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お気に入りの漫画の数コマ

 2024年5月31日

 伊藤潤二の「富江」を読み返していた.富江は男を狂わせる美貌を持ち,富江を好きになった男は富江を殺したくなる.ただ,殺されると富江は増殖する.それを繰り返していくのだが,ある回がすごく好きだった.

 「ある集会」という回で,富江と富江のことが大好きなたくさんの男たちが出てくる.男たちはあの手この手で富江に貢ぐ.その中のこのコマが好きだった.

伊藤潤二傑作集「富江 下」|伊藤潤二 より


 富江が好きすぎるおじさん同士が,なんのひねりもなく抱き合って,もう明らかにおかしくなっている.直後の一コマでそんなおじさんたちに容赦なく「つまらない!!あんたたち死になさい!!」と一蹴する富江.このテンポ良い罵倒がすごく好きだった.


 他にも好きな漫画のコマが少しあるので,紹介する.


 「こちら葛飾区亀有公園前派出所」の14巻にある「わがよき友よ!?」という回にて.中川と麗子が両津を春日八郎のコンサートへ連れていく.両津は春日八郎の大ファンなので,めちゃくちゃ喜ぶ.中川と麗子が純粋に両津を喜ばせる結構素敵な回である.そんな中のこのコマ.

こちら葛飾区亀有公園前派出所14巻
「わがよき友よ!?」|秋本治 より


 コンサート終わり,両津は大興奮で会場を出る.興奮で春日八郎のまねをし始め,中川と麗子に見せる.夜の新宿の街中,ノリノリで歌い始める両津.この時の両津の目と腰の角度がすごく好き.この両津の姿がとても面白い.麗子の「あのままこの新宿においてにげましょうか?」も地味に面白さを加えている.


 「ブラック・ジャック」の第98話「犬のささやき」という回.主人公の男は大好きな彼女を亡くす.そこでブラック・ジャックに,生前録音した彼女の声を自分の飼っている犬に喋らせる手術をしてほしいと頼む.その時のこのコマ.

ブラック・ジャック(新書)9巻98話
「犬のささやき」|手塚治虫 より


 ブラック・ジャックの「おまえアホか!!」がそりゃそうすぎて,笑ってしまう.悲しくて仕方がないとはいえ、いくら何でも提案がぶっ飛びすぎだと思う.犬の身にもなれ.「そう呼ばれても仕方ないです」の顔もじわじわと腹立つ.

 ちなみに手術後,男は新たに恋人を作り,犬を邪魔物扱いし始める.この話は主人公が本当にどうしようもない奴で,終始お前さぁと思わせる.ある意味でギャグ回.しかし,犬からランダムで流れる彼女の声は意味の無い物であるはずなのに,読み解くと意味を持っていることが分かる.そんで,結末がすごく良い.個人的にはブラック・ジャックの話でかなり好きな部類に入る.


 本編とは関係なく,心に残るコマがあったら,すごく嬉しい.ただ,それは何回も読み直さないと,分からない.何回も読み直して,自分の無意識に引っかかっていたところが可視化される.見つけられて良かったなと思う.元気がない時に,こういうコマを見返して,一人でへっへっへと笑っている.




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