P&G、1-3月期決算。株主還元の王者プロクター・アンド・ギャンブル:60年以上続く増配の背景に迫る!【1-3月/Q3,2024】
P&G(プロクター・アンド・ギャンブル)は、世界最大の日用消費財メーカー。約48億人の消費者に高品質な製品を提供。現在では180カ国以上で事業を展開。おなじみのブランドは、私達の日本人の生活に欠かさないラインナップとなっています。2024年1-3月(第3四半期)の決算を見ながら、P&Gという老舗優良企業の実態に迫ります。
2人の職人
南北戦争で成功
プロクター・アンド・ギャンブル (P&G) は1837年、ウィリアム・プロクターとジェームズ・ギャンブルがオハイオ州シンシナティで蝋燭と石鹸の製造会社を設立したのがP&Gの始まりです。プロクターは蝋燭(ろうそく)職人、ギャンブルは石鹸職人。
19世紀後半、南北戦争で連邦軍に石鹸と蝋燭を供給したことで事業が拡大。1879年には象徴的なブランド「アイボリー石鹸」を発売し、大ヒットとなりました。
20世紀に入ると、1911年に初の海外工場をカナダに設立。1930年代には合成洗剤の研究を開始し、1946年に「タイド」を発売。
1950年代以降は洗剤だけでなく、ブラウン、パンパース、プリングルズなど多様な日用品ブランドを次々と展開。2005年には「ジレット」を買収。
現在は世界180カ国以上で事業を展開する売上高800億ドルを超えるの巨大企業に成長。183年以上の歴史を持つP&Gは、日用消費財業界のリーディングカンパニーとして知られています。
日本でも身近なブランド
「P&Gの提供でお送りします」と日本でもTVCM等でよく聞く名前ですね。
ファブリーズやパンパースと言うと、もっとわかりやすいかもしれません。
今後紹介する連続増配の企業には、P&Gのように我々日本人にも馴染みのブランドが多くあるのも面白ポイントです。
P&Gが目指すところ
P&Gの企業目的は、現在そして未来の消費者の生活を改善する小さいけれど有意義な価値を見出すこととしています。この目的を達成するために、企業の価値観と行動原則が深く根付いています。
About P&G
世界180カ国で事業
設立:1837年
上場:1890年
年間売上高:820億ドル(約12.7兆円,会計年度6月/2023年通期)
株式時価総額:3,971億ドル(約61.6兆円,6/21時点)
セクター:Consumer Staples(生活必需品)
ティッカー・シンボル:PG
NYダウの構成銘柄では、最古参。(1932年5月NYダウに採用)
ライバル企業:ユニリバー(英)
日本での同業種企業:花王、ユニ・チャーム、ライオン
従業員数:107,000人(2023年6月末)
2023年アニュアル・レポートより
部門別売上高(:売上の内訳)
ファブリック&ホームケア(Fabric & Home Care):35%
-洗剤や家庭用クリーニング製品
ベビー・フェミニン&ファミリーケア(Baby, Feminine & Family Care):25%
-おむつ、生理用品
美容(Beauty):18%
-SK-Ⅱなど高価格帯化粧品が好調。(パンテーン、h&sのヘアケアブランドも)
ヘルスケア(Health Care):14%
-歯磨き粉やオーラルケア。
グルーミング(Grooming)8%
-電動シェーバー。(ブラウン、ジレットのブランドを持ちます。)
地域別売上高
北米-50%
欧州-21%
大中華圏-9%
アジア太平洋:8%
ラテン・アメリカ:7%
インド、中東、アフリカ:5%
1-3月期の決算は
売上高:201億9,500万ドル(前年同期比+0.6%)
営業利益:44億6,000万ドル(+5.0%)
当期利益:37億5,400万ドル(+10.5%)
EPS(調整後):1.52ドル(+10.9%)
営業キャッシュフロー:41億ドル
2024年度第3四半期の売上高は202億ドル、為替や買収・売却の影響を除いた既存事業売上高は3%増。調整後1株当たり利益は1.52ドル。
株主還元の王者
自社株買いと配当
P&Gは、約23億ドルの配当支払いと10億ドルの自社株買いにより、33億ドルの現金を株主へ還元しています。
68年連続の増配
4月初めに宣言された増配により、P&Gの68年連続の増配、および1890年の設立以来134年連続の配当をしていることになります。
まとめ
高いブランド力
P&Gは、世界中の消費者に向けて高品質な製品を提供し続けることで、長期的な成長を実現しており、その結果として株主に対する還元を維持することができています。同社の安定したキャッシュフローと効率的な資本配分も、増配を続けるための重要な要素となっています。
主要顧客の一つであるウォルマートが、P&Gの売上高の約15%を占めるなど、安定した販売チャネルを確保している点も同社の強み。消費者の生活に密接に関わる幅広い製品ブランドを保有し、世界中の消費者から信頼と愛着を得ています。
また、マーケティングに力を入れることで知られ、ブランド戦略はMBAのケーススタディでもよく取り上げられます。さらには、社員の能力が高く評価され、人材輩出企業としても有名です。
今回の第3四半期決算では、売上高、純利益ともに前年同期を上回る結果となり、同社の堅調な経営が示されました。価格の上昇や為替変動の影響を受けながらも、各セグメントでの強固なパフォーマンスが見られ、今後も堅調な業績推移が、68年連続増配の記録更新とともに、期待は高まります。