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迷宮の涙

太古の昔から、伝説の迷宮「ラクリマの迷宮」が世界の果てに存在していた。その迷宮には、どんな願いでも叶うという「涙の宝玉」が隠されていると言われていた。しかし、挑戦者は皆、迷宮の奥で行方不明になり、宝玉を手に入れた者はいなかった。

若き冒険者カイルは、行方不明になった父を探すため、この迷宮に挑む決意をした。父は10年前、この迷宮に挑み、帰らぬ人となったのだ。カイルは父の残した地図と僅かな情報を頼りに、旅を始めた。

迷宮の入り口にたどり着いたカイルは、冷たい風が吹き抜ける石の階段を降り始めた。光の届かない闇の中、彼の心臓は激しく脈打ち、手にしたランプの光が頼りだった。迷宮の中には数々の罠と、謎めいた仕掛けが彼を待ち受けていた。だが、カイルは決して諦めなかった。父と同じ過ちを繰り返さないよう、慎重に一歩一歩進んだ。

やがて、彼は巨大な扉の前にたどり着いた。扉には「真実の涙を持つ者のみ、この先へ進むことが許される」という古代の文字が刻まれていた。カイルは迷宮の中で出会った人々との出来事を思い出し、胸に込み上げる感情を感じた。彼は涙を流し、その涙が扉に触れると、扉は静かに開いた。

扉の向こうには、宝玉が輝く部屋が広がっていた。しかし、そこには父の姿もあった。父は迷宮の守護者となり、ここで永遠に囚われていたのだ。カイルは驚愕しつつも、父を救う方法を探す決意を新たにした。

「涙の宝玉」が願いを叶える力を持つと信じ、カイルは宝玉に手を伸ばした。その瞬間、迷宮が揺れ始め、父の魂が解放されていく。父はカイルに感謝の言葉を残し、光となって消えた。

迷宮から脱出したカイルは、父の遺志を継ぎ、新たな冒険へと旅立つのだった。


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