第八夜 『プロフェッショナル』
今宵はあるお客様と彼の物語をお話ししよう。
アメリは基本的に集客のほとんどをセミナーにしている。
理由はアメリはFPを資格業として捉えているからである。
米国では富裕層は3種の専門家をかかりつけとして抱えることがステータスとされているという。
先ずは『医師』。健康と身体のメンテナンスをお願いするのである。メンタルケアなんていうのも近年では主流になりつつある。
次に『弁護士』。訴訟大国と言われるアメリカでは自身を守ってくれる優秀な弁護士を持つことは、健康同様重要なのである。
そして、最後が『ファイナンシャルプランナー』、つまりFPである。金融資産を守ることの重要性を、経済大国アメリカでは当たり前に行なっている。
そんな中で我々はFPを生業としようとしているのである。
今でこそFPという言葉はなんとなくお金に詳しい人というイメージがあるものの、実は日本で認知されたのは最近なのである。
さて話がいささか広がりすぎたのでここで本題に戻そう。
そう。我々の生業はFPなのである。
先日、セミナーで外資系大手企業で年収5000万円ほどの方の申し込みがあった。
その顧客対応は弊社のCFPである彼が行なった。彼曰く、顧客の相談内容はこうだったという。
「節税目的の為に今年に入って中から古区分マンションを11戸(2億7000万円)購入した。今後、このまま買えるだけ買増しをした方が良いか。それとも別の方法を取るべきか」
彼はFPとして資産形成、不動産投資それぞれの概要を説明しながらそのお客様(仮にFとしよう。敬称も略。)と考え方の齟齬がないかを確認していった。
あらかたFの資産形成への考え方を聞いた上で彼はこう言った。
「直近で考えるのであれば、節税の面も考え、耐用年数が短期間で償却できる木造アパートがいいでしょう。5年後にはその物件から得ることのできる資産で新たな選択肢も選べるようになります。」
そのスキームと内容を聞き、Fは静かに物件紹介の依頼をした。自身の求めていたものを見つけたと言わんばかりの表情であった。
そして、比較を希望されていたので同じスキームを行なっている会社を全部で三社お伝えし、そのうち1社で我々の提携先であるT社様の取締役にお繋ぎをした。
数日が経ち、同スキームを扱っている会社との面談も済ませ、FはT社よりも別の会社の方が明らかに良いと言うようになった。
彼は思うことがあったものの、FPとして中立のいることを貫いた。
結果として、Fは中古アパートを別会社からの1億円ほどで購入した。
「不動産会社は利益をコントロールしているから、適正価格をしっかりと見極めないといけない」
これはFの口癖であった。
彼はそれに対し「不動産会社も会社運営費が掛かるので、利益をいただくことは当然ですよ。むしろ、その会社が利益を得て運営を継続させることが買主様にとっても付加価値になるのです」と伝えた。
「適正価格で購入したいなら売主物件を仲介で購入する事をお勧めします」
最後の一言の提案は間に合わず、Fは他社で契約を済ませた。
自社の紹介先で購入に至らなかった原因を探れば幾つでもあげることができるのかもしれない。
話が噛み合っていなかったのではないか。物件の細かい部分のニーズをフォローしきれなかったのではないか。しかし、それは不動産会社の理論である。
結果、Fは節税目的のアパートを購入したのである。これは彼が最初に行なったアドバイスがFにとって新たな選択肢を与え、行動に移させたということだ。
アメリはあくまでFP業を生業とする。この目的は十分達成できただろうと私は彼と笑いながら語らった。
これを甘い会社だなと思うのかどうかは考え方が分かれるところであろう。私自身、甘いんじゃないかと思わないかと言われると今そこまで自信が持てないのも事実である。
しかし、私と彼はそんな体制を変えていきたくて会社を設立したのである。これを成功と言えないのであれば、それは自分たちの首をいずれ絞めることになると捉え、そんな会社を存続させよう。周囲の反応は関係ない。
これが我々のスタイルである。
物語の続きはまた次の夜に…
良い夢を。