風車の秘密
小さな村に、古くから立っている風車があった。風車は誰の手によるものか、いつから回っているのか、誰も知らない。ただ、いつも風が吹くとゆっくりと回り、その姿を村人たちは当たり前のように眺めていた。
ある日、好奇心旺盛な少年レオンは、その風車に近づいてみることにした。何か秘密が隠されているような気がしてならなかったのだ。
「中を見てみよう。」
古い扉をそっと押すと、ギシギシと音を立てて開いた。風車の内部は思ったよりも広く、埃っぽいが、どこか不思議な雰囲気が漂っていた。
レオンが奥へ進むと、風車の中心に大きな歯車があった。さらに驚くことに、その歯車の上には小さな妖精が座っていたのだ。妖精はレオンを見てニッコリと笑った。
「こんにちは、レオン。君が来るのを待っていたよ。」
驚いたレオンは声を上げそうになったが、妖精が続けた。
「この風車、実はただの機械じゃないんだ。ここに住む風の精たちが、村に風を届けているんだよ。でも最近、僕たちだけじゃ風を回すのが大変になってきたんだ。だから、君に助けをお願いしたいんだ。」
レオンは少し戸惑ったが、何かワクワクする気持ちが湧いてきた。
「僕が助ける?どうやって?」
妖精は微笑んで手を差し出す。
「君の心の中には、風を動かす力が眠っているんだよ。その力を使えば、もっと風を呼び込める。さあ、目を閉じて、風の音を感じてごらん。」
レオンは目を閉じ、耳を澄ませた。風が優しく頬を撫で、草木の葉がサラサラと音を立てるのが聞こえてくる。次第に、自分の中に風が渦巻くような感覚が広がり、体が軽くなった。
「さあ、風車を動かしてみて。」
妖精の声が聞こえた瞬間、レオンの体は風と一体となり、風車の羽根が大きく回り始めた。風は勢いを増し、村全体に心地よい風が吹き渡った。
それ以来、レオンは村の風を守る「風使い」として、妖精たちと共に風車を回し続けた。村の人々は、ただいつも通り風車が回っていることに気づくだけで、その裏でレオンが働いていることは誰も知らなかった。