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【試写レポ】『正欲』試写会【29_2023】

ごきげんよう。雨宮はなです。
Twitter公式アカウント様による、「#映画正欲 読了キャンペーン」に当選し、試写会で鑑賞させていただきました。
ものすごく観たかった作品を一足先に観られること、そして、自分の読了コメントが認められたようで二重に嬉しい当選でした。
本当にありがとうございます!


作品について

この作品を観たあとでドアを閉ざすのかどうか、決めるのさえ迷う新しい価値観が「正欲」なんじゃなかろうか……と思いました。

映画『正欲』公式サイト

おそらく多くの人は稲垣吾郎さん演じる寺井啓喜の価値観や考え方がベースになっているはず。
彼が直面する危機や、新しい価値観・情報との接触によるストレスを映画で疑似体験しておくのは非常に意味のあることだと思いました。
クライマックスシーンで新垣結衣さん演じる夏月から投げかけられるセリフをゆっくり考えてみてください。

※ここから先はネタバレを含みますので、気にされる方は鑑賞されるまで読まないことをおすすめします。

ミドコロ1.上手な実写化

監督は岸善幸さん

映画『前科者』と同じ監督さんだと後から知りました。
社会的なテーマをエンタメに落とし込むさじ加減が非常に上手な人だという印象。

『前科者』も試写会で鑑賞した作品なのですが、当時のレポを読み返してみたら今回感じたことと同じことが書いてありました。
この監督さんの映画で感じる特徴のひとつなのかもしれません。

“情報の出し方が丁寧できれいで、設定にも演出にも下手な小細工をすることなく、考えさせることはあっても気持ちを必要以上に揺さぶるつくりをしていないことが理由でしょう。”

【試写】『前科者』最速試写会レポ【01_2022】

原作小説を読むことをおすすめする理由

ボリュームのある原作小説を、よくこんなに上手に映画版としてまとめあげたなぁと思います。
ただ、主役級キャラクターのうち3人はサブに回ってしまっているため、発言や思考が偏りすぎているように感じられるかもしれません(どうしても背景やそのシーンに至るまでの描写が抜けてしまう)。
ぜひ、原作小説を読むことをお勧めします。

ミドコロ2.「家」に注目

ベッドの位置

新垣結衣さん演じる夏月の部屋に違和感を覚えました。
その違和感はベッドの位置にあるのだと、途中で気づきました。
部屋のまんなかに置かれたベッドを私はみたことがありません。
横か頭の部分を壁につけて設置することがほとんどではないでしょうか?

私はこのベッドの置き方を「寄りかかれない環境」だと認識しました。
どこからも離れていて、自分一人で浮かんでいる島のような状態。
そんな風に見えたのです。

二つあるものと、一つでいいもの

夏月と佳道(演:磯村勇斗)が一緒に暮らす部屋も面白かったです。
それぞれの部屋、それぞれの冷蔵庫。
けれど、食卓は一つ。

これはとてもよい「多様性の状態だなあ」と思いました。

冷蔵庫の大きさもデザインも違う、中身はもちろん違う。
これって、そのまま夏月と佳道みたい。
食事の時間も内容もバラバラで、たまに一緒になったりおすそ分けがあったり。
相手との違いを認めることの理想像がそこに見えました。

稲垣吾郎さんが演じる寺井啓喜は検事としてまじめに働き、「普通」から踏み外さないことが重要だという価値観の持ち主。
そんな彼なので、結婚して子供をもうけ、マイホームで生活するという「普通」の暮らしをしているのですが、「あれっ?」と思ったシーンがありました。

それは、寺井が帰宅したシーン。
家の扉を開けた時に、その扉がなんだか妙に薄く見えたのです。
「家の扉って、あんなに薄いものだっけ?それでよく防犯できるなぁ」と。
セットがそう作られているわけではなく、ただ私が錯覚しただけだと思います。
ただ、「家の扉が薄く見える」ことが私には衝撃で重要でした。
これについては別記事を予定しています。

ミドコロ3.注目の俳優陣!

個人的ベスト俳優:東野絢香(神戸八重子役)さん

公式サイトよりお借りしました

今作が映画初出演だそうですが、全くそうは見えませんでした。
キャラクターが憑依したというよりはそのまま小説から抜け出てきたような存在感。
観察眼と再現力(演技力)では済ませない、何かがある演技でした。
良い部分が多すぎて紹介しきれないので、とにかく彼女については映画を観てください。

佐藤寛太(諸橋大也役)さん

公式サイトよりお借りしました

劇団EXILEの方だそうで、ダンスシーンに迫力と説得力があるのも納得。
ダンスができる俳優だからという選ばれ方でないのは、表情を見れば一目瞭然。
「興味のない相手をみる目」の表現が秀逸なんです。
自分のことを理解しよう、フォローしてあげなくちゃという優しさを化けの皮を遠慮なく引っぺがす、大也そのものでした。

宇野祥平(越川秀己:寺井の部下役)さん

公式サイトよりお借りしました

この方が一人だけで正面から写されるシーンがあります。
こちらもぜひ見逃さないでほしいシーンのひとつです。
視線だけで、こちらの緊張感を膨らませたうえに固めてしまうんです。
彼の感じている居心地の悪さや緊張は、私たちと同じものなのだとわかります。

さいごに

仲のいい人と観に行かない方がいいかもしれません。
もし仲のいい人と観に行くなら、「自分の言うことを否定しない人」を慎重に選んでください。
そして、あなたも「相手の言うことを否定しない」ように気を付けて。

できれば一人で観てかみしめたり、原作小説をぜひ楽しんでほしい『正欲』は11月10日(金)より上映開始!

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