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消えた深夜の訪問者

注:この作品はちょっとゾッとします😅

小さな田舎町に住む佐藤真一は、決して忘れることのできない夜を迎えた。夏の終わりを告げる静かな深夜、彼は突然のノック音で目を覚ました。時計を見ると、午前2時ちょうど。こんな時間に訪ねてくる者などいるはずもない。

疑問を抱きながらも、佐藤は玄関に向かった。ドアを開けると、そこには黒いコートをまとった男が立っていた。顔は帽子の影に隠れ、よく見えない。しかし、その男の背格好にはどこか見覚えがあった。

「ご無沙汰しております、佐藤さん。」

男は低く落ち着いた声でそう言った。佐藤の心は一瞬凍りついた。10年前に事故で亡くなったはずの旧友、山田が目の前に立っていたからだ。

「どうして……お前は……」

言葉がうまく出てこない佐藤に、山田はにやりと笑みを浮かべた。「ちょっと、お前に借りがあってな。返しに来たんだ。」

その瞬間、佐藤の背後でドアが激しく閉じられた。振り向くと、誰もいないはずの家の中で、家具が揺れ、不気味な音が響き始めた。佐藤は動揺しながらも山田に目を戻すが、そこにはもう誰もいなかった。

玄関には冷たい風が吹き込み、ただ静寂が残るのみ。佐藤は自分が何を見たのか、現実か幻かを理解できないまま、その場に立ち尽くした。

翌朝、彼は地元の新聞を読んで驚愕した。そこには「10年前に亡くなった山田の未解決事件が再び捜査されることに」という記事が掲載されていたのだ。

佐藤は、昨夜の出来事が現実だったのか、それとも単なる夢だったのか、知る術はなかった。ただ一つ確かなことは、彼の心に消えない不安が残ったということだった。


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