ゆーるゆるのゆる

　2024年9月12日

　自転車のライトが付かなくなった．面倒くさいけど，自転車屋さんに行った．そしたら，「チョット貸してみてください」とものの十秒で直った．ちょっとだけ歪んでいたらしい．ほーん．ついでに自転車の空気も入れてくれた．それは嬉しかった．空気入れはかなり面倒くさい部類に入る．

　まずしゅぽしゅぽ押すのが大変だし，入れる量に関してはタイヤに書いてある空気圧を見ろったって○○Paだからどうしろというのか，空気入れのメーターの読み方も何が何だか分からわけで，もうええいっと，勘で今まで入れてきた．

　調べりゃいいのだけど，そこまで興味も湧かないし，かといって，分からないままやることも，それはそれはストレスで，いつも後回しにしてベコベコになっても漕いで，しょっちゅうパンクしては，怒られるので親には黙って自転車屋へ持っていっていた高校時代．

　昨日は久しぶりにお休みで，エアコンと換気扇を掃除して，うっすら気になっていたよれよれの布団カバーを買い替えるため，近所のコーナンまで行った．コーナンの入り口にはなぜ，タコ焼きなどが売っているのだろうか．

　昼過ぎというのに，学生の集団がいた．男女6人ぐらい．「あ，プラ段買うの忘れてた」など話しているので，なるほど文化祭の買い出しかと気づく．「あれ，かずやどこいった？」「おい，かずや」と自分の本名を呼ばれたと思い，びっくりした，僕と同じかずやというやつがどこかに行ったらしい．ほえーと思いながら，布団カバー売り場へ．

　そうしたら，おもちゃコーナーに一人，じっとしゃがんで何かをこねくり回している学生を発見，こいつがたぶんかずやだなと思った．奇しくも僕も，100均などのおもちゃ売り場を一通り見る傾向があるので，似ているなと感じる．探してるぞ，早く行ってやれ．吸盤がいっぱいくっついたプラスチックボールなんか何に使うんだ．

　僕も布団カバーを30分ほど吟味して決定．藍とベージュの縞縞の模様．カジュアルすぎやしないかとも思ったが，僕の部屋はシンプルでそろえるには，漫画やら虫のフィギュアやらが多すぎるので，良い具合にマッチするだろう．

　帰りに知らない団地の間を自転車で通っていたら，鉄塔がきれいに見える公園に出た．空の色がなんか，太陽に顔があるタイプの絵に出てくる空の色，つまりは少しくすんだ水色だった．

　端っこに何個もザクロが実っていた．黄から赤への諧調がすごく綺麗で懐かしくて，しばらく眺めていた．背後で保育園の園児らしい一団がポストに手紙を入れていた．「おじいちゃんおばあちゃんに届きますように」とみんなで言っていた．

　大分遠くまで来てしまったな，ひとりぼっちで大人になって僕はやっていけるのかな，それにしても鉄塔も空も遠くの方へと消えていく．

　と，こんなことは寸分も思わず，実際にはザクロを持って帰ってもいいか，ネットでずっと調べていた．上の文はもし思っていたら，なんか格好良くないか！と思ったこと．

　持ち帰りはたぶんダメだろうなと思っていたが，案の定ダメで，よっこらせと，再び自転車を漕ぎ始める．

　ミステリー小説などで，よく被害者の頭部がザクロのように割れていたという例えを見るが，そんな粒粒が僕の頭にはあるのか不思議でならない．あの例えは的を得ているのだろうか．

　そんなことを考えながら，わざとがに股で自転車を漕いで，呑気な昭和の昼下がり風に住宅街を進む．軒下からにゅうっと口周りが黒い猫が顔を出して，自転車のカゴに入れた布団カバーは曲がるたびにガコンガコンと左へ右へ，気持ちは行き交う人々によお！っと声を掛ける寅さんのよう．

　そんな感じで休みが終わった．文章では充実しているように見えるけれど，換気扇とエアコン掃除でほぼ一日が終了，映画も小説も何も見れなかった．それでも誰かに吸って欲しいぐらい空気が綺麗で嬉しい．ビニール袋に詰めて，持っていこうか．