第百九十五夜 『必殺仕事人』
「Iさんに依頼した企画が年明けから実に税引き利益で⚪万円を超えました。」
昨年、彼の企画をもとに業務委託社員のIさんに依頼したセミナー企画は半年を経て、ようやく大きな収益化に成功したことは以前も触れた。
そして、今その企画が無事、安定して案件を生み出すようになるほどにまで成長した。
第2の矢もすでに放っており、来月の頭に収益化につながるかどうかというところである。
またS企画の第3の矢も準備中である。
「もう一つ報告があります。」
「報告ですか。」
「はい。Iさんにまた私の企画を具体化してもらおうと思います。」
彼のこういう点がとても頼りがいのある面であり、さらに言えば大抵の彼の同世代からは出てこない発想なのだろうと感心する。
軌道に乗り始めた企画が出たら、それをもとに再投資を行う。
これは企業にとって一番大きな福利となり得る。
「企画を楽しみにしています。」
第一弾こそ、企画段階で口出しをしたものの、今回は一度固まるのを待ちやって見てもらうようにしよう。そう自分の中で方針を固める。
彼は実に楽しそうである。
40を超えてここまで新企画の持ち込みにワクワクできること、本人はそれ以外の彼自身の能力を評価しているものの、私はそれこそが彼の魅力であり、アンチエイジングの秘訣だとすら思っている。
Iさんと彼の企画は約3億ほどの売り上げ規模にのぼる。
もちろん不動産の売主ではないので、その点は純粋な売上ではないものの、半年のその企画のみでも3億円を新設の会社で挙げられるスキームがどれほどあるだろうか。
もちろん、株式会社アメリはそれに対して適切な対価しかもらっていない。
適切な対価とは。
仲介手数料である。
売主として利益を大きくのせて販売することも可能であるがそれはお客様を疲弊させ、再現性を伴わないと我々は考えている。
逆に基本的に割引もしない。
それが正当な対価であるからだ。
3億ほどの売上から会社利益は10%を超えていない。
不動産の仲介手数料の法定料率は3%であり、両手と言われる仲介でも6%なので当たり前と言えば当たり前なのである。
我々はお客様に将来の不安を解消するサービスを提供している。
それは長期的に見て10億の資産を狙う人がいれば、それを実現するために資産を守ること。
FPである我々は目先の利益ではなく、お客様の長期的な資産形成と会社の恒久的な成長を両輪としていくことを目指さねばならない。
短期的な利益を狙うことはその本筋から外れていく。
だからこそ、株式会社アメリで長期のライフプランニングを受けた上で資産形成を行うことに価値が生まれる。
スポットで言えば、我々より数字上良い物件を持ってこれる業者様はいくらでもある。
そこを驕るほどアメリは現実が見えないわけではない。
しかし、長期で見た際にアメリが行ったプランニングは一機貫通した軸をもとに物件を選んでいく。
結果、ワンストップなサービスに加え、営業マンに都度今の状況を説明したり、書類を用意したりという煩瑣な手続きを軽減することもできるのである。
今回、彼が企画する新規セミナーに関して言えば、大前提がわかっているから私は口を出さないのである。
それはより多くの人にアメリのライフプランニングの良さを伝えるための施策か、ないしは、新しいお客様へのサービスの仮説になるからである。
そういう意味では私自身、新企画の成り立ちを楽しみにしている。
加えて、私自身の新企画も進めていくだけである。
そして、彼も私の新企画に大きく口を出してこないのは先に述べた理由があるからであろう。
別々のことをやっていてもF Pとしてお客様への接し方はお互い信頼しているのである。
物語の続きはまた次の夜に…良い夢を。
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