ドレフォンはダート短距離用種牡馬を期待されて輸入されたのか?

この記事の賞味期限は短く、2021年6月28日に書かれたもので、データもその時点のものであるという前提を持った上でお読みください。

――やや後出しになるネタではあるが、社台スタリオンへのドレフォンの導入が決まったというニュースを耳にしてから、各所でウザいくらいに「芝中距離で走るドレフォンが出てくるはず」という話を筆者はしてきた。

というのも、わざわざダートの短距離の層を狙いに社台スタリオンでノーザンサイド主導でアメリカのチャンピオンスプリンターを買ってくるか、という疑問があった。ドレフォンがノーザン主導で導入されているというのは、2019年産今年の2歳の産駒数がノーザンFが40頭、社台Fが8頭、社台C白老Fが5頭、追分Fが3頭というデータから推測。補足として、来年ファーストクロップがデビューのマインドユアビスケッツの2020年産の産駒数は、社台Fが24頭、社台C白老Fが6頭、ノーザンFが4頭、追分Fが2頭という分布。(マインドユアビスケッツは現役時代から吉田照哉さんが権利を購入していたというのもあるが)
ダート短距離はJRAで1200~1400の重賞が3つ、根岸S、プロキオンS、カペラS、しか組まれていない(交流重賞含めたら結構な数あるが)。国内最高賞金もJBCスプリントの1着6000万、芝中長距離のJCの3億と比べると5倍もの差があり、そのあたりがダートでバリバリにハネたヘニーヒューズでも種付け料は500万(2021年)、サウスヴィグラスで最高200万(2018年)という天井の低さにもつながっている。なお、ドレフォンの種付け料は2018年から300万と、既に実績を出しているサウスヴィグラスより100万も高かった

そして導入から3年半、ドレフォン産駒のファーストクロップが中央でデビューしてから最初の東京&阪神開催でどういう結果が出ているのか……ではなく、たった3週で有効なサンプル数が集まるわけではないので、結果ではなくどういうレースに出てきているかに注目して見ていきたい。これまで、ドレフォン産駒の出走頭数は延べ11頭、芝:ダートでは10:1。今シーズンこれまで新馬戦が26鞍あって、ダートは3鞍。傾向としては「ダート短距離を狙って導入された」わりには芝に偏っている。もちろん、まずは芝で降ろしてみるかという思惑もあるかもしれないが、ダート短距離のチャンピオン種牡馬を狙っているのであれば、ノーザンがセレクトセール前のこの時期の2歳戦でダートの結果を出しにもっと多くの馬を送り出してきているはずだ。

ドレフォン産駒2021年6月の2歳新馬戦全出走成績

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ノーザン軍のドレフォン産駒の育成&出馬

ここからはノーザンF生産とレイクヴィラF生産の馬に限っての話としよう。実際にノーザン・レイクヴィラが出走させてきているレースは9レース中で芝の1600以上に延べ4頭出走という状況。明らかに「ダート短距離を狙った種牡馬ですよ」という売り方をしたいようには見えない。そして、結果が出なかったら7月上旬開催のセレクトセールでドレフォン産駒の落札額に大きく影響しかねない状況で、なんとダート1200、芝1400、そして芝1800で新馬勝ち馬を既に送り出しているという見事な結果。これがノーザンの育成パワー。芝もダートも、芝の中距離もイケますよというアピールができたことは大きいはず。

種明かしをしてしまうと、芝1600以上の新馬戦に出てきたノーザンF生産のドレフォン産駒の母父を見てみると、元々ダートの短距離を狙った導入なのではなく、サンデーサイレンス、クロフネ、キングカメハメハ(新馬勝ち)、ディープインパクト……単純にダート短距離だけを狙った配合がノーザンでポンポンできるわけでもなく、ドレフォンからクラシック狙いというのは当たり前な話ということになる。

競走成績からすると「ノーザンがダート短距離狙いの種牡馬を導入」という評価をされてしまうのはわかるんだけれど、いやぁ、そんなことはないと思うけどなぁというのが証明されつつあり、ドレフォン産駒から芝中距離のチャンピオン級が出てくる、というのが妄想でもネタでも冗談でも戯言でもなくなってしまいそうなのであるが、……ただ、少しさみしくもある。

ドレフォン導入の狙いとは?

先日の藤沢和雄師の記事にもありましたね。競馬にはスピードが大事、という話。

かつて、日本はやみくもに英ダービー馬を種牡馬として輸入していた時代があり、今も凱旋門賞信仰が捨てきれずにいる。ただ、将来の日本の競馬のためにも、若い人へ向けて、私からあらためて「競馬で大事なのはスピードだ」と伝えておきます。

社台スタリオンに鳴り物入りで導入されたここ最近の海外種牡馬、チチカステナンゴ、ワークフォース、ノヴェリストはお世辞にも成功したと言えない成績となっている。ハービンジャーは成功しつつあるが「アスコットの破壊王」と称される「キングジョージ」の11馬身差勝利は、やはりそのスピードを強く印象付ける。ノーザンFとしても、アメリカのチャンピオンスプリンターに輝いたドレフォンの「スピード」で、再び生産馬たちにブーストをかけたいのではないかと私は推測している。そして、藤沢師の話にはヴィンセント・オブライエン氏の言葉「競馬で大事なのはスピードだ」が出てきているが、現在のバリードイルを束ねるエイダン・オブライエン氏もよく「natural speed」という言葉を使うことで知られている。例えば↓の記事でもインタビュー中に。

"I suppose she is a filly with a lot of speed, so with any horse you're never sure until you see them do it. She's by Camelot, but she has a lot of natural speed.

ドレフォン導入の狙いは、長い目で見て、みーんな言ってる大切なスピードのブーストを生産馬にかけたいのではないか。決してダート短距離を狙ってノーザンが導入しているわけではないんじゃないのかなぁ

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