増えていた。ひどい時は夕飯時に目が座って、会話にもならない。居眠りさえすることもあった。

そんなこんなを、ある時、元ソーシャルワーカーの友人に相談してみたのだ。

そこで彼女が、ふとこう話した。

旦那さん、鬱なんじゃない?
鬱もね、心臓疾患から来ること多いのよ。
旦那さん、血圧高い?

そういえば、夫はここ数年高血圧の薬を飲んでいた。その上、大腸の慢性疾患も患ってる。

とはいえ、たまにジョキングをしたり、子供達と活発的に活動してるし、食事の量も劇的に私より少ない。それよりなによりも肥満ではない。だから一般人の不摂生からくる高血圧でもなさそうだ。

そんな話をしたら、彼女がこう訊いてきた。

お酒はよく飲む?

そこで、私ははっとしたのだ。

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