
オムライスに愛の言葉を書く彼女
カップルの場合、彼女はオムライスにケチャップで「LOVE」と書き彼氏に愛を伝えます。
そして彼氏もそれに喜び、ありがとうラブチュッチュと言いながら食べるのです。
2人だけの世界の幸せな出来事。
しかしそれを他の人に見せつけようものならその瞬間に幸せは破綻することになるのです。
他人の私にそれを見せてきたのならばこう言うでしょう。
「オムライスには適切な量のケチャップを美しく盛ることこそが愛なのではないですか?と。
愛とは、
眠っている人の乱れた毛布を優しくかけ直してあげることのように、決して相手に気づかれては、起こしてしまうようではいけないのです。
密やかに相手の幸せを祈ること。それが愛なのです。
愛を具現化する手段を探してはなりません。
分かりましたか?」
彼氏は言う
『な、なんですかあなたいきなり失礼ですよ!私たちは確かに愛し合っている!!あなたの出る幕ではない!!それに、これはあなたへのオムライスなのですよ?』
そうして私は、2人が横で見つめるなかで、LOVEの字を崩さぬようにオムライスを食べていた。
指先のスプーンは細かく震えていた。
「な、なんというか、見られながら食事するというのは、は、恥ずかしいものですね」
場つなぎのためだけのセリフに2人は答えずまた静かになった。
ただ、今の私だからというのもあるのかもしれないが、そのときの2人は決して私を試すような、そんな目はしてはいなかった。
カップル共に私は顔見知りの関係で、その同棲先にお邪魔したときに出してもらったオムライスの時の目をしていたのだ。無言ではあったが。
そして食べ進め、特にEのところは密度が高くてしょっぱいのに、最後の一口までそれを感じさせずに2人の応対も無いと分かっていながらもおいひいねおいひいねと言って食べ終わった私はもう、立派に愛を裏切っていたのだった。