次男が進路を決めた三つの「ビジョン」とは〜進路を迷っている高校生のヒントになれば〜
高校生の息子さんを持つお友達から、進路を決めるにあたって、うちの次男の選択に至ったプロセスについて質問があったので、ここにまとめてみます。
進路について迷っている方の参考になれば。
次男は現在九州にある国際色豊な大学の4年生。もうすぐ卒業です。就職も決まっていて、春からはこちらも外国人従業員が多くいる大手企業で働きます。
そもそも彼は、幼稚園児の頃からサッカー一筋。サッカー以外に興味のあることはほぼなく、TVゲームもサッカーゲームくらいしかしているところを見たことがありません。
小さい頃は地元の小学校のサッカーチームに所属しながら、Jリーグ下部組織のサッカースクールに通っていました。小学校4年生から、クラブチームに所属を変えて、高校3年生まで、そのチームで明けても暮れてもサッカー漬けの日々を送っていました。
学校の勉強はほぼ一夜漬けで、高校生まで勉強している姿などほぼ見たことがありませんでした。
大学は高校の指定校推薦で、こちらも書類を出すだけで合格という、なんとも苦労知らずの大学受験でした。けれど、この国際系の大学を選んだことで、彼の勉強意欲に火がついて、これまでの生涯で初めての猛勉強ということを大学時代にしたようです。
親元離れての下宿生活だったので、実際に勉強している姿は、やはり見てはいないのですが、入学当時300点台だったTOEICの点数が、就活前の一昨年の夏には860点を取ったことや、大学内のプレゼンで最優秀賞を取ったり、就活での連勝を見る限り、相当の勉強をしたに違いありません。
今の大学への進路を決めた時に、彼の将来への道が開けたのだなと、側から見ていてあの瞬間のことを忘れません。
高校3年生の9月初め。二学期が始まったばかりで、明日は指定校推薦の希望を出す締め切り日という日の夜遅く、サッカーの練習から帰ってきた次男にこう尋ねました。
「結局、明日はどこの大学に希望出すの?」
「あー、S大」
サッカーから帰ってきて疲れているのか、ぶっきらぼうに答える息子。
「ふーん」と言って、晩ご飯を出そうかと思っていたところ、彼がおもむろに
「あ〜、でもな〜〜、S大に行ったら、サッカーも中途半端で試合にも出れずに、バイトしてただのチャラい大学生で終わりそうだな。。。。」
と、頭を抱え出しました。
「A大(九州の国際大学)にしよっかな〜。そしたら、4年間で、英語は話せるようになってるよな〜。」と言い始めました。
実は、A大は、息子が中学生の頃、私がその存在を知って、密かに彼にはぴったりの大学だからここに行けたらいいなと、漠然と思っていた大学でした。けれど、そんなことはお首にも出さず、私からは彼の進路について何も口出ししたことはありませんでした。
A大の名前を息子が口にして、内心しめしめと思っていた私。
そこで少しのやり取りをして、ものの数分で彼は進路先を変えて、A大への推薦希望理由を用紙に書き始めました。お腹を空かしていたでしょうが、何よりも先にそれをやり終えたかったようです。
そうして無事に書類提出だけで、彼の大学受験は終わりました。
冒頭のお友達から、A大への進路を決めたプロセスを聞かれて、改めて、息子になぜあの時、一瞬にしてA大にしようと思ったのか、聞いてみました。
一言、「ビジョンだね」という返事。
どうやら、そのビジョンなるものは、三つあるようです。
一つ目が、自分がプロのサッカー選手になっているビジョンが見えなかったこと。
ずっと同じクラブチームでサッカーをしてきた息子は、たくさんの先輩やチームメイトを見てきました。オリンピック代表選手候補になった人やプロになった人たちを身近に見ていて、自分はあのレベルに達するビジョンが見えなかったそうです。その時に、サッカーで身を立てるという進路が選択肢からなくなりました。
この一つ目のビジョンは、高校生になって、少しずつ現実味を帯びてきたゆっくりとしたスピードのものだったようです。
二つ目が、サッカーをやらずに過ごす自分の大学生のビジョンが、ただのチャラ男だったこと。
絶対にプロになるだろうと思っていた先輩がS大に進学したけれど、結局サッカーをやめて、輝きを失っていることを知って、あの先輩でそうなら、自分だったらなんの向上もない薄っぺらい人間になっていることが見えたそうです。
一瞬にして見えたペラペラの自分の未来の姿は、相当な気づきになったようです。先に書いたあの日の夜、瞬間的に降りてきたこのビジョンが、強烈に彼の心に危機感を与え、即決に至りました。
即決した後でじわじわと効いてきたのが、三つ目のビジョン。兄を通して見た大学というもの。
彼の兄、うちの長男は次男の三つ上で、この頃は大学3年生。長男はもともと本好きで、物事を深く考え、考察するのが得意。中学から音楽にハマって、ロックバンドでCDデビューもして、大学卒業までの10年間、音楽と共にいました。幼稚園児からサッカーに明け暮れていた次男とは対照的です。そんな長男が選んだ進路は、私立の文系では日本最難関と言われている大学の法学部でした。
全く趣味も価値観も違う兄弟は、普段はほとんど話もしないのですが、私の知らないところで、長男は次男にこう言い続けていたそうです。
「やりたいことがわからない、進みたい道がわからないなら、とにかくこいつはすごいなと思う人と友達になれる大学に行け」と。
「僕は今、大学ですごい人たちに囲まれてて、人生で一番楽しい」と。
そう言えば私にも、
「本当にすごい人は、無意味なマウント取りとかしないし、相手の良いところを引き出して、足りないところを気づかせて、サポートしようとする。僕は今、そういう友達に囲まれていて幸せだ。」と言っていました。
次男は、高校生までほとんど勉強らしい勉強をしたことがなかったので、長男の大学を目指すことなど1ミリも考えたことはありませんでしたが、この長男から聞いた大学というもののビジョンが、国際色豊かなA大とどうやらつながったようでした。
小さい頃からの夢を叶えている自分の姿(ビジョン)が見えなかったこと。
何の目的も持たずに何となく選んだ大学に入ったときの自分の姿(ビジョン)があまりにも薄っぺらく酷いものだったこと。
まだ見ぬ大学、大学生活というものの姿(ビジョン)を兄から見せられ、そこに希望を持ったこと。
この三つのビジョンが、彼の心を動かして将来に繋がる進路を決めたようです。
誰にでも応用が効くかどうかはわかりませんが、進路に迷っている高校生や、その親御さんたちのお役に立てれば嬉しいです。
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