見出し画像

星の街と願いの灯籠


星空の輝く夜、ティアナはいつも夢見ていた。彼女の住む街は、星々が手に届きそうなほど空に近い「星の街」と呼ばれていた。年に一度、星が一番近づく夜に、街の人々は「願いの灯籠」を空へと放つ祭りが行われる。

ティアナは毎年、この祭りに心を躍らせていた。しかし、今年は特別だった。母の形見である美しい青い石を使って、彼女自身が灯籠を作ることにしたからだ。母はいつも、「この石は願いを叶える力がある」と言っていた。ティアナはその言葉を信じ、心からの願いを込めて灯籠を完成させた。

祭りの夜、街全体が幻想的な光で包まれた。人々が次々に灯籠を空へと放ち、無数の光が夜空を彩る中、ティアナも自分の灯籠をそっと手放した。青い光が空へと吸い込まれていく様子を見つめながら、彼女は一つの願いを心に抱いていた。

「もう一度、母に会いたい。」

その瞬間、空の青い光がひときわ強く輝き、ティアナの前に不思議な光の道が現れた。ティアナは驚きつつも、その道を進んでみることにした。光の道を歩くうちに、彼女は不思議な場所にたどり着いた。それは、まるで星々の間に浮かぶような世界だった。

その世界の中心に、一人の女性が立っていた。母だった。ティアナは思わず駆け寄り、母の腕に抱きついた。

「ティアナ、ずっと見守っていたのよ」と母は優しく微笑んだ。

母との再会に、ティアナの心は温かさで満たされた。二人は星々の間を一緒に歩き、夜が明けるまで語り合った。

翌朝、ティアナは自分のベッドで目を覚ました。あの夜の出来事が夢だったのか、それとも本当だったのか、彼女には分からなかった。ただ、一つだけ確かなことがあった。彼女の心には、母との温かい記憶がしっかりと刻まれていた。

祭りは終わり、星の街には静けさが戻った。しかし、ティアナの心には、新たな希望と共に母の愛が輝き続けた。


いいなと思ったら応援しよう!