パソコンの中の小さな世界
拓也は新しいパソコンを手に入れた。最新のモデルで、性能もデザインも申し分ない。さっそく電源を入れると、画面には普通のデスクトップが表示された。アイコンがずらりと並んでいる。しかし、1つだけ見慣れないアイコンがあった。それは、微妙に笑顔を浮かべた小さな人の形をしたアイコンだ。「こんにちは!」と書かれている。
拓也は不思議に思い、恐る恐るそのアイコンをクリックした。すると、画面いっぱいに青い光が広がり、突然、彼は目の前の光の中に吸い込まれていった。気がつくと、彼は見知らぬ街の中に立っていた。周りには小さな家々が並び、人々が行き交っている。しかし、よく見るとその人たちはどこか機械的で、光沢のある金属の肌をしていた。
「ここは一体…?」拓也が呆然としていると、一人の小さな男の子が近づいてきた。「君、初めてここに来たの?」その子はにっこりと笑った。「ここはパソコンの中の世界さ。僕たちはこのパソコンの中で生活してるんだ。」
拓也は驚いた。まさかパソコンの中にこんな世界が広がっているとは思いもしなかった。「じゃあ、君たちは何をしているの?」彼が尋ねると、男の子は誇らしげに胸を張った。「僕たちは、君がパソコンを使っているときに色々とサポートしてるんだよ。ファイルを整理したり、ウイルスを追い払ったり。でも、僕たちの存在を知らない人がほとんどなんだ。」
拓也はその話を聞いて、これまで無意識にパソコンを使ってきた自分を恥じた。彼らの努力のおかげで、パソコンがスムーズに動いていたのだ。「ありがとう」と拓也が言うと、男の子は照れくさそうに笑った。「どういたしまして。でも、そろそろ帰らないと、君の世界では時間が経ちすぎちゃうよ。」
再び青い光が拓也を包み込み、気がつくと彼は自分の部屋に戻っていた。画面には再びデスクトップが表示されている。さっきのアイコンは消えていたが、拓也の心には確かにあの小さな世界の記憶が残っていた。それ以来、彼はパソコンを使うたびに「ありがとう」と心の中でつぶやくようになった。
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