競走馬の常歩時の後肢の曲がり方(1歳時)
キャロットクラブの過去の募集時カタログから3頭の馬をサンプルに、常歩時の後肢の曲がり方を見ていく。今回サンプルとして登場いただくのは、レイデオロ(2014年産・ダービー馬)、フラッシュノワール(2016年産・未勝利馬)、マメールロア(2016年産・未勝利馬)の3頭。競走馬の能力発揮には脚の形状以外にも様々な要素が複雑に絡み合っているため、本稿で比較する部分だけが競走成績の差となったというわけではないということはあらかじめことわっておく。
まず1枚目の画像は、各馬のカタログ写真の後肢の形状に補助線をつけたもの。赤線は尻の最後方ラインから垂直に引いてある。半透明の青い線はどれも同じ角度でヒザから飛節を結ぶように引いてある。「曲飛といえば飛節が鋭角に曲がっているイメージ」とは違い、どの馬も飛節までは似たようなバランスである。
飛節までの入りは同じように見えても、レイデオロは赤線より脚が左側、フラッシュノワールは右側、マメールロアは斜めで後踏肢勢になって立っている。
続いての画像は、動画から。右後脚が接地して踏み込みが始まるタイミングから、蹴り終わって離れるまでを時間等間隔(約1/10秒ごと)で投影している。
後肢の筋肉から一番力が伝わる、尻の真下に接地点が来るタイミングがレイデオロが一番遅く0.5秒後、未勝利馬2頭は0.4秒後と地面を後肢で捉える時間が短い。また、フラッシュノワールはわかりやすく脚が曲がったまま地面を蹴っている。野球で曲がったバットを使ってボールを打っても打球は速くならない、というのが想像しやすい通り、力点であるトモからの力を作用点である地面に伝える力は、支点である脚が曲がっていると減衰するということになる。マメールロアのほうはというと、飛節が曲がっていない代わりにやや球節から先、繋が寝てしまっている。
マメールロアの場合は右後脚の踏み込みの際に繋が寝ているため、腱での踏ん張りの力が推進力につながらないのではないか。
いかに効率良く馬の持っているエネルギーを推進力に変えるかという生産管理をレース中に行う必要があり、無理のない力のかかり方でそれができる後肢の肢勢を求めるとなると、やはりまずはダービー馬レイデオロの形と動きが手本になるだろう。
画像をもう1枚、右後脚が接地時に後ろに伸びきっている際の形を出した図。ピンクの補助線はすべて同じ幅と角度で引いてある。
脚の伸びだけであれば確かにマメールロアはよく伸びていて、「飛節が伸びきると良い」という観点からすると良い形に見えるものの、時間ごとに投影した上図を見ると、伸びきっているというよりは流れて必要以上に後ろまで脚が着いてしまっているとも考えられる。ミートポイントから遠い部分、野球の打撃で言えばフォロースルーの動作にそこまで推進力への影響が必要か?と考えるとそうではなく、大げさなフォロースルーが必要な歩様よりは、レイデオロを手本とすると、フォロースルーはなるべく小さく、次の完歩をすぐに始めてまた強い蹴りを地面に繰り出す、というほうが理にかなっている気がする。レイデオロの時間軸投影図を見ると分かる通り、脚が垂直になった0.3秒後には既に蹄が返って次の完歩に向かっている。形的なものか、運動神経的なものかはわからないが、少なくともレイデオロはそう歩いている。
レイデオロ、王者のカタログ写真は後肢が臀端をほぼ追い越さず、動画に映る常歩でも力点と作用点をつなぐ支点たる脚はまっすぐ伸びてミートポイントを捉え、地面へ推進力を伝えた後は大げさなフォロースルーを必要とせずすぐ次の動作へとつながっている、ということになるだろうか。
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