【試写レポ】『私がやりました。』試写会【28_2023】
ごきげんよう。雨宮はなです。
PINTSCOPEトークイベント付き特別試写会に当選し、一足お先に鑑賞させていただきました。
ありがとうございます!
※ネタバレを含みますので、気にされる方は鑑賞されるまで読まないことをおすすめします。
作品について
誰が言うかが全てで、何を信じるかが重要だった時代。
でもそれって、現代も変わりないよねと思ったりして。
私たちがいかに「見たいように見ているか」を「見せたいように見せる」に再構築して全部を嗤おうとするオゾン節炸裂な作品に、私はやられました!
社会的なテーマがぶっこまれつつ、名前の付いた現代的な現象は層の浅い部分に過ぎないときました!
これぞまさしく、“オゾン”層!!
フェミニズムの危うい部分に対するアンチテーゼはあるものの、全否定するわけでは無い冷静さ。
賢いぶってたり、理解がある人ぶってるとオゾン監督に笑われることになりますよ。
とはいえ、そんなのを差し置いても面白く観られるのが、この作品を「エンターテイメント」作品だといえる由縁です。
やられ1.みせたい/みたいのせめぎ合い
この作品の肝であって、とにかくすごいところが「みせたい」と「みたい」のせめぎ合いでしょう。
マドレーヌが何度か殺人の動機を口にしますが、その変化にやられました!
判事には「自分を守るために」殺したと言い、
陪審員や傍聴席へは「婚約者に操を立てるために」殺したと言い、
若い記者に対しては「自尊心から」殺したと言い。
誰が何を言われたら自分がどう見えるかをよくわかったうえで、自分をどう見せたいかを考えて発言するのです。
普段あたりまえに行われていることだけど、改めて観るとめちゃくちゃ怖い。
他にも、裁判の様子を書き立てた新聞の表現にも注目です。
同じシーンを書いているのに「彼女の顔は蒼白だった」「好調していた」「あんな三流女流に~」と、マドレーヌへの印象で“みたいようにみる”を遠慮なくやってくれています。
やられ2.華麗なるステレオタイプのダンス
そもそもメインの女性3人がゴリッゴリのステレオタイプで構成されているのが面白い。
ポーリーン:ブルネット(栗色)/まじめ、保守的
マドレーヌ:ブロンド(金髪)/頭が悪く、お色気で成功を得る
オデット:ジンジャー(赤髪)/おしゃべり、個性的
見た目的にも非常にわかりやすいのですが、途中、「そうではない」と待ったがかかるシーンがあって「イメージと実際が合致してるとは限らない」ことが優しく提示されたのにやられました!
とはいえ、最近流行り出した価値観や考え方に影響を受けていると、ものすごくモヤモヤするかもしれません。
全体を通してザ・ステレオタイプなキャラクターによるショウステージともいえる映画だからです。
メインの3人の他に、お手本のようなキャラクターとしてボンボン・ボンクラ坊ちゃんのアンドレという男性が出てきます。
最初から最後まで完成したおバカちゃんなので、腹が立つよりもアホすぎて笑えてきます。
どんな失礼も、頼りなさも、自分に力があったら気にならなくなるのかもしれません。
やられ3.衣装とヘアメイクの舞台的な演出
もうね、出だしのマドレーヌの私服でやられました!
鞄と靴の色が赤っぽい茶色でそろっていて、シンプルで質素な服なのに目を引く美しさ。
「ああ、パリジェンヌだなぁ!」と感動してしまいました。
その後、たくさんの衣装が容易されそれを目で追うだけでも楽しいですが、衣装の色や細かい演出に気が付くとさらに面白いです!
「緑は舞台だと不吉な色なの」とマドレーヌが言った後で、緑のアイシャドウとドレスのオデットが出てきたときは噴き出しそうになりました。
西洋だと舞台に限らずヴィランの色ですし、何かしら誰かにとって「悪い」ことが起こっているシーンに使われているのかもしれません。
その3人が「足並みをそろえた」時の色はその反対。
色合いは違えど、ベースカラーが揃っていて美しい演出でした。
同じカラー(の衣装)を身にまとって舞台に立つ、「女はみな女優だ」とはよく言ったものです。
ちなみに、二番目に好きなのはオデットの破れた手袋。
試写会について
運営
開場にロビーが無いためか、時間前開場でした。
トークイベントについて
奥浜レイラさんと清田隆之さんによるトークイベントがありました。
もともとご友人だそうで、和やかに盛り上がってらっしゃいました。ジェンダー系に興味・関心の強いお二人のようで、あまり映画そのものへの言及ではなく「女性」を切り口に他作品との関連についてのお話でした。
ご自身の価値観や意見が先行しすぎて、映画そのものは浅く掬ったような印象でした。
さいごに
なんだかんだいいましたが、難しく考えずおフランスのブラックジョークってだけでじゅうぶん楽しめます!
当時のファッションがめちゃくちゃおしゃれでかわいいので眺めているだけでも楽しいですし、観返したくなる要素が盛りだくさん!
2回観るつもりで早めに行くことをおすすめします。
笑えるか、嗤われるかな『私がやりました。』は11月3日(金)より上映開始!
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