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営業キャッシュフロー:知っておくべき、投資に役立つ重要キーワード17選【米国株編】⑧

営業キャッシュフローは、例えば、A社が商品やサービスを売ることで得た、売上高から原材料費等の支出を引くことで得られる現金収支であり、会計的に一番ごまかしが効かない、企業の実力をはかる、指標と言われています。売上高や1株利益にも負けず劣らず企業の財務内容を知る上で、重要な数字です。


財務諸表(Financial Statements)

今更ですが、キャッシュフロー計算書は、貸借対照表や損益計算書と並んで「財務三表」の一つとされ、企業の財務状況を把握する上で重要な役割を果たします。

貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書の英語表記は以下の通りです。

  1. 貸借対照表 (Balance Sheet)
    略称: BS

  2. 損益計算書 (Profit and Loss Statement または Income Statement)
    略称: P/L

  3. キャッシュフロー計算書 (Cash Flow Statement)
    略称: CF または CFS

3つの財務諸表は、企業の財務状況を把握するための重要な書類であり、英語では "Financial Statements" (財務諸表)と総称され、それぞれが企業の財務状態、経営成績、資金の流れを示す重要な役割を果たしています。

キャッシュフロー計算書の構成

営業、投資、財務で構成

  1. 営業活動によるキャッシュフロー:

    • 企業の主要な事業活動から生じる現金の流れを示します。

    • 例: 商品販売による収入、仕入れや人件費の支出など。

  2. 投資活動によるキャッシュフロー:

    • 設備投資や有価証券の取得・売却など、長期的な資産に関する現金の流れを示します。

    • 例: 固定資産の取得・売却、投資有価証券の取得・売却など。

  3. 財務活動によるキャッシュフロー:

    • 資金調達や返済、配当金の支払いなど、資本に関連する現金の流れを示します。

    • 例: 借入金の増減、株式発行、配当金の支払いなど。

キャッシュフロー計算書の重要性

  1. 実際の現金の動きを把握:
    損益計算書では捉えきれない実際の現金の流れを示すため、企業の資金繰りの状況を正確に把握できます。

  2. 経営分析への活用:
    各活動区分のキャッシュフローを分析することで、企業の経営課題や問題点を抽出し、改善策を検討することができます。

  3. 他の財務諸表との連携:
    貸借対照表や損益計算書と併せて分析することで、より正確な経営状況の把握が可能になります。

キャッシュフロー計算書を適切に理解し活用することで、企業の財務状況をより深く把握し、効果的な経営判断を行うことができます。

どのタイミングで開示される?

米国の上場企業の場合、キャッシュフロー計算書は四半期ごとに開示されます。具体的には以下のようになっています。

  1. 四半期報告書(Form 10-Q)には、キャッシュフロー計算書が含まれます。これは第1四半期、第2四半期、第3四半期のそれぞれで開示されます。

  2. 年次報告書(Form 10-K)にも、年間のキャッシュフロー計算書が含まれます。

  3. SECの規則では、四半期ごとにキャッシュフロー計算書を含む財務諸表の開示が求められています。

  4. これにより、投資家は四半期ごとに企業のキャッシュフローの状況を把握することができます。

米国の開示制度では、キャッシュフロー情報を含む詳細な財務情報を四半期ごとに提供することで、投資家に対してより頻繁で詳細な情報提供を行っています。これは、投資家の意思決定に役立つ適時の情報提供を重視する米国の開示哲学を反映しています。

分析のポイント

  • 営業キャッシュフローが継続的にプラスかどうか

  • 投資キャッシュフローの使途(成長投資か否か)

  • フリーキャッシュフローの推移
    <フリーキャッシュフロー = 営業キャッシュフロー + 投資キャッシュフロー>

  • 各キャッシュフローの関係性
    財務キャッシュフローは、他の2つのキャッシュフローの結果を示します。

営業キャッシュフロー

営業CF(Operating Activities Cash Flow)は、最も重要な指標と位置づけられており、企業の本業の稼ぐ力を示しています。会計上の利益とは異なり、実際の現金の動きを示すため、企業の資金繰りや財務健全性を判断する上で重要な指標。投資CFや財務CFと合わせて分析することで、企業のキャッシュ創出力や資金繰りの状況をより詳細に把握することができます。

営業CFの主な構成要素

営業活動によるキャッシュフローは、企業の本業から生み出された現金の流れを表す重要な指標です。

  1. 売上収入(プラス要因)

    • 商品やサービスの販売による現金の収入

    • 売掛金の回収も含まれる

  2. 仕入支出(マイナス要因)

    • 商品の仕入れや原材料の購入による現金の支出

    • 買掛金の支払いも含まれる

  3. 人件費(マイナス要因)

    • 従業員への給与や賞与の支払い

    • 現金で支払われた人件費が対象

  4. その他の営業収支

    • 現金で支払った光熱費や通信費などの経費(マイナス要因)

    • 現金で受け取った受取利息や受取配当金(プラス要因)

これらの項目の合計が営業活動によるキャッシュフローとなります。

プラスであることの重要性

営業CFがプラスであるということは、本業で稼いだ現金が支出を上回っていることを意味します。これは企業の収益性や財務健全性の観点から望ましい状態といえます。

一方、営業CFがマイナスの場合は、本業で赤字が発生しているか、売上債権の回収が遅れているなどの可能性があります。短期的にマイナスでも問題はありませんが、長期的にマイナスが続くようであれば、ビジネスモデルの見直しが必要かもしれません。

アップルの場合

Appleの2023年度のキャッシュフロー計算書を分析すると、自社株買いと配当が財務活動によるキャッシュフローに記載されており、これらと営業キャッシュフローには以下のような関係があります。

  1. 営業キャッシュフロー:
    2023年度、Appleの営業キャッシュフローは約1,100億ドルでした。企業の本業から生み出された現金を示しています。そして、

  2. 財務活動によるキャッシュフロー:
    自社株買い: 約766億ドル
    配当: 約150億ドル
    合計で約916億ドルが株主還元に使用されました。

    営業キャッシュフロー(1,100億ドル)は、株主還元の総額(916億ドル)を十分にカバーしています。Appleが本業で生み出した現金で株主還元を行えていることを示し、営業キャッシュフローの約84%が株主還元に使用されたことになります。

まとめ

営業キャッシュフロー(Operating Cash Flow)は、米国企業の財務状況を把握する上で非常に重要な指標です。企業が日常業務からどれだけの現金を生み出しているかを示し、経営の健全性や利益の質を評価するために活用されます。特に、営業キャッシュフローがプラスであれば、企業は自社の事業活動を通じて資金を生み出していることを意味し、将来の投資や負債の返済に余裕があることを示唆します。

企業の収益性だけでなく、キャッシュフロー分析も併せて行うことで、より正確な投資判断が可能になります。投資家にとって営業キャッシュフローは、企業の持続的な成長性と財務の健全性を判断するための有力な指標であり、企業分析に欠かせないものと言えるでしょう。

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*ご注意-このnoteは企業IRや直近のニュース等を参考に、一般的な情報提供を目的として書いています。投資家に対する投資アドバイスではありません。投資における最終意思決定は、ご自身の判断でお願いいたします。またデータ等の数字は、細心の注意を持って記載していますが当noteに載せている情報に基づく行動で損失が発生した場合においても、一切の責任を負いかねますので、ご了承ください。

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