第二百九十八夜 『BUNGO』
「日々のルーティンのなかで、2つを強く意識しております。」
彼はおおよそ朝の5時頃から活動を始める。
私も朝が苦手な方ではないが、彼のルーティンはこの時期だと、空が白み始めるかどうかという時間だ。
「1つ目はその日のタスクをシンプルにまとめること。そして、2つ目はそれらを含め仕事の大半を朝の7時半までに完了すること。この二つです。」
「この2点を徹底していくと、社内メンバー、取引先、そして何よりお客様からの協力が得やすくなり、圧倒的に成果が上がり、周囲からも感謝されます。」
「このルーティンが毎日をスムーズにこなすコツなんです。」
この話を聞いて、私は日本最大手のリテール会社の創業社長を思い出す。
早朝に出社し、過密なスケジュールで次から次へと仕事をこなし、午後4時には帰り、自宅で奥様の作る夕食を一緒に摂るのだという。
これを知って彼が実践しているのか、それとも、知らずにたまたま行き着いた成功者のルーティンなのか。
それは聞きはしなかった。
そんなことは細事であるからである。
「今夜は夕方18時以降も打ち合わせがあります。このルーティンをこなした私は、きっとそのお客様にも感謝いただけるサービスを提供する準備ができています。」
「お仕事の後半戦も頑張ります。」
この報告は届いたのは9時から30分ほど過ぎた頃であった。
一般の会社員であれば、4時間働いたので折り返しである。
しかし、本日の彼は夕方の打ち合わせも相まって、長時間労働になってしまうようだ。
彼と長く付き合っている中で、驚くべきことは、年々、このルーティンも変化が見られるということだ。
基本的に早起きであることは変わらない。
しかし、彼の最強のルーティンはこの先も変化をし続けながら、世の中に適応していくのであろう。
自身のルーティンの強度と継続も見直していく必要がある。
身近に別のルーティンを実践している人間がいるということは、運が良いことである。
物語の続きはまた次の夜に…良い夢を。