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第二百六十一夜 『武士の献立』
「先日、気がついたらUber eatsで家系ラーメンを大盛り、肉増し増しを2杯注文していました。」
「久しぶりに聞きましたよ。その暴食報告。お酒でも飲んでたんですか。」
「まぁそうなんですが。結構、酔っていたのですが、なぜか妻の機嫌は上々でした。」
酔って帰った亭主が酔っ払って、食べもしないラーメンを頼んだとなれば怒られるのが普通なのであろうか。私の家庭も怒られない気がする。
ただ状況次第では妻が不機嫌になるパターンもあるのだろう。あらかじめ食事を準備していた時なのである。しかし、今回はそういったわけではないようだ。
「ご機嫌なのは良いことですね。誰かと飲んでいたんですか。」
「いえ、外で飲んでいたのではなく、自宅です。」
得心がいった。彼の奥様からすれば、いや敢えてここは主語を大きく、大袈裟に、大風呂敷を広げて、誇張していこう。日本国民のほとんどの奥様からすれば、よく外で飲んで酔っ払って帰ってくる旦那が自宅で飲んでくれる時点で安心なのである。
不貞を勘ぐるとかそんなくだらない理由ではない。
浪費も今回に至っては無駄に2杯もラーメンを出前するという愚行が起きたので理由ではない。
何よりも、外で酔っ払って事故、事件に巻き込まれていないということが1番の理由なのだろう。
その昔、私は達は彼の自宅までよくタクシーに同伴したものである。当時は独り身だった彼も、今日に至っては、家に待つべき人がおり、守るべき家族がいるのである。
新しい命が宿っている奥様からすれば、それを共に支え育んでいくパートナーの安否は先に述べたくだらない理由なんかよりも重要なことであろう。
「なので、今日は余ったラーメンを責任もって食べようと思っていたのですが、うまく妻が作り直してくれたそうです。」
「やりくり上手ですね。」
「妻もFPですから。」
彼の浪費をきちんと消費に昇華させるあたり、心強いパートナーである。
彼もどこか誇らしげである。
我が家は前日の鍋で残ったスープで麺を入れて家族で食べる予定だ。
もちろん、調理は私である。
物語の続きはまた次の夜に…良い夢を。