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響いた!ユーフォニアム~9年の軌跡~1期第10話
©武田綾乃・京都アニメーション
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10話は久美子が中学1年生のシーンから。上級生より上手いため、軋轢が生じてしまっていますね。今の北宇治も似たような状況になりつつある…
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実力勝負の世界なので、下級生が勝ってしまうこともある。その摂理にもやもやしているところに夏紀が登場。放課後、顔を貸してほしいとのこと。一体何をされるのだろうか。
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滝の指導にも熱が入る。魚眼風の構図いいですね。
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家にある毛布を持ってきてほしいと滝。強化合宿の寝床にするのでしょうか。
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葉月にお茶に誘われるが、夏紀がインターセプト。これは稀代のミッドフィールダーだぁ!
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久美子「笑顔がこわい~」
葉月「声でてる!」
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後輩を指導する香織を物憂げな顔で見つめる優子。麗奈からおつかれさまですと言われ、「うん、おつかれ」と返事をする。優子は本当にいい子なんですよね。麗奈を疎ましく思いながらも、悪い子を演じられない善性。奏と並んで、作中で株を上げるキャラの筆頭だと思います。
悪いと思いながらも香織の譜面を覗くと、そこには固い決意の文字が。また追い打ちをかけるように、麗奈についての風聞が聞こえてくる。これは波乱の予感が…
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そして放課後…
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夏紀「あ~あ!オーディション落ちてしまった~!」
久美子「ブーーーー!!」
なんて古典的なシーン笑
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ユーフォを始めて一年だし、オーディションだって受かるつもりはなかった。
やさしいですよね、夏紀。まぁ受かるつもりがあってもそう言っていたでしょうし。平凡を絵に描いた人間のような夏紀は、希美への憧れで吹部に入りました。明るく奔放な希美を見て、自分もそうなりたかったと卒業式では述懐しています。しかし夏紀が部に与えた影響は結果的に大きく、その意味で彼女は非凡な才能を持っていたと思うんですよね。久美子や奏のメンターであり、優子の理解者であるというのは、間違いなく物語の功労者ですよ。
いや、全員がなんらかの形で功労者なんですよね。その複雑な化学反応によってもたらされるものを楽しむのがユーフォなんだと思います。
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ま、練習したのは今の部の空気にアテられたっていうか。滝先生にのせられたっていうか。私ってなんかそういうのに弱くってさ。でも先生にはちゃんと見抜かれてたよ。練習してないところを吹いていって言われて、あとはボロボロ。だから黄前ちゃんはちゃんと実力で勝ち取ったんだよ。私はそれで納得してる。よかったって思ってるくらい。だから変な気使わないでよ。
きましたね「運命の流れ」。この曲がくるということは、です。
本当に強くて芯がある子ですよ。自分の不甲斐なさを全肯定しつつ、後輩を激励する。こんなことができる先輩そうはいませんから。夏紀がどれくらい自分の演奏に自信があったかはわかりませんし、そこに自己欺瞞とアリバイがどれくらいあるのかも、夏紀については正直計りかねるところがあります。でも平凡な自分の殻を打ち破ろうと頑張ってきたのは確かですし、結果が伴わなくても彼女なりに清算できるんでしょう。その強さが夏紀にはあるし、それが武器なんだと思います。このあたりの描写、ものすごく純文ぽくて難しいですよね。単にわかりやすい挫折や成功が描写されているんじゃないんです。このキャラクターの心情の機微、そして多感な思春期を舞台にお互いのクオリアが摩擦する様子、それこそがユーフォの醍醐味なんですよ。成功って?勝つって?負けって?それらは人によって捉え方が違うので、見解の一致をみません。青春群像劇の裏に、私たちはコスモを見ているんですよね。際限ない人間の営み、人生、社会の縮図がユーフォなのだと。
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久美子から譜面を渡してもらい、メッセージを書き込む夏紀。こんなん惚れてまうやろーー!!
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ありがとうね!黄前ちゃんのおかげで、すこしうまくなれた気がするよ!
号泣😭😭😭(n回目)
コンクールに出れるような、全国に出場できるような腕前じゃないけど、昨日の自分よりはうまくなれた。まずはそこからですよね…
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さて場面転換し、セミが鳴く公園でなにやら話をしている優子と香織。セミの鳴き声を聞くと某アニメがすぐ思い出されます…
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なにやらオーディションに不正があったというような内容。しかし香織はそんなことはない、これからみんなで頑張ろうと優子をなだめます。優子はなおも食い下がり、夢を諦めないでと香織へ叫ぶ。そんな優子の脳裏には、在りし日の情景が浮かんでいました。決着はついたし納得もしているという香織だが、表情にはどこか諦めきれない様子がうかがえるのでした。
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明くる日。集めた毛布は音を吸収するためのもので、実際のホールで演奏することを念頭にいれた練習法でした。しかしその時…
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先生は高坂麗奈さんと以前から知り合いだったというのは本当ですか?
優子が一閃を部内に走らせる。
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高坂と知り合いだったということを認めつつ、贔屓したようなことはない。それによって指導が変わることもないと滝。優子が「だったら!」と続けるが…
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だったらなんだっていうの?先生を侮辱するのは辞めてください。なぜ私が選ばれたのか、そんなのわかってるでしょう?香織先輩より私のほうが上手いからです!
このタメ口と敬語が混じってる喋り方が実にリアル笑 年上、目上の人との言い合いってこういう感じになりがちですよね。
それはさておき、ずいぶん火力の高いセリフです。彼女は正しい、しかし正しさだけで渡っていける世界ではないことを彼女はまだ知らないのでした。
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眉一つ動かないみぞれ。帰りに本屋寄ろうかな、みたいな感じでしょうか笑
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あんたねぇ!自惚れるのもいい加減にしなさいよ!香織先輩があんたにどれだけ気使ってたと思ってんのよ!それを!
はい、すごいシーンですね。まず山岡ゆりさんのCVが圧巻です。キャラの声を崩さずにここまで声を張り上げられるというのは、研鑽の賜物ですよね。
「思ってんのよ!」の所、「おも↑ってんのよ↓」じゃなく「おも↑ってんの↓よ↑」なのがとても芸が細かくてすばらしい。
そして作画ですね。クールものでバトルアニメじゃないし、しかも日常シーンなのでそこまで作画枚数は多くないです。それでもできることはあるということを観客にみせつける屈指の名作画じゃないでしょうか。髪をフワっとさせることで感情の激しさを表し、麗奈へジグザグに歩み寄りつつ香織が制止するシーンも挿し込み、瞳孔や口の開き方で怒りがあらわになっていますね。髪や歩き方の描写は現実的じゃないんですが、完全に物理的に統制された絵というのはとてもつまらないんですよね。なのでジブリなんかでも生物の動線は徹底的に優秀な動画班が管理するわけですが、少しの虚構をスパイスとして混ぜたりして表現の質を何倍も上げているんです。麗奈に歩みよるシーンは13~14枚ほどでしょうか、ここも中割りのバランスが絶妙です。近づくシーンは一気に飛び、足を踏み込む時は枚数が多いんですよね。今までも、そしてこれからも何度言うかわからないですが、京都アニメーションスタッフ陣の技巧には本当に感服いたします。
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夏紀「やめなよ!」
優子「うるさい!」
香織「やめてぇ!」
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香織「やめて…」
麗奈「ケチつけるなら、私よりうまくなってからにしてください。」
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滝「準備の手を止めないでください。練習を始めましょう。」
ふぅ、すごいシーンです。まず麗奈、それは言い過ぎ!…と思いながらも麗奈視点だと香織と優子が裏で結託してるように見えなくもないんですよね。優子にしたって、視聴者にはまだ優子と香織のバッググラウンドがそこまで提示されたわけじゃないので、優子がただのお邪魔虫に見えてしまい印象が悪いです。でもこの"事実"と"解釈"の違い、つまり観測者ごとにみえる世界が異なってしまい、軋轢を生んでしまう様というのもまたユーフォの味なんですよ(一体ユーフォは何味なんだ、という批判は受け付けます笑)。そもそも吹奏楽、オーケストラというのは多重奏ですからここらへんは意識的なダブルミーニングになっていると思うので、武田先生のストーリーライティング技術も光ってるところですね。
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うあああああああああ!
な、なんだ!?主目標をターゲットの抹殺に切り替えた暴走AIか!?笑
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よくに吹けもしないくせに何言ってんの?そう思わない!?
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麗奈「久美子!私間違ってるとおもう?」
久美子「…ううん、思わない」
麗奈「本当に?」
久美子「うん」
うーん、いいですね。三期で描かれる麗奈と久美子の軋轢の種となるようなシーンじゃないでしょうか。久美子は優子の振る舞いを良くないと思いつつ、かといって麗奈の傲慢な態度にも100%賛同してはいないわけです。麗奈も麗奈で、部員達への体面よりも久美子からの心象を損なっていないかどうかのほうが怖いんですよね。だからこそのこの問答だと思います。細かいですが、これも自己欺瞞ですね。
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滝と麗奈の父は知り合いで、母親から滝が北宇治で教鞭をとることを聞き出し、北宇治に来たという麗奈。さらに滝のことを異性として好きだと公言する。あっけにとられる久美子。
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素直な麗奈をかわいいという久美子と、照れる麗奈。まーなんでしょう、生徒も人間ですから、先生を好きになることもあるでしょう。非常に複雑ですが…
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久美子「ソロを譲る気は?」
麗奈「ない、ねじ伏せる。そのくらいできなきゃ特別にはなれない」
8話で触れていなかったのでここで再確認ですが、この特別になるというのは久美子と麗奈、視聴者の間できちんと合意形成がとれてない叙述トリックでもあるんです。つまり、麗奈の言う特別というのは(滝先生の)特別という割合が強く、久美子や視聴者から見ると奏者として卓越した技能を持つという意味に見えやすいと思うんです。それらはほぼ同じ意味なんですが、色恋なのか演奏技術なのか、その成分は見る人によって比率が違うんじゃないでしょうか。その辺の連中と同じ人生を歩みたくないという思いもあるでしょう。だからこそライバルが多い花形のトランペットを選び、その中で一番になるというのはとても彼女のアイデンティティ上意味があるものになるんですね。でも力があるところには必ず歪がうまれるのです。
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その時はまだわかっていなかったのかもしれない。強くあろうとすること、特別であろうとすることがどれだけ大変かということを。
で、この久美子のナレーションです。うーん、本当に演出が美しい。
麗奈はアナキン・スカイウォーカーですよね。天賦の才を持っていながら、愛する人のために暗黒面に染まる。強大な力は使わないことの方が難しいんです。卓越した演奏技術を持つがゆえに傲慢になる麗奈は、若く青いので部内に流れるフォースの量こそ増やせど、不安定で危ない方向に導いてしまいかねなくなっています。集団の力というのは単純な足し算ではないことがよくわかりますよね。麗奈は実力はあるがカリスマがなく、香織はカリスマはあるが実力がない、あすかは両方持っているが本人にやる気がない(というかどこを視ているのか分からない)。北宇治のパワーバランスを見つめてみるととてもおもしろいですよね。じゃあ久美子は、一体どうなのか。それは三期で結実するのでもうすこしお待ちを。
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Bパートへ。麗奈をソロにするためのオーディションだったという風説が流布されはじめます。
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部内の空気に無言を貫く滝。ミルクコーヒーうまそう。沈黙は金というのは、概ねその通りです。
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葉月「みどりはソロ譲れっていうの?」
みどり「ここまで部内の空気が悪くなるならそれもアリかなって…」
麗奈には来年も再来年もあるが、香織は今年だけ。でも香織がソロを担当することで全国はおろか関西も逃したら?いやでもソロが全体の評価にそこまで影響を与えるか?考えたらキリがないです。1,2年の環境に恵まれなかったのは、香織にとっては”運”です。であれば香織に対して「あなたには1,2年があったでしょ」とも言いづらい。みんなが同じ方向を向いている今のいい環境でソロをやりたい、そう思うのは悪いことなのだろうか。誰もはっきりと答えがでないまま時間だけ過ぎていきます。
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二者面談。進路は決まってないという久美子に対し、「じゃあ勉強はしっかりやっておくんだな、特に数学。そして部活は余計なことは考えず、コンクールに向けて音楽を楽しめ、以上だ。」
うん、結局それだ!笑
いや、美知恵はユーフォでいう神ポジションなんです。俯瞰で盤外にいるキャラクター、傍観者、サポーターです。大体のことは人生で経験し終わったからこそのアドバイスですよね。まぁまだ15かそこらの少年少女にはパッとしないかもしれませんが。久美子も「え?」としかリアクションができない。美知恵は滝の精神の拠り所でもありますよね。音楽についてはからっきしだけど、人生のアドバイスは一級品なわけです。
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音楽室へ場面転換。暑いということで毛布を片付けていた部員を一喝する滝。珍しく感情をあらわにするあたり、少し心に余裕がなくなってきているのがわかります。
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夏紀「このまままた銅をとっちゃったら、私と加藤がオーディションを落ちた意味ないんですけど~!」
空気の悪い部への不満が溢れ始めます。夏紀おもろ笑
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あすかになんとかしてもらおうと、一同は久美子をあすかへの交渉役を頼み込む。
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あすかを探しているとソロパートを練習している香織を発見する。やはり、まだ諦めきれない様子ですね。
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あすか「み~たなっ」
これは冷たい!!笑
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さすが黄前ちゃんだねぇ、いいとこ嗅ぎつける
それはあなたもでしょう、あすか。なんだかんだで香織の行く末が気になっているんですね。
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納得したいんだろうね、自分に。
この一言につきますよね。結局最後は自分の中の落とし所というわけです。麗奈に負けてもいいけど、自分がたどり着ける最高の自分で負けたい。
言い訳するのは簡単だし一瞬心は安らぐ。でもそれは後から毒のように自分を苦しめるんです。だから正面切って挑みたいんですよね。
久美子は誰がソロに相応しいかあすかに訊くがはぐらかされる。なおも訊き出そうとすると…
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正直いって、心のそこからどうでもいいよ。誰がソロとかそんなくだらないこと。
正直この境地に至れたら最強です。ここはあがた祭でのセリフと思想がリンクしていて、どうあれ自分が関与できない部分は全部運だし、誰がソロを吹くかという一点だけが全国大会にいけるかどうかや、その結果について決定できるわけないと俯瞰してるわけです。部内の空気、麗奈と香織の演奏技術の差、審査官の気分、これから練習する中でどれだけ上達するか、あまりにも"運命"を決定づける項目は多いんですよね。あまり勉強しなかったのにいい点をとったり、その逆も然りで、誰しも思った結果にならない経験ってあるわけですよ。麗奈がソロを担当して関西にすらいけない可能性、香織が担当することで全国に行ける可能性、それらは全部紙一重だということです。
ここまでは事実ベースの無機質な部分です。
あすかの精神面の話をすると、本当にどうでもいいんですよ。つまり大会の結果そのものはあすかの幸福度に寄与せず、あくまで両親のあれこれと自己実現だけが懸案だってことですよね。で、友だちとはいえ香織が吹こうがはたまた麗奈が吹こうが大局に影響はない、だからどうでもいい。もっというと麗奈には絶対勝てないんだからあとはあんた(香織)の妥協点の問題だよ、ということです。百戦錬磨の軍団長みたいな見切りのはやさです。
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じゃあねぇ~!と去るあすか。
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あすかの場所を訊かれ、戻ったんじゃないかと久美子。晴香は香織のトランペットの音がする方へ歩みを進める。そこには香織を激励するあすかの姿が。そして「こりゃひとりでやるしかねぇさ、晴香」と自分に喝を入れました。当然部内のいざこざのことですが、今の懸案は香織と優子たち(噂に踊らされてる連中)と麗奈の問題ですよね。香織にはあすかがいるけど、あすかはコンクールのための助言は誰に対してもせずにあくまで香織に寄り添うだけ。副部長がそうなら、実質自分が孤軍奮闘するしかないわけです。
にしても晴香は本当に強いですよね。強いというか、ちゃんとストレスを吐き出しながら戦えるので器用だなぁと。久美子同様に部長の器だと思いますね。
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美知枝「そろそろコンクールですね。」
滝「はい…」
美知枝「音楽というのはいいですね。嘘をつけない。いい音はいいと言わざるを得ない。お父様もそう言ってらしたと記憶しています。では…」
隠れた名シーン、個人的にとても好きなシーンです。美知枝は滝の父が顧問だった頃に本物の音楽に触れていて、その受け売りが口をついて出たんです。あとここの美知枝の喋り方がとても柔和で好きです。演者の技巧がここでもまた光っています。滝は滝でまだ未熟なので、部員たちに対する振る舞いについて苦慮している。こうして大人達の悩みや思い、葛藤を描いているのもまたユーフォの良いところですよね。そしてハッとする滝。そうです、全ユーフォ民を歓喜と悲嘆の回廊に誘うあのシステムが考案された瞬間なのです。
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みんなに話があります。最近先生について、根も葉もない噂をあちこちで聞きます。そのせいで集中力が切れてる。コンクール前なのに、このままじゃ金はおろか銀だってあやしいと私は思ってます。一部の生徒と知り合いだったからといって、オーディションに不正があったことにはなりません。それでも不満があるなら裏でこそこそ話さず、ここで手を上げてください。私が先生に伝えます。
晴香~😭😭😭
もう散々語ったので冗長になってしまいますが、本当に彼女は素晴らしいキャラクターですよ。部の統率を執るために火中の栗を拾い、少しでもヘイトを分散させようとするさま。あすかといい、香織といい、晴香といい、この学年は精鋭揃いですよね。彼女たちの姿があったからこそ、久美子達の代は大きく羽ばたつことができて、また後進にその姿を伝承していくことができたんだと思います。間違いなく全国金をとれた要因の源流は、晴香や香織達が必死に部を繋ぎ止めてきたその努力にありますよね。う~、武田先生のあの言葉を言いたいですが、まだ三期までとっておきます笑
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今日はまた、ずいぶん静かですね。
滝がやってくる。また何をやってるんですか、と怒るかと思えば穏やかな表情を浮かべています。美知枝によって悪いものが取り除かれたようです。
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希望者には再オーディションを行いたいと考えています。前回のオーディションの結果に不満があり、もう一度やり直してほしい人はここで挙手してください。来週全員の前で演奏し、全員の挙手によって合格を決定します。全員で聴いて決定する。これなら異論はないでしょう、いいですね。
挿入される"重なる心"と、滝の突然の提案。リアタイ時、口がポカーンと開いたのを覚えています。ともすれば指導する立場を放棄しているとも捉えられかねない危険な提案です。なにせ部員たちには演奏をジャッジする能力は皆無です。まして自分の担当ではない楽器を単色で聴いても、なにがなにやらでしょう。であるからこそ、こと麗奈と香織の演奏については"聴けばいい方が分かる"というメッセージでもあるんです。さらにオーディションというやや緊張する状況でも吹けるかどうか、そのメンタリティのテストでもある。この時点で滝は結果をわかっていて、目的のために香織を公的に切る…というと残酷ですが、全国という景色を見せるための方策を提案したんですね。もっというと、香織と麗奈の音の違いがわからないようじゃ全国には行けないというメッセージもあるように感じます。
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では、訊きます。再オーディションを希望する人。
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ソロパートのオーディション、もう一度やらせてください。
香織ーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!(´;ω;`)
いやぁ、もうね。今まで触れた内容の振り返りになってしまうんですが。
麗奈に勝てないことは誰よりも気づいてるんですよ香織は。それは再オーディションをしても覆らないので、麗奈に勝つためとか一矢報いる挑戦ではないんです。それよりも彼女の心の深奥にあるのはあすかのことなんですよね。詳しくは次回、100万字くらいかけて触れたいと思います笑
それはそれとして、もちろん他にもあると思います。トランペットが好きとか、バランサーとして2年費やしたから最後は奏者として羽ばたいてみたいとか。つまりトルストイやシェイクスピア、ヘミングウェイといった大文豪が扱うような「葛藤」「自己実現」「夢の儚さ」「個人と集団の対立」といった普遍的な主題だからこそ胸を打つんですよね。そこにあすかへの秘めた思いというスパイスを武田先生は加えることで、より現代的かつ作家性を感じられる作品に昇華したんじゃないでしょうか。
…だめだ、止まらないので辞めます笑 次は本当に覚悟してくださいね!笑
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滝「わかりました。では、今ソロパートに決定している高坂さんと二人、どちらがソロに相応しいか再オーディションを行います。」
まずあすかの不敵な笑みですよね。「わたしに固執するなら、それくらいの威勢を見せなきゃ困るよ」といった印象を受けます。ここ、彼女たちの関係を感じさせる印象的なシーンなんですよ。普通死地へ赴く戦友を笑って送り出そうとするって違和感がありまからね。他のみんなは一様に不安そうな表情です。その中であすかだけが笑っている。敗北することによって香織がどんな心境になるかとか、部内の空気とかそういった普通の感情の一個上のレイヤーにいることがはっきりわかるんですよね。
優子はもうまっすぐで、これも非常にずるい。制作陣が視聴者にしかけている、優子の印象操作は実に巧妙です。優子を「なんだこいつ」と思うのは当然優子が香織と去年どのように過ごしたかを、アニメのみの視聴者にはいまいち把握しきれていないからです。30秒もあれば優子の印象を変えることは容易ですけど、あえてやってないんですよね。いやまぁ、それを加味しても少々度が過ぎる振る舞いをしてはいますが笑 それでも誓いのフィナーレで大きく株を上げたキャラでしょう。ヘイト集めとか、うざキャラとか、そういうドラマツルギーとして無理やり設定された感を感じさせないのがまた武田先生の技巧であり、何十人も登場する群像劇で彼女が他人に与える影響もまた、ユーフォの味わいを何層も深めているんですよ。
麗奈は特にやることは変わらない、いつも通り吹いてそれで終わりといった感じとともに、すこし優子や部員への怒りを感じますね。全国を目指しているのになんて低次元な部員がいるんだということへの不満が滲んでいます。
響けユーフォニアム(楽曲)のメロディが心地よく、そして不安を煽りながら波乱の10話終了です。
編集後記
ということで10話でした。みなさん、あけましておめでとうございます。
新年一発目から重めの回でした。8時間くらいかかったかな?でも筆(キーボード?笑)がのってスラスラ執筆できましたね。
ついに筆者的名シーンの三本指に入るオーディション回の序章です。ユーフォが稀代の名作に駆け上がるシーンについて、確か1話か2話で触れましたが、そのうちの一つが次の11話です。当然その前日譚たる10話も相当の密度で、ユーフォを観終わるまでは絶対に生きなければと思わされるエピソードです。とにかくこの香織という人物は、非常に文学・哲学的なキャラなんですよね。実際の世界中の名作の中であれば、間違いなく主役級です。実際、もうユーフォを"食って"るじゃないですか。リズ鳥ではみぞれ達がフォーカスされ久美子たちは影になりましたが、本編でこの印象と影響力はつまりそういうことなんですよね。香織と久美子はとても似ていて、ダブルヒロイン的な要素を持ってると思います。各学年に主人公がいるような演出になっているんですかね。もう~筆者は当時、香織にすっかり心が奪われてしまいました。
さて、次はいよいよ伝説の回です。個人的には三期12話に匹敵します。心して挑みたいと思います!では!