新種牡馬アメリカンペイトリオットをKitten's Joyと読む
新馬戦開幕週、6月6日に中京で芝1400mの新馬戦を勝ったブレスレスリー(牝2歳、藤岡厩舎)の父、新種牡馬のアメリカンペイトリオットが早くも話題だ。アメリカのG1を1つだけ勝っただけで、特に大物種牡馬候補という感じではなかったが、新種牡馬のJRA勝利第1号を初週に決めて見せた。アメリカンペイトリオットの勝ったG1もメーカーズ46マイルSと日本では馴染みも薄く、ダーレーのまたいつものダート短距離向きの……という馬ではどうやらなさそうだ。そもそも、勝ったメーカーズ46マイルSは芝のマイルG1である。
まずは血統から。アメリカンペイトリオットの父はWar Front。Danzigの直仔で、自身はアメリカでダート短距離のG1を1つ勝っただけだったが産駒が世界中で芝の8~10FのG1を勝ちまくったことで、初年度に1万ドルちょっとだった種付け料が今や15万ドル。War Front産駒の芝G1勝ち馬デクラレーションオブウォー(Declaration of War)も日本に輸入されて種牡馬入りしており、こちらは来年に日本で種付けして誕生した2歳馬がデビューする予定。デクラレーションオブウォーの持ち込み・外国産の産駒の中からはデュードヴァンが既にOP勝ちをしているので、こちらも日本適性は高そうだ。War Frontの産駒も、日本ではフォッサマグナが新馬勝ち→ダノンキングリーvsアドマイヤマーズの共同通信杯で2番人気4着という日本適性の高さを見せている(現在3勝クラス)
芝でG1馬を多数輩出するWar Frontの産駒でアメリカの芝マイルG1勝ち馬が日本で種牡馬入りする上で、その最大のセールスポイントについては合田直弘さんの言葉を紹介しよう。
「瞬発力」あるいは「切れ味」という言葉に代弁されるスピードこそが、日本で勝ち抜く上で極めて重要な形質なのだ。
(中略)
アメリカンペイトリオットとは、類い稀なスピードをタクティカルに使える馬であった。同馬が制した、2017年4月14日にケンタッキー州のキーンランド競馬場で行われた、G1メイカーズ46マイル(芝8f)の映像を、ぜひご覧いただきたい。
(中略)
ギアをトップに入れたのは残り1fを切ってからで、そこから疾風怒涛の末脚を繰り出し、相手馬たちを一刀両断にして差し切り勝ちを演じたのである。極上の切れ味を持ち、なおかつそれを、ここぞという局面で使える競走馬がアメリカンペイトリオットであった。
アメリカンペイトリオット 合田直弘(24 November 2017)
アメリカンペイトリオットのG1勝ちレース 公式動画
https://www.youtube.com/watch?v=nHeehJtapdo
「日本で勝ち抜く上で極めて重要な形質」「類い稀なスピードをタクティカルに使える」私はしばしばこのような概念を「加速性能の高さ」と表現する。馬群から抜け出したいタイミングで抜け出すことができ、レース中に一度はトップに立つことができる、日本の芝レースを語る上で欠かせない才能だ。そしてアメリカンペイトリオットの馬体をご覧いただこう。
尻のトップから脛までを通る「加速性能の高さ」を感じさせる強そうなラインと、ガンガン飛ばすだけではない慣性を維持するしなやかなフォームを可能にするバランスの取れた上体、そしてスッキリとして形の良い脚の形状。良い馬体してますねぇ。
また、赤本などで産駒写真を確認したが、写真が掲載されていたダーレー育成の3頭についてはどれもメリハリがありかつ雄大な馬体を有してバランスも良く、なるほどこれは推さずにはいられない種牡馬だ。
そして、本記事のタイトル「新種牡馬アメリカンペイトリオットをKitten's Joyと読む」である。日本における(活躍自体は日本に限らないが)北米芝種牡馬の現在の主力的存在といえばKitten's Joyであり、日本ではジャンダルム・ダッシングブレイズとマイル前後の活躍が印象的だ。(余談だが、POG本で見たジャンダルムは横見がバシッと決まって良い馬だったので5位くらいで獲得した)まだまだその活躍に肩を並べられるかどうかはわからないが、ポテンシャルのメルクマールとしてはKitten's Joyを意識しておきたい。その……Kitten's Joy直仔でエクリプスS、ドバイシーマクラシックなどを勝ったホークビル(Hawkbill)もダーレー・ジャパン・スタリオン・コンプレックスで供用中、しかも種付料100万円なんですってよ奥さん!(宣伝も忘れずに)
最後に、アメリカンペイトリオットの馬体をKitten's Joyと比べてみよう。毛色こそ違うものの、きれいな丸いラインの尻のトップから膝、脛への縦軸など、先程紹介したアメリカンペイトリオットと似ているものがあると思う。
御託を長々と並べたが、私がアメリカンペイトリオットをKitten's Joyと読んだのは、この比較があってのもの。ジャンダルムやダッシングブレイズのような活躍をする馬、いやもっと走る馬が出てきても、もう私は驚かない準備ができている。
オマケ:War Frontのスタリオンページ。なるほど、この丸尻+縦軸はWar Frontパパもなのね